一般人にとって公言しづらい「妊活」

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 最近では、一種のムーブメントとして認識されつつある「妊活」。なかでも妊活の末妊娠し、第一子の出産シーンをテレビで放送するなど、物議を醸した森三中・大島美幸、妊活のためライブ活動を休止中のマキシマムザホルモンのドラムのナヲ、ブログで着床報告をして世間の失笑を買ったプロゴルファーの東尾理子など、不妊治療や子づくりを隠さず妊活を宣言する有名人達。

 しかし、実際に妊活中の夫婦は、公には言いづらい。一般的に、妊娠を希望しながら、二年以内に妊娠しない場合が不妊症と言われている。デパート勤務の香織さん(仮名・34歳)に話を聞いてみた。

子作りのためだけにするのが苦痛

「不妊症治療って、色々程度によって違ってくると思うのですが、子宮に造影剤を注入して、卵管の通りをよくする子宮卵管造影検査は受けたことがある人が多いかも。これがかなり痛いんですよ。そのあと、妊娠しやすいゴールデン期間というのに突入するのですが、排卵日の前後を含めて三日間、その間、一日三回、子作りするように言われて。お互い共働きで仕事を休むわけにもいかないし、深夜に帰ってきた夫と無理やりしようにも全然、夫の調子が出なくて。仕方ないので、夫がスマホで動画見て元気になっているうちに挿入。なんだか、子作りのためだけにしているみたいで、お互い全然気持ちよくないんです」

 高齢出産といわれる35歳の壁。リスクが高い出産を避けたいために、35歳を前に妊活を始める人も多い。深夜に及ぶ勤務などがあるIT企業に勤務している由紀さん(仮名・36歳)もその一人だ。

「そろそろ子供が欲しいと思って、子作りを始めたのが34歳。正直、もっと早くから始めておけばよかったと後悔しました。夫も私も、不妊検査をしたのですが、ともに異常なし。35歳になって、もう子供ができないんじゃないかって焦り始めました。友人のデキ婚や、同じベビ待ち中の人がSNSで妊娠報告しているのを見るといらっとしたり、妊娠菌をわけてもらおうと思って、妊婦が書いた富士山の絵をネットで買ってしまったり。不妊に良いといわれているマカを飲んだり、ヨガを始めたり。思わず、夫以外の人とセックスしたら、すぐに妊娠できるのでは? と考えたりしてしまいます」

 妊活で追い詰められていく不妊夫婦。香織さん曰く、芸能人のように妊活を公言し、仕事を休むことができる環境を羨ましく感じるのだという。

「接客業で長時間の立ち作業のため、妊娠しづらい環境。同僚が、妊娠初期の時期に流産したりも。チームリーダーとして責任ある立場なのもあり、不妊治療のために月に何度も通院するのも難しい」

 このように、現実は思うように不妊治療をできない夫婦も多い。由紀さんも「実家のある地方に帰ると、姪や甥が成長していくのを見るのがつらい。悪気がないのはわかってるが、親せきが『次は由紀のところだね』と言ってくるのが、面倒で極力帰省しないようにしている」と言う。

 妊活や、出産・育児ネタに沸く芸能界。リアルな妊活経験者は、まだまだ声をあげづらい世の中と言える。

(取材・文/如月小百合)