メイカームーヴメントは単なる製造業の変化ではない:未来都市は「ものづくり都市」へ

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メイカームーヴメントは、都市のイノヴェイションを加速させる。日本の都市はこれからどこへ向かうべきか。ものづくりの環境を支援してきたオートデスクのエバンジェリスト、ディエゴ・タンブリーニが「WIRED CONFERENCE 2014」で語った、「ものづくり都市=3D CITY」のあり方とは。(雑誌『WIRED』VOL.14より転載)

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ディエゴ・タンブリーニ | DIEGO TAMBURINI
オートデスク製造業向け戦略立案担当エバンジェリスト。SDRC社(現在のシーメンスPLM社)でPLM実装担当主席エンジニア、マイクロソフトでのクラウド開発やエバンジェリスト・チームの責任者を務めたのち、オートデスクに入社。同社が掲げるヴィジョンを製造業界で実践するための方策を立案し、エバンジェリストとして活動中。

ものづくりは都市生活を変え始めている

「『メイカームーヴメント』は、ただの製造業の変化ではない。都市の生活そのものを変える動きとして注目しています」。3D設計ソフトウェアの世界的なリーダー、オートデスクのエバンジェリストとして製造業の戦略立案に長年取り組んでいるディエゴ・タンブリーニは、「WIRED CONFERENCE 2014」に登壇し、ものづくりが変える都市の未来について語った。

「いま世界では、細分化された需要やニッチな市場に応えるメイカーたちによるものづくりのエコシステムが、都市のイノヴェイションを促進しています。『適量生産/適量消費』が、都市を再活性化する原動力となりつつあるのです」

ものづくりによって都市に血が通い、再び機能的になるために、これから次の3つの要素が求められると彼は言う。

1つ目は「コミュニティ」だ。人と人とが集い交流する場は、新しいものごとを生み出すきっかけとなる。多様な価値観を受け入れる場こそが、都市の文化を醸成する基盤をつくる。2つ目は「教育」。どんなにテクノロジーが発達しても、それを使いこなす人がいなければ意味はない。若い世代に対する教育環境の充実は、都市の未来を築く投資でもあるのだ。そして3つ目の要素として彼が挙げたのは「パートナーシップ」だ。ものづくりを支援する団体やインキュベーター、行政や民間企業との連携は都市に新しい息吹をもたらす。

人々の生活を豊かにするイノヴェイションを生み出す「ものづくり都市=3D CITY」こそが、未来の都市の姿なのだと彼は表現する。


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コミュニティから生まれる「3D CITY」

タンブリーニがすでにこれら3つを実現した新しいものづくり都市の先達として挙げるのは、ニューヨークやサンフランシスコといった都市だ。

「ただし、これらの都市といえど、突然ものづくりが盛んになったわけではなく、個人や小さなコミュニティから発展していきました。ものづくりのコミュニティが都市を動かす大きな要因となるのです」

日本においても同様の動きが芽生えていると彼は続ける。「日本は、町工場とメイカー、起業家の融合による生態系が築かれつつあり、コミュニティがイノヴェイションを促進させているのを感じています」。

さらに、2020年の東京オリンピックは、商業的な成功や観光誘致といった側面だけではなく、社会に変化をもたらす「触媒」にもなると彼は見ている。

「オリンピックをきっかけに、イノヴェイションを享受する文化を保ち続けることができれば、東京はニューヨークやサンフランシスコ以上に、ものづくりによって活性化する都市へと成長できるでしょう」

個人やコミュニティのものづくりに対する熱い思いがあって初めて、都市におけるものづくりの活動は成立する。そのためには、環境を整えるだけでなく「大人がものづくりを楽しむこと」を、自身もふたりの小さな娘を抱えるタンブリーニは提案する。

「ものづくりを大人が心の底から楽しめば、その様子を見た子どもたちも一緒になって遊ぶようになり、ゲーム感覚でものをつくる喜びを知るようになります。未来の都市を担う子どもたちを育てるためには、大人たちの姿を見せることが子どもたちにいい影響を与えるいちばんの方法です」

テクノロジーというツールがこれからの都市のあり方を変え始めているいま、ツールだけではなく、わたしたち自身のマインドシフトも求められている。

「ものづくりが都市をドライヴさせる原動力は、わたしたちひとりひとりのものづくりへの情熱と創造力です。それが新しいツールと手を取りあうことで未来のイノヴェイションが生まれるのです」。


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「ものづくり都市」のための3つの鍵

メイカーたちの活動を育み、都市を活性化させるためには何をすべきなのか。先行するものづくり都市、ニューヨーク、サンフランシスコでの実例とともに紹介する。

1. COMMUNITY | 連帯
多種多様な人が集まれる場が、都市のイノヴェイションを加速させる。ニューヨークで、海軍の造船所を改築した「NY Brooklyn Navy Yard(写真)」がいまでは建築や映画関係者が集う場となっているように、古い建造物の再活用が都市に新しい息吹をもたらす。都市がもつ資源を有効活用し、新たなコミュニティを醸成するきっかけとなった好例だ。

2. EDUCATION | 教育
いまや3Dプリンターは大学だけでなく小学校にまで置かれ始めている。デジタルファブリケーションの登場によって、誰もが自身の創造性を発揮できるようになった。欲しいものを自分でつくる創造性や自主性を育てるためには、ものづくりの新しい動きを伝えることが、これからの未来を担う人材を育てる現場に求められてくる。

3. PARTNERSHIP | 協働
民間企業同士や行政とが協働するものづくりのコミュニティも生まれている。ニューヨークに拠点を構えるスタートアップを支援する「Made in NYC(写真)」もそのひとつで、起業に対する税制優遇や特区による実証実験の場を提供している。官民の垣根を越えることで、都市のイノヴェイションを引き起こす環境はより強固になっていく。

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