元祖長浜屋では、麺の硬さは硬い方から順に「ナマ(バリカタに当たるもの)」「カタ」「ふつう」「ヤワ」の4段階。

あっさりと女性に評判だったスープは、濃い方から順に「ベタ」「ふつう」「ナシ(脂を入れないということ)」の3段階に設定。

麺、スープともに好みを聞いてもらえる。

リクエストの方法は至って簡単。

事前に購入した食券を店員に渡す際、「ベタナマ」「ナシカタ」などと言うだけだ。

麺の硬さもスープの濃さも「ふつう」でよければ、そのまま何も言わずに渡せばよい。

今回はオーソドックスな味を知りたいと思い、麺もスープも「ふつう」で頼んだ。

出て来たラーメンを見ると、スープは白濁というより茶褐色。

そこにストレートの麺が入り、青々としたネギがトッピングされている。

ゴマやトンコツラーメンに欠かせない紅ショウガは、好みで入れられる仕様。

また、テーブルの上にはスープの味を調整できる醤油ベースの特製ダレが入ったやかんも用意されていて、こちらも好みで入れられる。

まずはスープを飲んでみる。

見た目よりもあっさりしている。

なるほど、これなら女性でも無理なく飲めるだろう。

ただし、麺は他店と比べてやや多め。

見た目では1.5倍程度の盛りに見える。

いくらスープがあっさりでも、やっぱりガッツリ系なのか、と思いながら箸をつける。

するとどうだ。

あっさりしたスープが細い麺にほどよく絡み、豚骨ラーメン特有の重さを感じないのだ。

豚骨だけで作ったスープからも、独特の匂いはせず、どんどん食が進む。

これは替え玉を頼むしかあるまい。

しかし、注文するのはどのタイミングがいいかということ。

最初の麺が残っている時に頼んでも、替え玉が伸びてしまいそうだし……。

ふと周囲を見回すと、その大半が替え玉を注文している。

隣の男性にそっと聞いてみると「だいたい2/3くらい食べたら頼むといいよ」というアドバイス。

今度は「ナマ」を頼むことにした。

替え玉は「ひとり鍋」に使うような鍋で提供されるが、注文すると程なく提供されるのがうれしい。

早速丼に投入してスープとよく絡ませる。

と、ここで忘れてはいけないのが特製ダレだ。

替え玉を食べるには味が薄く感じられるので、少し調整することが九州流。

麺の硬さが好みにあっていたのか、替え玉はさらにツルツルと喉を通り、間もなく完食。

スープも飲み干した。

三代目社長の山本さんによると、スープは開業時からトンコツ100%。

特製ダレで味を整えているだけだという。

「両親は最初からトンコツでやっていました。

作り方は戦後の闇市で知り合った台湾の人から教わったそうです」。

スープの話が出たので補足しておくが、ひとくくりにトンコツといっても、すべてのトンコツラーメン店のスープが濃厚とは限らない。

この店のように、飲み干すことができるほどあっさりめに仕上がっている店から、ポタージュのようにどろっとしたものを出す店、そしてその中間派もあり、味も濃度も実に様々である。

おもしろいのはファンの声だ。

「ここよりうまいと思う店もあるんだけど、ここのラーメンはなぜかまた食べたくなる」というのがその代表。

アンケートの支持理由にも「福岡のソウルフード」「福岡ラーメンの原点」などといった言葉が見受けられた。

ほかの老舗も調べてみたが、そういう声はあまり聞かない。

確かに、理屈抜きの魅力がこの店にはある。

その魅力とは何なのか? もちろん、一度食べに来ただけでは分かるはずもない。

それをさらに探るべく、きっと1週間後にもまた食べに行ってしまう気がする。

●information<元祖長浜屋>福岡県福岡市中央区長浜2-5-38それでは他の店はどうなのだろう。

アンケート2位は何と3店が同率で横一線。

どの店で食べるか迷ったのだが、今回は全国展開をしている一蘭と一風堂を外し、地元での人気に着目して博多一幸舎を選択した。

ここの麺はとにかく真っ白。

これは、味だけでなく見栄えも大切にしたいという店主の思いからだそうだ。

また、博多では珍しく、豚骨と魚介のダブルスープが特徴だろう。

きめ細かい泡立ちでクリーミーなスープは、こうした長年の経験によるものだとか。

店外は豚骨の匂いがかなり漂っている。

ところが、恐る恐る入った店内ではほとんど豚骨臭はなし。

早速ラーメンを注文、出てきたスープをすすってみる。

柔らかい。

とにかく柔らかい味付けなのだ。

豚骨によくあるとげとげしい香りはなく、まろやかという言葉がぴったりのスープ。

そして、ほどよく絡まる極細麺。

これはリピーターが多いというのもうなずける。