初の決勝進出を目指したロンドン五輪のサッカー男子日本代表は、準決勝でメキシコに敗れて3位決定戦に回ることになった。

相手は韓国。銅メダルをかけた大一番でアジア勢同士が激突するが、日本のファンの反応は芳しくない。実は最近の日韓戦では、主力選手が試合中にけがをするケースが多いのだ。

香川、駒野が長期欠場の重傷負う

関塚隆監督が「歴史をつくりたい」と臨んだ英国時間2012年8月7日のメキシコ戦。前半に幸先よく先制ゴールを奪ったが、今大会無失点を続けてきた守備陣がその後相手に3得点を許し、金メダルの夢はついえた。

だが、銅メダルの可能性は残されている。日本の敗戦から数時間後、8月10日に行われる3位決定戦の相手は、ブラジルに3-0で敗れた韓国に決まった。五輪の舞台で「因縁の対決」、しかも負ければメダルなしとなるだけに、この試合の意味は大きい。

周囲も早速騒がしくなり始めた。ただ日韓双方では若干「温度差」が感じられる。日本人ユーザーのツイッターの投稿をはじめインターネット上の反応を見ると、代表チームへの応援コメントが並ぶ半面、「韓国戦だけは見たくなかった」と嫌がる書き込みが少なくない。「選手のけがが心配だ」というのだ。

実は近年の日韓戦では日本の選手が試合中に負傷、それも長期欠場を余儀なくされる例が少なくない。記憶に新しいのが2011年1月25日、カタール・ドーハで行われたアジアカップ準決勝だ。出場した香川真司選手がプレー中に韓国の選手から右足甲を踏まれ、小指の根元にあたる第5中足骨骨折という重傷を負った。当時、ドイツ・ブンデスリーガのドルトムントに所属していた香川選手は、このけがでリーグ戦後半を棒に振ることになってしまった。

さかのぼると、ほかにも出てきた。2010年10月12日にソウルで行われた国際親善試合の日韓戦。この時は駒野友一選手が、ジャンプしてボールをヘディングしたところに相手選手から「ハードアタック」を受けてしまう。衝突されたため駒野選手はバランスを崩し、右腕から落下。診断の結果は右上腕骨骨折で、復帰までに約4か月を要した。さらに10年2月14日の対戦では、大久保嘉人選手がプレー中に左ひざのじん帯を損傷し、一時は翌年のワールドカップ(W杯)南アフリカ大会への出場が危ぶまれた。

サッカーは一種の格闘技ともいえる。試合中のけがは付き物だが、日韓戦でこうも主力のけがが相次ぐとファンとしては「何かあるのでは」と勘繰りたくもなるだろう。五輪代表は若手が主体だが、吉田麻也選手のように「ザックジャパン」でレギュラーを務める選手も混じっている。五輪終了後の9月には、2014年W杯ブラジル大会のアジア最終予選の試合が組まれており、3位決定戦で長期離脱者が出ては大ごとだ。

銅メダルを勝ち取れば兵役義務が免除

韓国側の反応はどうか。韓国最大の検索サービス「NAVER(ネイバー)」に寄せられた日韓戦に関するコメントを見ると、「期待しています」「悔いのない一戦になるように。ぜひ勝ってほしい」「日本には必ず勝って」と、比較的おとなしめの印象だ。自国の選手について厳しい批判はあるが、日本代表に関する言及や、あからさまに日本との対決を嫌悪するような内容は見つからなかった。

対象的に、韓国メディアはあおり気味だ。主要紙の朝鮮日報や中央日報(日本語電子版)は、韓国代表・洪明甫監督の「必ず勝つ」という意気込みを紹介。中央日報は2012年8月8日付の記事で、「今回の対戦では韓国の闘志が日本をはるかに上回ると予想される」とし、根拠として銅メダルを勝ち取れば若手選手は、「褒美」として兵役義務が免除される点を挙げた。

さらに試合が行われる英国時間8月10日の数日後には終戦記念日、すなわち韓国にとっては「解放記念日」を迎える。そのため、「普段よりも愛国心が高まる時期」と、やや強引な論拠で日本戦への士気の高さをうたった。同紙は別の記事で、複数の韓国代表の選手のコメントを紹介。「日本はブラジルや英国ほど強いチームではない。メンタルが弱い」「理由を問わずどんな手段を使っても必ず勝たなければならない」と話したという。

日本が銅メダルを獲得すれば、1968年のメキシコ五輪以来の快挙だ。一方、韓国はサッカー男子初となる五輪のメダルを目指す。直近の日韓戦は、くしくも1年前となる2011年8月10日に行われ、日本が香川選手の2ゴールなど3-0で快勝している。