赤いマントの曹操が印象的な『レッドクリフ』の看板。このメインビジュアルを選ぶセンスは素晴らしいと思います。

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映画『レッドクリフ』がなんだか大人気みたいです。同作品は「エイベックス・グループ創立20周年記念」、「テレビ朝日開局50周年記念」、「東宝東和創立80周年記念」の作品というだけあって、CMを始め番宣テレビ番組や関連書籍などが大量投入。これほど大規模なプロモーション展開というのも近年では珍しく、一連のジブリ映画のそれを超える勢いにも思えます。

かく言う私も三国志は大好物なので『レッドクリフ』は公開前から非常に楽しみにしておりました。今回は劇場の当日の模様と実際に観た感想などを書いてみたいと思います。

■『レッドクリフ』鑑賞当日レポート
劇場に足を運んだのは公開2日目の11月2日(日)。昼過ぎに観ようと新宿・歌舞伎町に出かけると、『レッドクリフ』の劇場前には長蛇の列が! これも宣伝の効果なのかと感心しながらも、席の確保が難しそうだと感じた私は時間をずらすことを決定。ちょうどその日はコマ劇場横にある新宿プラザ劇場の閉館イベントでSF映画の名作『2001年宇宙の旅』をやっていたので先にそれを鑑賞。難解なSFカルト映画の洗礼を浴びた直後に歴史ものの『レッドクリフ』を観るという妙な流れになったのでした。

19時開始の『レッドクリフ』を観るために劇場に入ると、客席入り口付近の階段に行列ができていたので15分ほど待機。やがて客の入れ替えが始まり、私はなんとか中央寄りの席を確保。その後すぐプログラムを購入するために受付のグッズ売り場に向かうと、なんとまさかの売り切れ! 公開2日目でプログラムが買えなくなるとは……。改めて『レッドクリフ』人気の高さを実感してしまいました。
日曜日の午後2時くらいに出来ていた行列です。自分が観た夜の回よりカップルは少なめ。若干男性が多目に見えます。


客席に戻って観客の客層をざっと見てみると、カップルがやけに多いのが印象的でした。世間ではデートムービー的なイメージがあるのでしょうか。カップル以外では20代の男性が友達同士で来ている様子も確認。そこへさらにご年配のご夫婦と思われる方々がいたり、いかにも歴史が好きそうなオジサマが混じっているという感じでした。

この日まで事前情報を可能な限りシャットアウトしてきた私が観た『レッドクリフ』の内容は、いろんな意味で衝撃的でした。それなりに面白かったのですが“面白さの質”が想像していたものと全く違っていたことから鑑賞しながら頭の中を整理するのがもう大変。

というわけで、以下に『レッドクリフ』は一体どんな映画だったのか、個人的に気になった部分を書いてみます。観ようかどうか迷っている方は参考にしてみてください。これから観に行くと決めている人は、映画を観た後にこの先を読んでいただければと思います。ネタバレ的なことは書いてないつもりですが、人によっては気になる向きもあるかと思われますので。

■『レッドクリフ』鑑賞ポイント

●冒頭の曹操軍vs劉備軍の戦いは迫力満点
このシーンだけでチケット代の元は取れた気がしました。“軍隊”vs“軍隊”の乱戦シーンは、アクションに定評のあるジョン・ウー監督の本領発揮というところです。冷静に観ると突っ込みどころは多いのですが、アクション映画と割り切れば気にならないので問題なし。監督的には後半クライマックスの戦闘シーンがイチ押しなのかもしれませんが、自分にはちょっと荒唐無稽すぎて「なんじゃこりゃ(笑)」という感じでした(ひとことでいうと一般兵がニートすぎ)。

●大軍を指揮する武将が単騎で戦うシーンが多くてビックリ
劉備陣営の関羽、張飛、趙雲あたりは“猛将”のイメージがありますので「映画だからアリなのかな(汗)」とギリギリ思いこむことはできました。ですが一国の軍を率いる大都督(総司令官)の周瑜までもが戦場のド真ん中に馬に乗って切り込むのには正直ビビリました。この調子だとPart2で孔明が槍を振り回して戦う可能性も否定できない気が……。

●戦闘シーンの表現が結構えげつない
戦闘シーンは“血しぶき”が多めです。敵を倒す時も地面に倒れた敵を容赦なく槍で何度も突き刺すなど、少々表現が生々しすぎるようにも思えました。血糊が飛び交うホラー映画などが苦手な人には少々不向きかもしれません。こういう表現を見ると日本の映画やドラマは、戦(いくさ)の残虐な側面をうまくオブラートに包んで表現しているんだなあと思ってみたり。このあたりは中華圏の監督ならではの感覚なのかも。リアルといえばリアルではあります。

●周瑜のトンデモ軍師ぶりに唖然
主君の孫権を殺されそうなシチュエーションに追い込んだり、孔明と言葉ではなく琴のセッションで語り合ったり、大都督なのに戦場に一人で突っ込むなど、あまりにも自由すぎ。こんな男が率いる軍と組もうと進言する孔明の知性にも疑問を持ってしまいそうです。一応「周瑜はできる男」という演出もあるのですが、トンデモ行動の印象が強くて自分の中では完全に面白キャラで確定。むしろ最初からそういうキャラだと思って観たほうがより楽しめるかもしれません(保証はできませんが)。

●ヒロイン・小喬の扱いがもったいなさすぎ
本作のヒロイン・小喬は、なんだかお色気担当という扱いになっております。夫の周瑜とのからみがいちいちエロくて困ります。小喬役のリン・チーリンは美人さんなので、小喬=絶世の美女という設定にピッタリなのですが、美人という以外に個性がないのでちょっと可哀想な気もしました。個人的にはベッドシーンなどは全カットで、小喬のキャラクターをもっと掘り下げてほしかったです(残念無念)。キャラ立ちという点では、孫権の妹・孫尚香が圧勝。ルックスでは小喬に及びませんが、男勝りでお茶目な孫尚香は観客から笑いを取るなどいい仕事をしてました。

●脇役に味わいあり
最初キャストの写真を見たときは「こんなんで大丈夫?」と思っていた張飛が意外にも格好良いので必見です(関羽の兄貴よりもキャラが立ってます)。やや地味に思えた趙雲もアクションシーンの奮闘ぶりで男前が自分の中で急上昇。劉備も渋くて味わいがあります。イチ押しはなんといっても呉の魯粛。あのなんだかホッとするいい人っぷりは『レッドクリフ』の大きな収穫だと思っています。

■『レッドクリフ』まとめ
鑑賞後、私はPart2で描かれる真のクライマックスがどうなるか楽しみになっていました。確かに本作は三国志が好きな人ほど複雑な感情を持ってしまいそうな内容なのですが、これはもう楽しんだもの勝ちなので細かい部分は笑い飛ばすのがいいんじゃないかと思っております。

私も本当はシリアスでガチンコな三国志映画が観たかったのですが、『レッドクリフ』もこれはこれでアリだと今は思っています。突っ込みどころと同じくらい見所も多いので、観ようかどうか迷っている方はとにかく観ることをオススメしておきます。特にこういうスケールの大きいアクション映画は、劇場の大スクリーンで観ると印象が全然違いますしね。


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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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