気温が40度を超える日が続くことが珍しくなくなった日本の夏。気象庁が「災害級」と表現するほどに夏の暑さは年々上昇し、危険な状態に。猛暑から自分や大切な人の身を守るため、熱中症対策の必要性が叫ばれている。

【写真】通勤中などの身体の冷却にも便利

熱中症の予防には、涼しい日陰で過ごすことや水分・ミネラル補給はもちろん、首の付け根や手のひらを冷やして「深部体温」を下げることが有効だ。そこで、いつでもどこでも体を冷やせる「持ち運べる氷のう ICEPACK」シリーズがSNSを中心に話題となった。

今回はピーコック魔法瓶工業株式会社(以下、ピーコック魔法瓶)事業本部 広報・マーケティング部 部長の木村剛治さんに、製品の開発秘話や累計出荷数約20万本を突破した理由、そして熱中症予防のための効果的な使い方などについて話を聞いた。

持ち運べる氷のう MINI ICEPACK


■ゴルフがきっかけで生まれた「持ち運べる氷のう ICEPACK」

ピーコック魔法瓶が2021年5月に発売した「持ち運べる氷のう ICEPACK」(以下、アイスパック)。魔法瓶メーカーとして培ってきた「真空断熱構造」の技術を応用して開発された「冷たさキープホルダー」に氷のうをセットすれば、外気からの熱を遮断して冷たさを15時間以上キープできるという製品だ。

持ち運べる氷のう ICEPACK


この製品が誕生したきっかけは、ピーコック魔法瓶の社長が真夏にゴルフをしていたときのこと。熱中症予防のために氷のうを準備していたが、炎天下のなか1〜2ホールほどで氷が溶けて使い物にならなくなってしまったことだった。

「社長がゴルフのプレー中、すぐに溶けてしまった氷のうを見て『なんとか長時間保冷できる氷のうを作ることができないか』と考えたことで、製品開発が始まりました。そこで弊社の魔法瓶の技術を応用し、氷のうの氷が溶けにくい冷たさキープボトルを開発しました」

ピーコック魔法瓶 事業本部 広報・マーケティング部 部長の木村剛治さん


製品が完成して発売を試みたものの、当初は鳴かず飛ばずで売れ行きは伸びなかったそうだ。大きな原因は、水筒に間違われてしまったこと、そして販売店側がこの製品をどこの商品棚に置けばいいかわからなかったことだった。

「このような課題を解決するために、製品の認知度を高めるためにゴルフ関連の販売店を中心に営業したり、ゴルフ系のインフルエンサーの方々に使用してもらったりして、製品を手にとってもらいました。そのような努力のおかげでゴルフをプレーする人たちのなかで、じわじわと人気が出てきました」

首に当てて冷やすことで深部体温の上昇を防げる


■氷のうをより身近な存在に…ミニアイスパックの特徴は?

ゴルフ関連の販売店やインフルエンサーを介して徐々に知名度を上げてきたアイスパック。2022年には「ゴルフだけでなく、通勤や通学などの日常でも使ってほしい」という想いで、さらにコンパクトになり、カバンやリュックに入れやすくなった「持ち運べる氷のう MINI ICEPACK」(以下、ミニアイスパック)を開発した。

「ミニアイスパックは、筒状の氷のうに水を入れてそのまま凍らせるタイプです。これを冷たさキープホルダーにセットすれば外に持ち出すことが可能です。氷のうはシリコンでできているので肌触りがよく、冷たくなりすぎないので手でも握りやすいのが特徴です。暑い時には首筋や手のひらを冷やしていただくのが最も効果的な使い方です」

ミニアイスパックは氷のうがシリコンになっている


昨今の気温上昇やメディアによる熱中症予防の喚起などで、消費者の暑さ対策への意識が向上していたこともあり、ミニアイスパックを発売すると「持ち運びしやすい」「どこでも体を冷やせる」と、口コミやインフルエンサーを介して人気爆発。2024年だけでも販売本数10万本を突破する勢いで売れており、在庫が僅少となっている状態だ。

「開発当初はメインユーザーを大人の方と想定していましたが、フタを開けてみると子どもに持たせる親御さんがすごく多かったのが驚きでした。通学途中の熱中症を心配し、ランドセルに入れて持たせているそうです。冷たさキープホルダーに入れておけば使い方によっては14〜15時ごろの帰宅時間でも全然冷たいので、1日を通して熱中症予防ができます」

長時間保冷できるので、登下校時にクールダウンができる


また、SNSも商品展開に一役買っているのだとか。製品は一見、水筒に見えてしまうことが弱点だったが、ユーザーがXやInstagramなどで製品の使い方や効果を発信することで認知度が上がり、売り上げも上昇。なかには数万もの”いいね”がついた投稿もあったという。

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■目指すは夏の必需品!アイスパックの展望とは

年々暑さを増している日本の夏を過ごすためには、正しい知識を持って熱中症予防を行うことが大事だ。炎天下での外出自粛、クーラーの使用や水分・ミネラル補給の徹底、そして深部体温の上昇予防などが必要になっている現在の夏において、木村さんは「アイスパックをより多くの方に使っていただきたい」と話す。

「熱中症を予防するためにはとにかく体を冷やさないといけません。ですが、いざというときにコンビニエンスストアやスーパーがあるとは限りません。だからこそ、いつでもどこでも体を冷やせるようにアイスパックシリーズを持ち歩いてほしいです。みんなが手軽に熱中症を予防できるよう、今後も展開に力を入れていきます」

「みなさんに氷のうを持ち運んでもらいたいです!」と木村さん


最後に、木村さんに今後のアイスパックの展望について聞いた。

「地球温暖化は今後も進んでいき、日本の夏はさらに暑くなると思います。一方で、生活をしていると外に出ないといけない機会も必ずありますし、なかには現場作業や外回りなど、外での作業をしなければならない人もいます。過酷な夏の現場に携わる方への製品など、さまざまなシチュエーションに合わせた製品展開をしていき、誰でも手軽に熱中症予防をしてもらえる、夏の必需品にしていきたいですね」

夏の暑さは年を重ねるごとに危険度が増している。自分や大事な人の命を守るために、いつでも体を冷やせる準備が大切だ。外出するときはアイスパックをカバンに忍ばせ、熱中症予防に取り組もう。

取材・文=越前与