寒くなると“古傷”が痛み出す原因は?

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 冬になると昔の怪我や手術の跡といった“古傷”が痛くなることがあります。「迷信なのでは…?」と言う人もいるかと思いますが、実は科学的にも立証されています。“古傷”が痛くなる原因や対処法について、専門医に聞きました。

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◆“古傷”が痛み出す原因は“気圧・気温・湿度”が関係 ストレスも要因に

 過去に負った傷や骨折、やけどや手術痕など、冬場になると“古傷”が痛くなることがあります。これらの傷は、皮膚の下の筋肉や神経にもダメージを与えています。そのため、傷が治っても、筋肉や神経の組織が完全に修復されていない場合があります。寒くなると“古傷”が痛み出す原因について、いくつか解説します。

(1)血流の低下:血管が収縮して血流が悪くなります。すると、古傷の部位に十分な酸素や栄養が届かなくなり、痛みを感じやすくなります。また、血流が悪くなると、炎症物質や老廃物が溜まりやすくなり、痛みを増幅させます。

(2)筋肉の硬化:筋肉が縮んで硬くなります。これは、体温を保つための防御反応ですが、筋肉が硬くなると、古傷の部位にある神経や血管を圧迫して痛みを引き起こすことがあります。また、筋肉が硬くなると、関節の可動域も狭くなり、動かしにくくなります。

(3)気圧の変化:気圧が低くなると、体内の気体が膨張し、古傷の部位にある神経や血管を刺激して痛みを引き起こすことがあります。また、内耳にある気圧受容器が反応して、交感神経が活発になります。これにより、血管が収縮し、血流が悪くなり、痛みを感じやすくなります。

(4)ストレス:体が冷えて不快感を抱いたり、日照時間が短くなって気分が落ち込んだりします。これらは、ストレスを引き起こす要因ですが、ストレスが増えると、自律神経のバランスが崩れます。すると、古傷の部分にある痛覚神経が敏感になり、痛みを感じやすくなります。

「長期にわたる慢性的な痛みが、心理的な側面に影響します。古傷がトラウマと結びついていたり、痛みによる活動制限など、心理的に影響を及ぼし、これらが痛みの要因となります」(樋口直彦さん)

◆“雨が降ると古傷が痛くなる”のも迷信ではない 「降り始めと終わり」に要注意

 また、「雨が降ると古傷が痛くなる」という経験をしたことがある人もいるでしょう。これは冬場と同様に、気圧・気温・湿度が関係しています。雨が降ると古傷が痛くなるという現象は、気のせいではないのです。痛みは個人差があり、天気の影響を感じない人もいます。また、「雨降りの最中」ではなく、「降り始めと終わり」に出ることが多いようです。

 古傷の痛みを和らげるためには、以下のような対処法が有効です。

(1)温める:血管が拡張して血流が改善されます。すると、酸素や栄養が古傷の部分に届きやすくなり、炎症物質や老廃物が排出されやすくなります。また、筋肉がリラックスして緊張がほぐれることで、関節も柔らかくすることができます。温める方法としては、湯船につかる、温湿布を貼る、カイロや湯たんぽを使うなどがあります。ただし、炎症がある場合は、温めると痛みが悪化することがあります。温めすぎると逆効果になることもあるので、適度な温度と時間に注意しましょう。

(2)マッサージ:筋肉のコリや張りをほぐすことができます。すると、古傷の部分にある痛覚神経の刺激が和らぎ、痛みが軽減されます。また、マッサージすることで、血行が促進され、酸素や栄養が届きやすくなります。ただし、強く押しすぎないように注意しましょう。

(3)薬を使う:痛みがひどい場合は、鎮痛剤や消炎剤などの薬を使うのも良いでしょう。その場合は、医師の指示に従って使用してください。

「痛みの理由を理解し、痛みを和らげるための対処法を知っておくことが良いでしょう。強い痛みがある場合は、十分な休息が必要ですが、対処しても痛みが辛い場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。また、深刻な痛みを引き起こしている場合、何らかの治療や手術を検討されることがあります。痛みが強い場合は、医師や理学療法士と相談して、適切な治療オプションを検討することが重要です」(樋口直彦さん)

 古傷の痛みを予防するには、日頃から体を温めたり、ストレッチやトレーニングしたりすることも大切です。血流や筋肉の状態を良くし、古傷に負担をかけないようにしましょう。また改善が見られない場合は、専門医に相談しましょう。

【監修医】樋口直彦さん

医療法人藍整会「なか整形外科」理事長 兼 京都西院リハビリテーションクリニック院長/日本整形外科学会認定専門医/Vリーグ「サントリーサンバーズ」チームドクター

帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。バレーボールVリーグ「サントリーサンバーズ」のチームドクターも務める。骨折治療を始め関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。チームドクター経験を含めて、スポーツ整形外科医として、患者さんの個々のケース、タイミングを共に考え最善の治療を行なっている。また、クリニック運営にICTを推進し、お待たせすることない診療を信条としている。