今週のテーマは「36歳の女が相手にされなくなった理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:36歳の誕生日をひとりで迎えた女。30代前半迄はモテていたのに、急にモテなくなったワケは…




すっかり涼しくなって秋になった東京の夜。僕は汐留のオフィスを出て、煌々と光る東京のビル群を見上げる。

「今日、何かあった気がするけど…」

それがなんだったのか思い出せないまま、とりあえず僕は同期に連絡をし、近くで飲んでいた彼と日比谷で合流することになった。

「あ…そういえば」

同期と飲んでいる途中で、思い出した。今日は、最近会っていた美和の誕生日だった。

「おめでとう」という連絡をしようかとも思ったけれど、そこまでする義理もない。それに下手に期待されても困ると思ったので、僕は結局何も連絡をしないまま、この日は眠りについた。

三度くらい、食事をした美和。最初はいいかなと思っていたのに、僕がその先に進まなかったのには理由があった。


A1:すごく慎重な人なのかなと思った。


美和と出会ったのは、マッチングアプリだった。彼女と別れて、そろそろ真剣に、結婚を考えられるような相手を探したいと思い登録した。

使ってみると、女性のレベルがかなり高くて、正直驚いた。そして何人かを見ていた中で、いいなと思ったのが美和だった。




何度かやり取りをして実際に会ってみると、写真と違わず美和は可愛くて、そしてスタイルもよくて健康的でかなり僕のタイプではあった。

初めて会った時、美和は、疑心暗鬼になっていたのか僕にたくさんの質問をぶつけてきた。

「なんでこんなにも素敵な人に、彼女がいないの…?」
「それ、答えがわかれば僕が教えてほしいくらいです(笑)」
「本当に今いないの?」

彼女の有無を、何度も確認してきた美和。

たしかにアプリに簡単なプロフィールは載っているものの共通の知人もいないし、わからないことも多いだろう。でも僕は正真正銘、今彼女はいない。だから僕は素直に、事実を伝える。

「彼女とかいたら、マッチングアプリはしませんよ」
「秀一郎くんって、絶対モテるよね」
「どうですかね…モテないほうではないかもですが」
「だよね」

初対面だし、緊張しているのかな?とも思ったが、どうやら美和はかなり慎重派のようだ。

次から次へと飛んでくる美和の質問に、僕は一つ一つ誠実に答える。

そして、ひと通り美和の質問が終わった後、僕から素朴な疑問を投げかけてみた。

「美和さんは?なんでマッチングアプリ使ってるんですか?」

仕事的に出会いがないわけでもなさそうだし、こんなに可愛くて人も良さそうならば男の人に困ってはなさそうだ。でも、美和は急に深刻そうな顔になった。




「出会いが全然なくて…。食事会とかもしてみたんだけど、全然ダメで。年齢も年齢だし、そろそろ結婚もしたいなって」
「出会い、ありそうですけどね」
「紹介もたくさんしてもらったけど、ピンと来なくて。だからアプリで、本気になれそうな人だけを厳選しているの」

― よくわからないけれど、かなり真剣なんだな。

美和の年齢はたしか35歳だったと思う。そこまで焦らなくてもいいのにと思うが、美和の真剣度合いがひしひしと伝わってきた。

だから僕も、「下手に遊ぶとかは絶対にしないでおこう」と決意する。

そして帰り際、僕的には「次はどうしようかな…」と思っていたところ、美和のほうから誘ってきた。

「秀一郎くん、良ければ来週ご飯行かない?」

少しだけ頬を赤らめながら誘ってきてくれた美和がいじらしかったし、断る理由も、もちろんないので僕は微笑みかける。

「もちろんですよ。いつにしますか?」

その後も、僕は美和と何度か食事に行った。でも三度会って、僕は彼女に対して「残念だな…」と思ってしまった。


A2:必死すぎるのが伝わってきて、引いてしまった。


美和との初デートは、青山にある和食の名店『いち太』を予約した。年上のお姉さんだし、自分の中でも頑張って調べて、少し気合を入れたつもりだ。

本人もすごく喜んでくれたので、とりあえず店選びは良かったことに胸を撫で下ろす。




そしてこの前から思っていたことだけれど、隣に座った美和の肌は今日も発光している。

「美和さんって、肌めちゃくちゃ綺麗ですよね」
「本当?秀一郎くんも、だいぶ肌綺麗だよね」
「一応、気にしてますので」

最近、本当にみんなの年齢がわからない。年上も年下も関係なく、世の中には綺麗な人が多い。

そして食事とお酒が進むとともに、お互いの恋愛の話になった。

「じゃあその彼氏と別れた後、誰とも付き合っていなかったんですか?」
「そうそう…って、そろそろ敬語やめない?」
「一応、年上だったので。でもそうだよね、じゃあ敬語ナシで」

美和は年上だけれど、気さくでいい人だった。だから遠慮なく、敬語をやめた。

「秀一郎くんは?今は彼女いないって言っていたけど、いつからいないの?」
「半年くらいかな?」

そして敬語もなくし、打ち解けた頃、美和は、僕に元カノの話を根掘り葉掘り聞いてきた。




「ちなみに…どんな子だったの?」
「丸の内に勤めている、普通の子」
「へ〜そうなんだ。同じ年くらい?」
「いや、2個下かな」
「そうなんだ…」

しかも自分から聞いてきたのに、年齢を言うとわかりやすく落ち込んでいる美和。さらにこんなことまで聞いてきた。

「…やっぱり秀一郎くんって、年下のほうが好き?年上はナシ?」

― いや、面倒臭いな!

そもそも、お互いの年齢が公開されているアプリでマッチしている時点で「年齢なんて気にしていない」証明にならないのだろうか。

「そんなことないよ!さすがにすごく上は厳しいかもだけど、そこまで僕と美和ちゃん変わらなくない?」

でも美和は納得がいったのかいかなかったのか、僕に対する質問をやめてはくれない。

「ちなみに、秀一郎くんって、今は誰かと付き合う気はあるの?」
「もちろん!真剣に彼女を探してるよ」
「それは結婚も含めて?」
「僕も31歳だし、それは考えるよね」

この時に、僕は最初から若干引っかかっていたことが明確になった。

美和には、余裕がない。

もっと堂々と構えていればいいのに、漂う必死さが拭えない。

しかも、それが相手に伝わってしまうため、男側としては「この人、結婚とか恋愛に対して必死なんだな…今、誰も競争相手がいないんだな」と思うことで優位な立場に立ててしまう。

そんなことを考えながら、食事を終えて、僕たちは店の外へと出た。この時も、美和の必死感は漏れていた。

「秀一郎くん、ありがとう!…この後、どうする?」
「どっちでもいいけど…せっかくだからもう1軒行く?」
「うん!行く!」

初デートだし、2軒目も無理はしなくてもいい。でも食い気味にきて、なかなか帰らなかった美和。

何度か会えば、それもなくなっていくのかなとも思っていたけれど、結局変わらなかった。むしろ変わらないどころか、三度目のデートでこんなことを言い始めた。

「私、来週誕生日でさ…」
「それはお祝いしないとだね!」

― 重い…。付き合う前から、重いよ。

いい人だし、きっと素敵な相手は見つかると思う。でも今、美和が結婚に対して焦りがあり、恋愛に飢えているのは明らかだった。

そしてそういうことに気がついてしまうと、男性からすれば急に女性が魅力的に見えなくなってくる。

適度に余裕があって、自分自身を愛して大切にしながら、ひとりでも自分の人生を謳歌している人。

僕は、そんな女性に惹かれる。

下手に引き延ばすのも申し訳ないので、僕は三度目のデートで美和との会うのはやめておこうと思った。

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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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