今週のテーマは「家にあげてくれない男。その実態は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:結婚2年目、突然「離婚」を突きつけられた妻。最近、夫の帰宅が遅かった理由は…




朝8時。いつもより早い時間に家を出ようとすると、玄関まで妻の遥が見送りに来てくれた。

「ひで君、今日も遅いの?」
「うん、ちょっと飲んで帰るから遅くなるかも」
「そっか…わかった。気をつけて」

最後に、遥の顔を正面からちゃんと見たのはいつだろうか。最近、彼女の顔をまともに見れていない。

でも逃げていても仕方ない。先延ばしにしていたことを、僕はついに告げる決意をした。

「そうだ遥。今週末時間あるかな。…ちょっと話さない?」
「うん」

結婚してまだ2年しか経っていない。どうしてこんな結論を出さなければならなくなってしまったのか。そして僕のこの決断が正しいのか、誰にもわからない。

でもその週末。僕は妻に「離婚してほしい」と告げた。


A1:結婚後の生活プランをもっと話し合っておくべきだった。


受付嬢をしていた遥と出会ったのは、友人の紹介だった。コロナ禍で出会いも少なくなっていたタイミングで遥と出会ったこともあった。

でも初めて会った時から、何かが始まる予感もした。だから交際に発展する前に遥からこう言われた時、すんなりと受け入れられた自分がいた。

「秀和さん、私早めに結婚がしたくて」
「そうだよね。うん、それは僕も考えているから」

口をついて出てきた言葉に、僕自身が驚いた。結婚について真剣に考えていなかったから。でも、遥に「結婚」と言われとき、自然に二人の将来が想像できたのだ。

僕は交際半年で遥にプロポーズをした。

「遥、結婚しよう」
「もちろんです…!」

両家の顔合わせをしたり諸々の作業を終え、僕たちはプロポーズから3ヶ月後に籍を入れた。




結婚当初は、一点の曇りもなく幸せだった。

「遂に結婚したんだ〜」

遥の荷物が僕の家へ運ばれた来たとき。手足を伸ばしながら嬉しそうにしていた遥の顔を、僕は今でも覚えている。

「秀和の家は広いから暮らしやすいな」
「でも、もし将来子どもができたら引っ越さないとだね」

僕的には、何気なく放った一言だった。でも遥は何かを察したのか、パァッと顔が華やいだ。

「そうだよね!子どもができたら子ども部屋が必要だもんね」

結婚したことだし、この先子どもができる未来はもちろんある。そんなことをボヤッと考えていたけれど、でも遥は僕よりもっと現実的だった。




「子どもは32歳までに産みたいの」

遥は今31歳。何となく、出産までに「十月十日」と聞いたことがある。ということは結構急がないといけない。

「そうなの?しかも『産む』ってことは…もうすぐじゃん」
「そう、だから急がないと」
「頑張らないと(笑)」

この時は遥も軽い気持ちで言ったのかなと思っていた。でもだんだんと、遥と僕の気持ちに少し相違が出てきた。

まず遥は僕と結婚してから仕事を減らしたせいか、家で暇を持て余している。

「ねぇひで君、今週末どこか遊びに行こうよ!」
「ごめん、疲れてて…。週末は、家でゆっくりしてもいい?」
「え〜。今週、どこも外食行ってないじゃん」

遥は暇になったのかもしれないけれど、僕の仕事は順調でむしろ忙しくなっていった。でも遥は僕に「どこかへ連れて行ってほしい」と迫ってくる。

「遥、友達と行ってくれば?」
「そうだけど…私はひで君と行きたいのに」

― こんなに幼かったっけ…?

そして疲れて帰ってきたのに遥に迫られると、ついうんざりしてしまう時があった。そのせいか、だんだんと遥の待つ家に帰るのが億劫にもなってきた。


A2:子どもに対する価値観が違っていた。


気がつけば、結婚してから1年くらいで家に帰る足取りが重くなっていた。

それにはいくつか理由もあったのだけれど、一番は夜の営みが“義務”になり始めたからだった。

「ねぇひで君。こんなんじゃ子どもできないよ?もっと協力してよ」
「わかってるけど、ごめん。本当に疲れてて。今仕事もかなり忙しいし」
「それは仕方ないかもだけど…子どもはひとりでは作れないんだよ?」

遥の言いたいことはわかる。僕も夫である以上、協力しないといけないこともわかっている。でも月日が経つにつれて、さらに深刻になっていった。




「私のこと、嫌いになったの?」
「そうじゃないよ、本当に。ただ疲れてて…」
「じゃあ来月の排卵日には絶対にだよ」
「わかった」

このまま夫婦二人で楽しく過ごす…ではダメなのだろうか。

子どもができたら、もちろん全力で可愛がるし極力育児にも参加したい。でも、遥から連日のプレッシャーをかけられればかけられるほど、僕はどんどん逃げ腰になっていく。

「ねぇ何が不満なの?本当は、ひで君子どもが欲しくないんでしょ?」
「そんなことないよ」
「じゃあ何でそんなに非協力的なの?」
「冷静に考えて、遥は子どもがどうして欲しいの?」
「だって…家族になった以上、子どもを作るのは当たり前のことでしょ?」

― 当たり前、か…。

そんなことはわかっているけれど、どうしても行動が追いつかない。そしてある日、遥の本音を聞いた途端に急に冷めてしまった自分がいた。




金曜の夜。寝ようとすると、遥がボソッとベットの端で僕に背を向けながら呟いた。

「ひで君、子どもができないなら私たちって結婚している意味あるのかな…」

その言葉を聞いて、思わず僕は体を起こした。

「遥は、夫婦二人の生活は嫌なの?」
「嫌じゃないけど…。でも子どもが生まれて、幼稚園受験させて良い学校に入れて。子どもがいてようやく家族のピースが完成する気がするの」

それは子どもが欲しいのではなく、遥の人生の“アクセサリー的な感じの何か”が欲しいようにも聞こえてしまう。

それに以前から感じていたことだけれど、子どもに対する価値観が遥とは絶望的に違う。

「別に公立でも良くない?」
「え!絶対ダメだよ。子どもは私学に入れるって決めているから」
「ボーディングスクールとかのほうがいい気もするけどな…」
「でも私、英語話せないし」
「そっか…」

子どもが生まれる前から、こんな感じで良いのだろうか。そもそも僕たちが子どもを作る理由が何だったのか、本来の目的を忘れかけている気もする。

「子ども作ることが義務になったら終わりだよ」
「え?何か言った?」
「ううん、何でもない」

遥のことは好きだし、結婚したことに後悔はない。

でもこのまま夫婦として、一緒に子どもを作って育てる未来がどうしても見えてこない。

― 別れるなら、年齢のこともあるし早い方がいいよな…。

そう思い、僕は早めに遥と離婚をすることを決意した。

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