男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:4回目のデートでお泊まりした女。でも、付き合っているのか確信が持てないワケ




秀和のこと、嫌いになったわけではない。でも結婚して2年が経ち、私たち夫婦の関係は変わってしまった。

「ひで君、今日も遅いの?」
「うん、ちょっと飲んで帰るから遅くなるかも」
「そっか…わかった。気をつけて」

浮気はしていないと思う。でもこの半年、秀和の帰りは目に見えて遅くなった。

朝8時。玄関で靴を履いている秀和の背中に触れようとしたけど、私は手を引っ込める。目の前にいるはずなのに、触れられない距離がある。

すると何かを察したのか、秀和がドアの前で急に振り返った。

「そうだ遥。今週末時間あるかな。…ちょっと話さない?」
「うん」

嫌な予感は的中した。その週末、私は、秀和に「離婚しよう」と言われた。


Q1:結婚を決意したときに、夫が後悔していたことは?


IT関連の会社を営む秀和と出会ったのは、知り合いの紹介だった。ちょうどコロナ禍だったこともあり、出会いもない中での秀和との出会いは私にとって必然のことのようにも思えた。

30歳だった私と、34歳の秀和。

年齢的にも良かったし、私は子どもも欲しかったのでとにかく一刻も早く結婚がしたかった。だから交際する前に、私は一度確認をとった。

「秀和さん、私早めに結婚がしたくて」
「そうだよね。うん、それは僕も考えているから」

その宣言通り、秀和は交際約半年で旅行先の沖縄で私にプロポーズをしてくれた。

「遥、結婚しよう」
「もちろんです…!」




そしてプロポーズから3ヶ月後、両家への挨拶も済まし、無事に籍を入れた私たちは幸せの絶頂にいた。

「遂に結婚したんだ〜」

ひとり暮らしの狭い部屋から、秀和の住む品川の広いタワマンに引っ越した時、私は結婚できたことに心から感謝していた。

「秀和の家は広いから暮らしやすいな」
「でも、もし将来子どもができたら引っ越さないとだね」

― 子ども…。

秀和から当然のように「子どもができたら」という話をしてくれて、私は嬉しくなる。秀和も子どもを望んでいると確信が持てたから。

「そうだよね!子どもができたら子ども部屋が必要だもんね」

想定内の年齢で無事に結婚はできた。そうなると、次に考えるのは、子どものことだった。




「子どもは32歳までに産みたいの」
「そうなの?しかも『産む』ってことは…もうすぐじゃん」
「そう、だから急がないと」
「頑張らないと(笑)」

こうして、私たちの楽しい結婚生活が幕を開けた。しばらくは、順調に進んでいた。

結婚とはこういうものなのかもしれないが、2人で暮らしていくうちに、ひずみが生じ始めた。

「ねぇひで君、今週末どこか遊びに行こうよ!」

結婚してから仕事を週3勤務に変えた私は、正直時間を持て余していた。でも、秀和の仕事は忙しくなる一方だった。彼の仕事が忙しいのは、嬉しいのことなのだけれども、私に費やす時間が結婚を機に減ったことは寂しかった。

「ごめん、疲れてて…。週末は、家でゆっくりしてもいい?」
「え〜。今週、どこも外食行ってないじゃん」
「遥、友達と行ってくれば?」
「そうだけど…私はひで君と行きたいのに」

結婚して約1年。年齢のせいか、秀和は「疲れた」と言うことが増えた。そして私は、その言葉を聞くのが嫌いだった。

なぜなら、秀和は子作りに全然協力的ではなくなっていったから…。


Q2:夫が離婚を決意した一番の理由は?


最初は、ただ疲れているだけだと思っていた。でも気がつけば毎週末だったのか2週間に一度になり、そして1ヶ月に一度になっていた。

「ねぇひで君。こんなんじゃ子どもできないよ?もっと協力してよ」
「わかってるけど、ごめん。本当に疲れてて。今仕事もかなり忙しいし」
「それは仕方ないかもだけど…子どもはひとりでは作れないんだよ?」

私のことが、嫌いになったのだろうか。

そう思うと悲しくなる。それに夫に相手にされなくなった私は、女として終わっているかもしれないという絶望すら感じるようになっていった。




「私のこと、嫌いになったの?」
「そうじゃないよ、本当に。ただ疲れてて…」
「じゃあ来月の排卵日には絶対にだよ」
「わかった」

ただこのやり取りを何度か繰り返しても、私たちの間に子どもはできなかった。

そして私のほうも焦っていた。

確実に歳は取っていく。まだ焦る必要はないかもだけど、早く子どもを作りたい。

だから非協力的な秀和に対して、怒りも湧いてくる。

「ねぇ何が不満なの?本当は、ひで君子どもが欲しくないんでしょ?」
「そんなことないよ」
「じゃあ何でそんなに非協力的なの?」
「冷静に考えて、遥は子どもがどうして欲しいの?」
「だって…家族になった以上、子どもを作るのは当たり前のことでしょ?」

こんなことさえ言葉にしないとわからないような人だったのだろうか。結婚する前まで優しくて完璧な夫だと思っていたのに、秀和は変わってしまった。




金曜の夜遅く帰宅した秀和に対して、つい私はこんなことを口走ってしまった。

「ひで君、子どもができないなら私たちって結婚している意味あるのかな…」

すると、寝ようとしていた秀和が体を起こした。

「遥は、夫婦二人の生活は嫌なの?」
「嫌じゃないけど…。でも子どもが生まれて、幼稚園受験させて良い学校に入れて。子どもがいてようやく家族のピースが完成する気がするの」
「別に公立でも良くない?」
「え!絶対ダメだよ。子どもは私学に入れるって決めているから」
「ボーディングスクールとかのほうがいい気もするけどな…」
「でも私、英語話せないし」
「そっか…」

そうすると、しばらく黙りこくってしまった秀和。少し沈黙の後、秀和は低い声でボソッと呟いた。

「子ども作ることが義務になったら終わりだよ」
「え?何か言った?」
「ううん、何でもない」

あの言葉が、秀和のすべてを物語っていたのだろうか。

結局この日から3ヶ月後。秀和は、私に離婚を提案してきた。もちろん私は受け入れないつもりだ。

でも幸せだった私たちに、まさかこんな結末が待っているなんて想像すらしておらず、ひたすら涙が溢れてきている。

▶前回:4回目のデートでお泊まりした女。でも、付き合っているのか確信が持てないワケ

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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夫が離婚を決意した本当の理由は?