「もともと趣味もなくて…」有村架純が語る、プライベートの重要性
幅広い役柄を演じ、女優として圧倒的な存在感を放つ、有村架純さん。
30代に突入した彼女が語る、役柄・作品との向き合い方と、プライベートの重要性とは?
「佇まい、技、味わい、そして器に物語がある。素敵なことですよね」
この日、荒木町の日本料理店『青華こばやし』に姿を見せた有村さんにはどことなく“人が変わった”という印象があった。
2020年12月号の本誌に初登場したときはインタビュー中も人見知りの性格を滲ませていたが、今、目の前にいる彼女はただひたすら朗らかだった。
「丁寧に出汁を引くなど基礎を大切にすれば、美味しさは舌に染み渡ると教えられた気がします」と有村さん。『青華こばやし』のおもてなしは彼女の心に響いたようだ
「四谷三丁目に来たのは今日が初めてです。これまで新宿の近所という程度のイメージしか持っていなかったのですが、このお店で過ごしたら、心がものすごくときめきました」
その理由については、こう語る。
「お茶を習うようになってから、先生が生けてくださる季節の花々や、掛け軸、茶器、お菓子など、茶室にある一つひとつのものにはちゃんと意味があり、組み合わせることによって物語が生まれると知りました。
わたしにはそれがすごくロマンチックに思えます。こちらで扱う素材や、お料理、器などにも同じ感動がありました。
そういう気づきを得られるようになったのは、わたしが歳を重ねて、視点が変わったからかもしれません」
役を理解して、愛する。女優・有村架純のプロ根性
そんな彼女は今、着実にキャリアを積み重ねている。
2021年度には菅田将暉さんとダブル主演を務めた映画『花束みたいな恋をした』の演技で第45回日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を獲得し、翌2022年度にも自らの芝居でいくつかの賞を手にした。
また、今年は『どうする家康』で大河ドラマに初出演。徳川家康の最初の正室・築山殿(=瀬名)として、時代劇に求められる自然で美しい所作とともに快活な女性像を表現した。
元・風俗嬢に扮した映画『ちひろさん』も印象深い。あのマイペースで自由なキャラクターは、突き抜けた感のある今の有村さん自身にも重なりそうだが、聞くと、“ちひろさん”を演じるのは難しかったようだ。
「明るくて、孤独を愛せるちひろさんが格好良くて、憧れて。お芝居をしているときは彼女の背中を追っている気分でした。艶やかでミステリアスな雰囲気を出すために、壇蜜さんを思い浮かべたりして(笑)。
わたし、自分に与えられた役柄を掴みたいという思いから、よくその役の人生を自分なりに考えてノートにまとめるんです。ちひろさんに対してはたくさんページを割きました。
そうすると現場に立つときの不安が少し払拭されるし、そもそも演じるわたしが役を理解し愛せなければ、いくらセリフを言っても上滑りしてしまう気がするので」
与えられた役にきっちり責任を持つ。有村さんのプロ根性が透けて見えるようだった。
有村架純が、心から30代を楽しみにする理由
この2月の誕生日で30歳を迎えたが、役の幅が広がる30代を女優としてどう歩んでいくのか楽しみである。
加賀の陶工・須田菁華の器に盛られたマコガレイのお造りをいただいて、思わずにっこり
「自分が演じることを想像してワクワクできる役に出合いたい。ただし、わたしのイメージとあまりにかけ離れた役を演ったら、見てくださる方が違和感を抱き、作品に集中していただけなくなるかもしれない。
それは作品のピースである者としてあってはならないことなので、一歩進んで二歩さがるぐらいの感じで取り組めたら。
かつては殻を破りたいと焦ったこともあったんですけどね、今は無理しなくてもいいんじゃないかと思っています」
自分に求められていることを理解し、受け入れ、その中でしなやかに新しい魅力を開花させていく。
それも有村架純さんの新しい流儀だ。
きっと、プライベートでも考えていることがあるに違いない。そう思って、水を向けるとこんな答えが返ってきた。
「もともと趣味もなくて、ほぼ仕事一辺倒の生活を送ってきましたが、さっきもお話ししたように、これからはいろいろ挑戦してみたくなり。
今、興味があることを少しずつ書き出しているところなんです。例えば、日常的に料理はするけど、じっくり時間をかけて大作に挑戦してみようとか、編み物に取り組んでみようとか。
やっぱりプライベートとのバランスが取れていなければ、いい仕事はできない。そんな当たり前をようやく噛み締めています」
話を終えると、有村さんは軽やかな足取りで店を後にした。彼女の姿はなくなったが、そこには心地良いふわりとした余韻がしばらく続いていた。
年齢を重ねることは、その人らしく個性的になること。四谷三丁目の片隅で有村さんに教えられたような気がした。
■プロフィール
有村架純 1993年生まれ。兵庫県出身。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』でヒロインを務め、人気が不動のものに。2021年の映画『花束みたいな恋をした』や、2023年NHK大河ドラマ『どうする家康』、映画『ちひろさん』など幅広い演技で存在感を見せる。
■衣装
ベスト 35,200円〈ミューラル URL:https://murral.jp/〉、カバン 62,700円〈トリー バーチ/トリー バーチ ジャパン TEL:0120-705-710〉、ネックレス 238,700円、リング(中指)344,300円、リング(人差し指)458,700円、イヤカフ(上)176,000円、イヤカフ(下)385,000円〈すべてレポシ/レポシ日本橋三越本店 TEL:03-6262-6677〉
▶このほか:「役者の仕事が天職だとは思えない」女優・川口春奈がそれでも表現者であり続ける理由
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