男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「男が交際4年を前に急にプロポーズをしてきた理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:諦めかけていた、彼との結婚。交際4年目にして急に彼がプロポーズをしてきた理由は…




目の前で、もうすぐ交際4年になる菜穂が目を潤ませている。

「菜穂、待たせてごめん。結婚しよう」

薔薇の花束と共にしたプロポーズ。ベタすぎるかなとも思ったけれど、嬉しそうにしている菜穂を見て、間違っていなかったと確信する。

「裕人…ありがとう」
「返事は?」
「もちろん、YESです」

僕はバツイチで「一度結婚したから、もういいかな」と思っていた。再婚する気なんて、まったくなかった。

でもそんな僕に結婚を決意させた、菜穂のある言動があった。


A1:前妻で、慰謝料や財産分与の件で懲りたから。


菜穂と出会ったのは、知人が開催してくれた食事会だった。

長身でスラッとしており、綺麗な顔立ちをした菜穂はかなり僕のタイプだったけれど、最初は少し警戒していた。

なぜなら、前妻も同じようなタイプの見た目だったから。しかもその前妻はかなりワガママで、離婚するときにかなり揉めたのだ。

「じゃあ菜穂ちゃんは美容系の仕事をしているんだ。肌綺麗だもんね」
「裕人さんも、すごくお肌綺麗ですよね?」

でも話してみると菜穂は真面目そうで、純粋に良い子だなという印象だった。

だから僕は、個別で菜穂を誘ってみることにした。

「裕人さんからお誘いいただいて、ビックリしました」
「そう?なんで?」
「いや、私にあまり興味がなさそうだったので…」
「そんなことないよ!じゃないとこうやって誘わないし」

初デートには僕が好きでよく通っている、麻布十番にある『ピッコログランデ』にした。清楚なワンピースを着ていた菜穂は、さらに綺麗に見える。




「ここのお店、よく来られるんですか?」
「うん。家が近くて」

離婚したての33歳。経営者でそれなりに仕事も成功し、いつかは上場も視野に入れている。だからこそ、女性選びにはかなり慎重になっていた。

だから今日も菜穂と「今すぐ真剣交際」というよりは、軽い気持ちでのデートだったことは否めない。

「菜穂ちゃんは?最近どんな感じなの?彼氏とか…いるの?」
「いないですよ〜。別れてから半年くらいですかね」
「菜穂ちゃんって、浮気とかしなさそうだよね」
「そうですね。浮気はしないです。逆に裕人さんはするんですか?(笑)」
「いや、一応一途だよ。前の嫁も、向こうの浮気が原因だし」

前妻はかなり自由奔放で、離婚理由は彼女に否があったにもかかわらず、財産分与ではガッツリと取られてしまった。

「そうなんですか?」
「僕も仕事ばかりしていたのが悪かったんだけどね。女性って怖いなと思った」

そんな話をしていると、この店定番の「バーニャカウダ ピッコログランデ風」が出てきた。すると急に菜穂は、恋愛の質問をしてくる。




「いろんな人がいますからね…裕人さんは?どういう女性が好きなんですか?」
「前の奥さんが強い人だったから、どちらかというと優しくて、とにかく穏やかな人かな」

その点、菜穂は穏やかで優しそうだ。

「菜穂ちゃんって、怒らなさそうだよね?」
「怒るっていう行為自体が苦手なんです」
「菜穂ちゃんって癒やし系だよね。最初に話した時から実はいいなと思っていて」
「そうなんですか…?」

可愛らしくて、菜穂のことをいいなと思っている自分がいた。

ここから何度か食事をし、いつの間にか週末は一緒にいるようになっていく。でもこの時、まだ正式に付き合っていたわけではなかった。

ただ菜穂と過ごす時間は心地よくて、この先も一緒にいるんだろうなとは思っていた。だから最初から嘘をつかずに、自分の結婚観については話した。

「菜穂は結婚したいよね?僕には結婚願望がないから、もし本当に結婚したくなったら他の人を探してね」

好きな子とは一緒にいたいけれど、パートナーでいい。結婚する意味がわからなかった。


A2:何も言わず、辛い時に支えてくれたから。


こうして菜穂と一緒にいるようになって1年が経った頃。さすがに正式に付き合うことになったけれど、相変わらず僕の中での決意は変わらなかった。

「裕人って、本当に結婚願望がないんだね」

菜穂が何を言いたいのかは、わかっている。

「結婚しなくても良くない?今の関係でも十分だし」
「…そうだね」

でも僕の意思を尊重してくれているのか、それ以上言ってこない菜穂。それに関しては、本当に感謝していた。

そんな時に迎えた菜穂の30歳の誕生日。出会った時は33歳と27歳だった僕たちなのに、あっという間に時間が経っていた。

「もう菜穂も30歳か…。時が経つのは早いね」

菜穂の誕生日を祝いながら、しみじみと感じる。でも菜穂が放った言葉にはかなり重みがあった。

「そうだよ。私だっていつまでも待てないかもしれないよ?」




― そうだよなぁ…。

菜穂の言葉にハッとする。いつも隣にいてくれる彼女もそろそろ結婚したい年齢だろうし、いつ離れてしまうかもわからない。

でもこれほど一緒にいて別れなかったということは、この先も同じだろう。

何よりも、ここ数年の間で事業がうまくいってない時期があった。余裕もななくなり、不安も大きかった。

そんな時でも、何も言わずに隣でニコニコとしてくれていた菜穂。

彼女の存在がどれほど大きかったのか…。

またその大変な時期があったからこそ、菜穂がどれほど素晴らしい女性で、「これ以上の人にはもう出会えないかもしれない」と気がつくことができたと思う。

「菜穂って、本当に怒らないよね」
「裕人には怒っても無駄って知っているから(笑)」
「さすが、よくわかってるね」

僕が不安定な時でも安定した精神で、どんと構えてくれている菜穂。

― ありがたい存在だよな…。

ようやく仕事が落ち着いて、また業績も回復してきた。

そのタイミングで、辛い時にずっと隣にいてくれて、そして結婚も強要してこなかった菜穂に対して「何かしらの“恩返し”をしてあげたいと」思うようになっていた。




僕自身、こんなふうに考えが変わるとは思っていなかった。

正直結婚にはまだ迷いもあるけれど、菜穂に対してちゃんと責任を取りたいと思った。

うまくいっている時は、みんないい顔をして寄ってくる。

でも人は辛かったり、大変な時期にそばにいてくれた人への恩は忘れない。よく「病気になった時に、そばにいてくれた女性を好きになる」と言うけれど、事業が大変な時も同じだ。

「菜穂、ありがとう」

“恩返し”なんて言葉は偉そうだし、合っていないと思う。でも何かしらのケジメとして。そして今までずっと信じてついてきてくれた菜穂に対する感謝の証として、僕は結婚を決めた。

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