男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「筋トレをしている男を女が落とせなかった理由は?」という質問。さて、その答えとは?

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二度目のデートの帰り道。帰ろうとすると、紗里から強く腕を引っ張られた。

その力が想像以上に強くて驚いたけれど、僕は彼女の手をそっと振り払う。

「ごめん、紗里ちゃんのことそういう感じでは見れなくて…」

綺麗だし、悪い子でないことはわかっている。

でも二度のデートで、僕は早めに身を引こうと決意していた。

傷ついた顔をして、すぐに流れてきたタクシーに乗り込んだ紗里。そんなタクシーを見送りながら、小さく…いや、安堵のため息をついた。


A1:最初からボディタッチが多いなとは思っていた。


紗里と出会ったのは、友人の結婚祝いのパーティーだった。

筋トレ仲間の一人が結婚をしたのでお祝いに新郎新婦の家で集まった際に、新婦側の友人として来たのが紗里。目鼻立ちがハッキリしていて、細身の彼女は目立っていた。

そしてしばらく場が盛り上がったところで、気がつけば紗里は僕の隣に座っていた。

「俊さんも鍛えていらっしゃるんですか?」
「一応、ジムを経営していて。他にもいろいろとやっているんだけど」

ジムを経営している以上、自身の体が弛んでいるわけにはいかない。元々筋トレも好きだし、それなりに鍛えているつもりではある。

すると、紗里は急に目を輝かせた。

「こんなカッコいいうえに、色々とご自身で経営されているなんてすごいですね」
「全然すごくないよ〜。こんなのいっぱいいるでしょ」

僕の周りだけかもしれないけれど、ジムを経営している男性は近頃多い。だから特別なことをしているという認識はなかった。




だが紗里からすると違ったようだ。

「俊さん、すごい鍛えていらっしゃいますよね…?」
「一応ね。わかる?」

すると、紗里はお決まりのセリフを言ってきた。

「筋肉すごいですね…触ってもいいですか?」

鍛える理由は、自分のためでありモテるためだと思う。そこは素直に認めよう。

だから触られるのは嫌ではなかったし、「筋トレをしている」と言うと、大概の女性は紗里のような反応になる。

「え〜すごい!!!」




僕の二の腕をぽんぽんと触りながら、嬉しそうにしている紗里。お馴染みの反応ではあったけれど、嫌な気はしない。

ただやたらと必要以上に触ってくるなとは思ったけれど…。

それでも紗里は可愛かったし、僕たちはまた会う約束をした。

「ちなみに俊さんは、普段はどの辺りで飲まれていることが多いんですか?」
「僕は恵比寿とか中目黒が多いかな。紗里ちゃんは?」
「私もです!良ければ今度飲みませんか?」
「うん、ぜひぜひ。そういえば、来週このメンバーで花見兼ねて中目黒で飲むけど、紗里ちゃんも来る?」
「いいんですか?嬉しい♡」

こうして同じメンバーでもう一度遊ぶことになった。

またこれが楽しくて、気がつけば僕は紗里をデートに誘っていた。しかしこのデートで、僕は紗里の驚くべき癖を知ることになる…。


A2:頬を叩いてきたこと。


こうして初デートを迎えた僕たち。店にやってきた紗里は相変わらず綺麗で、僕は思わず声に出してしまう。

「俊くん、お待たせ」
「おぉ…紗里ちゃんって、本当綺麗だね」

ただこの時の僕は、想像すらしていなかった。酔ったときの彼女に、あんな悪い癖があるなんて…。




「ここ、素敵なお店だね」
「でしょ?紗里ちゃん連れてきたいなと思って」
「俊くんって、いつもこんな素敵なデートをしているの?」
「いつもじゃないよ!普段は雑多な店や汚いけど美味い焼肉屋とかも好きだし」
「そうなんだ…意外」
「紗里ちゃんはそういうお店、行かなさそうだよね」

綺麗で上品な紗里は、きっとそういう店には行かないだろう。

「そうだね、あまり行かないかな」
「似合わないよね(笑)」

そんな会話をしているうちに僕たちは一軒目を終え、二軒目へと移動することになった。二軒目は知り合いがやっているバーへ行き、個室が空いていたので僕たちは奥の個室のソファに隣り合って座る。

必然的に、急に距離が近くなる。すると紗里が、僕のことをじっと見つめてきた。

― 近いな…。

そう思っていた時のことだった。急に、紗里が僕の頬をすりすりと触ってきた。

「俊くんって、肌綺麗だよね」
「そう?」

― ……え?なにコレ?

初デートでの激しいスキンシップに引いたことは、言うまでもない。

でも僕がさらに驚いたのは、そう言った後で突然、紗里が僕の頬を叩いてきたことだった。




理解が追いつかず、一瞬僕は頭が真っ白になった。

「ちょっと紗里ちゃん、何やってるの(笑)」
「なんとなく(笑)」

もちろん強く叩いてきたわけではない。けれども誰かに叩かれるなんて、ただただ気分が悪い。

愛情表現のつもりか何か知らないけれど、僕は紗里の言動に呆然としてしまった。

― この子、もしかして酒癖悪いのかな…。

上品に見えるのに、急に人のことを叩いてくるのはどういう神経なのだろうか。しかも当の本人はまったく悪気もないようで、僕の胸筋をじっと見つめている。

「本当に俊くんってカッコいいよね。どうやったらその筋肉になるの?」
「地味にトレーニングかな」
「触ってもいい?」
「ちょっと待って、力入れるから(笑)」

そして今日も紗里は僕の体をベタベタと触ってくる。

触られるとなると力を入れてしまうのは悪い癖だと思うけれど、とりあえず僕は早めに話を変えてみる。

「紗里ちゃん運動は?」
「私は全然してなくて…」

しかしそんな話をしていたタイミングで、偶然僕の手が紗里の腰に当たってしまった。

― あ、ごめん!

しかも紗里の腰回りは柔らかくて女性らしい触り心地で、一瞬ドキッとしてしまう。

僕自身が鍛えているからといって、同じことを女性には求めない。

多少鍛えてくれていたほうが話は合うかもしれないけれど、そんなこと決して強要はしない。女性の体型は、自身が満足いっていればそれでいい。

でも途端に紗里がさっと体をそらしたので、僕は悪いことをしたなと思い、慌てて手を引っ込めた。

しかし結局、なぜ叩いてくるのかわからないままこの日はこのままデートが終わってしまった。

でも二度目のデートでも紗里は酔うと必要以上に力が強くなり、冗談なのだろうが僕の頭を叩いてきたり、腕を力強く引っ張ったりしてくる。

― これは女性としてナシだな…。

そう思ったので、二度目のデートの帰り道に紗里から引っ張られた腕を、僕はそっと離したのだった。

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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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女がデート中にずっと思っていたコト