この世には、生まれながらにして満たされている人間がいる。

お嬢様OL・奥田梨子も、そのひとり。

実家は本郷。小学校から大学まで有名私立に通い、親のコネで法律事務所に就職。

愛くるしい容姿を持ち、裕福な家庭で甘やかされて育ってきた。

しかし、時の流れに身を任せ、気づけば31歳。

「今の私は…彼ナシ・夢ナシ・貯金ナシ。どうにかしなきゃ」

はたして梨子は、幸せになれるのか―?

「ナシ子先輩の幸福な人生」一挙に全話おさらい!



第1話:「彼ナシ・夢ナシ・貯金ナシ」31歳・お嬢様OLが直面した現実

「相談があるの、座って」

会議室に入ると、上司は、梨子にイスを勧めた。上司は、この法律事務所に長年勤めている、バックオフィスのリーダー的存在である。彼女から直々に呼び出された梨子は、緊張した面持ちになる。

「相談とは、なんでしょうか」
「奥田さん、新しいプロジェクトのメンバーになってもらえない?」

それは、上司が先導する、“オフィス環境整備プロジェクト”への誘いだった。

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第2話:同窓会は恋の始まり?憧れの人と再会し、後日ディナーへ。その帰り道、予想外の出来事が…

「奥田梨子です」
「安藤隆です。話をするのは初めて、かな。学年も違うから、僕のことなんて知らないだろうね」

はにかんで笑う姿に、テニスラケット片手にさわやかに汗をぬぐう少年の面影が重なる。

「いいえ。実は私、安藤先輩のこと…」

莉子の頭の中では、早くもウエディングベルが鳴り響いていた。

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第3話:会社の男の先輩と、コーヒーブレイク。先輩のある言葉に、31歳OLは赤面し…

沙理から押し付けられた誤字脱字チェックはなかなか終わらず、午後の時間はあっという間に過ぎていった。

梨子の会社用スマホは相変わらず地味なまま。カバ―は、私用スマホに付け替えた。

こんな時こそ、息抜きに“スマホ推し活”をしたい。しかし、機密情報を取り扱う職場で、私用スマホを頻繁に取り出すのは気が引ける。

― 早く仕事を終えて、スマホの中の推しに会いたい!

その一心で、梨子は血走った目でPCに向かっていた。

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第4話:社内で人気のイケメン弁護士と、デートへ。ライバルを出し抜くために女がとった行動とは?

― えっ、この弁護士誰だっけ?

顔をまじまじと見ていると、彼は不服そうに言った。

「遅刻だよ、ちこく!今日は18時スタートだよ」

美央がひきつった笑顔で、梨子にささやく。

「梨子先輩、私、集合時間のこと知らなくてごめんなさい。沙理さんに言われた通りの時間だと思ってたから…そして、このシャンパン飲みまくってるおじさん、誰ですかね」
「し、知らない」

― せっかく翔馬さんと親しくなれるチャンスだったのに、おじさん弁護士の相手で終わっちゃうの!?

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第5話:告白を期待して臨んだ映画デート。なにも言わずに帰ろうとする彼に、女が叫んだ言葉とは?

「LINE見たけど、ちょっと長すぎて読めないわ。つまりどういうこと?説明してほしくて電話しちゃった」

先日の翔馬との焼肉デートの一部始終を、紀香にLINEで報告したところだった。

思わぬ長編になってしまい、混乱を招いていた。梨子は、改めて何があったのかを説明する。

「…なるほどね。梨子の次の王子様は、そのショーンこと田村翔馬さんなのね」
「そうなの。価値観も合うし、職場も同じだし、今度こそ運命の人だと思う!」

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第6話:両思いを確信して先輩に告白するも、撃沈…。女が聞いて仰天した「フラれた理由」とは?

「デート、楽しかったのに。なんでフラれたんだろう」
「そこは疑問よね。前回の焼肉デートから昨日の映画まで、少し日にちが空いてるから、その間に会社でなにかあったとか?」

紀香の言葉を受け、記憶をたどる。

「うーん、心当たりはないなあ。しいて言えば、私が司法浪人中の新入社員の教育係になったぐらい」

いくら考えても原因が思い浮かばない。2人は運ばれてきたエクストラスーパーショートケーキを黙々と食べた。

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第7話:「二度と会いたくない」と思っていた彼から、デートの誘い。女が渋々ながら誘いに応じたワケ

「梨子さん、僕、ずっとあなたに謝りたかったんだ」
「はあ?今さら何ですか?」

心の声が、思わずそのまま出てしまう。

「突然お父さんを紹介してだなんて、失礼すぎるよね。ごめん。あの時は転職したてでいっぱいいっぱいだったんだ。同窓会で良いつながりをつくらなくちゃ、って自分のことしか考えてなかった」

― へえ、なんだか素直じゃない。

「それで、お詫びにまた食事でもどうかなって思って…」

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第8話:「早く子どもを作ったら?」と騒ぎ立てる姑。機転を利かせた“ある一言”で、姑は沈黙し…

梨子は、紀香の話を聞いていた。聞けば、姑のアポなし訪問に驚き、自宅を飛び出してきたのだという。そのとき急に、紀香の目が泳いだ。

「紀香、どうしたの?」
「うわ…。旦那に『すぐに帰って、私の代わりにお義母さんとちゃんと話して』って連絡したけど、ダメだったか…」

紀香が、挙動不審になってつぶやく。

カツカツと近づいてくるハイヒールの音に、梨子は振り返った。するとそこには、やたらと若作りをした初老の女性が立っていた。

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第9話:お鮨デートの後、彼とタクシーへ。しかし彼は数分で「降りよう」と言い、予期せぬ行動に…

「あ〜おいしかった!安藤先輩、ごちそうさまでした」

何から何まで完璧だったコース料理も終わり、2人でタクシーに乗ると、突然アンドリューが梨子の方を向いた。

「梨子ちゃん、話があるんだ」

― あれ、このシチュエーション。デジャヴ?

そこで止めてください、というと、アンドリューは梨子にタクシーを降りるよう促した。

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第10話:憧れの先輩からプロポーズ。女が返答に困ったのは、彼の“ある思惑”が見えたからで…

実家で薄暗い食卓に座る、40歳の自分。

年老いた母に「そのうち素敵な人が現れるわよ」と声をかけられる姿を想像し、梨子は身震いした。

― どう考えてもここは結婚一択だわ。

結婚するだけで、自分は何の努力をせずとも、“脱ナシ子”を成し遂げられるのだ。

― だけど、この胸のもやもやはなんだろう。

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第11話:ブライダルフェアの直後、彼と修羅場に…。女が許せなかった、彼の行動とは?

「安藤先輩、ちょっと結婚のことは置いておいて、私たち自身の事を話しません?」

週末、『ルグドゥノム ブション リヨネ』でランチデートをしていた梨子は、アンドリューに切り出した。

「私、自分のために生きてみたいんです。もちろん、結婚できるのは嬉しいんですけど、周りのお祭りムードに流されているだけな気もして」

不思議そうな顔をするアンドリューを前に、梨子は続けた。

「だから、結婚して落ち着いたら、やっぱり転職したいと思います。今度は、心の底から自分がやってみたい仕事につこうと思います」

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第12話:週末に同僚と2人で飲んだら、意外な展開に。月曜日、ドキドキしながら女が出社すると…

梨子は、LINEアプリを開く。紀香とのトーク画面をタップしてみると、『私、安藤梨子になります♡』のメッセージが、送信されないまま残っていた。

― そういえば紀香、私が婚約したことすらまだ知らないんだったわ。

自嘲気味に笑うと、梨子はLINEアプリを閉じかけたが、思い立って別のトーク画面を開き、通話ボタンを押した。

しばらくの間、呼び出し音がなり続け、もう切ろうとスマホを耳から話したとき、聞きなれた声が梨子の耳に届いた。

「もしもし、突然電話なんて、どうしたんですか?」

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