増え続ける「○○ハラスメント」。ハラスメントの実態を調査
識学はこのほど、全国の会社員を対象に「ハラスメントに関する調査」を行いました。
昨今、様々な“ハラスメント”が話題にあがっています。しかしながら“○○ハラスメント”という言葉だけが先行し、その本質である「なぜ人はハラスメントをしてしまうのか」、また「人は何をもってハラスメントと感じるのか」の、その詳細はあまり見えてきません。
そこで今回は、どんなハラスメントを受けたことがあるのか、その実態とハラスメントを受けた際に会社はどのような対応をしたのかなど、様々なハラスメントに関する調査を行いました。
■ハラスメントを受けた人34.8%。男性は「アルハラ」、女性は?
はじめに、全国の従業員数10名以上の企業に勤める20歳〜49歳の男女に、職場でハラスメントを受けたことがあるか聞いたところ、34.8%がなんらかのハラスメントを受けたことがあると回答しました。
男女別でみると男性が34.2%、女性が35.6%がハラスメントを受けたと回答し、性別での違いはあまり見られませんでした。しかし年代別で見ると、20代が32.3%、30代が34.0%、40代が37.8%と、年齢を重ねることで、ややハラスメントを受けたことがある人が多くなる傾向が見られました。
これは、年齢を重ねることでハラスメントに遭遇する機会が増えたからとも言えますが、ハラスメントの意識は以前よりかなり高くなっています。そのことで若い世代がハラスメントを受ける機会がやや減少傾向にあるのかもしれません。
先の設問でハラスメントを受けたことがあると回答した人に、どのような内容だったのか聞いてみると、最も多かったのは「パワーハラスメント」71.0%で、「モラルハラスメント」43.0%、「セクシャルハラスメント」21.0%と続きました。
男女別でみると、1位「パワハラ」、2位「モラハラ」という順位に変化はありませんでしたが、全体3位だった「セクハラ」は男性が5.9%だったのに対し、女性は36.5%とかなり大きな差が出ました。また「アルハラ」でも、男性が23.0%、女性が5.4%と男女で大きな違いが見られました。
◇具体的な“ハラスメント”のエピソード
女性社員に対して、お茶出しや、使用済みの食器洗いを強いられている。(女性、44歳)
「お前しかその仕事をこなせる奴はいないから頑張ってくれ」と次々に仕事を振られるが、周りのみんなは定時で帰宅するなどの不公平な対応を受けた。(男性、40歳)
妻子ある上司に告白され断った後、仕事を振らないなどの嫌がらせを受けた。(41歳、女性)
行きたくもない部内の飲み会で「3年目までは二次会出ないといけない」と言われ、参加しなければならなかった。(女性、29歳)
妊娠に伴い退職を打診したら男が辞めるのか、と言われた。(男性、42歳)
■会社は何もしてくれない…!? ハラスメントを「会社に報告しなかった人」64.0%にも
ハラスメントが起きた際、会社に報告したか聞いたところ、報告したのは36.0%で、残りの64.0%が報告しなかったと回答しました。
続いて、「報告しなかった」と回答した人に、なぜ会社に報告しなかったのか、その理由を聞いたところ、「報告しても変わらないと思ったため」が59.4%に。2位の「報告することによってさらに被害がひどくなることを恐れたため」35.9%と、大きな差がありました。どうやらハラスメントを受けた多くの人が、“最初から諦めてしまっている”ようです。
では「報告した」と回答した人に、会社はどのような対応をしたのか聞いてみると、「何もしてくれなかった」が最も多く47.2%という結果に。男女別でみると、男性が37.7%なのに対し、女性は56.4%と、女性側が訴えた“ハラスメント”に対して、“会社は何もしてくれない”という傾向が高く出ました。
■ハラスメントの原因「知識・認識がないから」40.3%。対策は?
なぜハラスメントが起きてしまうのか。その原因を聞いたところ「ハラスメントに関する知識・認識がないから」40.3%で、「感情的な会話や発言が多いから」が35.7%、「ハラスメントを防止するためのルールが明確でないから」が33.3%と続きました。
ではハラスメントをなくすために、会社側は何をすべきなのでしょうか。その対策方法では、「ハラスメントをする人物に対しての対処方針の策定・啓発」が58.0%、「ハラスメントの周知と啓発」が48.7%、「ハラスメントを防止するためのルールの設定」が43.7%と続きました。
どんな行為がハラスメントに当たるのかを周知させ、またハラスメントを防止するためのルール設定や、ハラスメントをした人物にどういった対応がなされるのかを会社側がしっかり提示することが重要だと、ハラスメントを受けた側は考えているようです。
■ハラスメントだと感じる行為トップは「肩に触れる」。「結婚してる?」は男女差が
ではどんな行動が“ハラスメント”にあたるのでしょうか。その内訳を聞いてみると「肩に触れる」が58.7%。「酒をつがせる」が53.3%、「人の服に触れる」が49.3%と続きました。
やはり、直接的に“触れたり”、“酒をつがせたり”という行為はNGのようです。男女別でみると、「肩に触れる」を“ハラスメント”だと思う男性は50.7%なのに対し、女性は66.9%と、やはり性別によって“肩に触れる”=“ハラスメント”という認識に差があるようでした。
また、「結婚しているか聞く」については、男性は28.9%なのに対し、女性は39.9%と、“婚姻状況”は女性側の方がよりナイーブなようです。
◇経験もしくは目撃した“○○ハラスメント”とそのエピソード
お茶ハラスメント…女性社員にあたりまえのように、お茶を出すように指示を出す。(女性、49歳)
正論ハラスメント…その通りですと言うしかない内容を延々と言われる。(女性、33歳)
お土産ハラスメント…旅行に行った際にお土産を買ってくるよう圧力を与える。(男性、43歳)
クーラーハラスメント…男性ばかりの職場だと勝手に冷房を18度以下とかに設定されて上着を何枚も着て自衛しないといけなくなる。(女性、44歳)
タバコハラスメント…タバコの付き合いの強要。(男性、22歳)
寿司ハラスメント…打ち上げが毎回寿司屋。(女性、34歳)
奢りハラスメント…食事の際に断っても無理矢理奢ろうとしてくる上司や同僚がいて、借りを作っているような感じがして嫌な気分になる。(男性、30歳)
■ハラスメントの“仕返し”「したことがある」20.7%。その内容は?
ハラスメントを受けた際、「会社は何もしてくれなかった」という回答が多く集まりましたが、ハラスメントを受けた本人が、直接“仕返し”をしたことがあるかを聞いたところ、「はい」と回答したのは20.7%でした。
◇具体的な“仕返し”の内容
お客様との約束の時間までに納品が間に合わず、謝罪時に一方的に上司に非が向くように仕向けた(男性、40歳)
ノートに詳細を綴り会社に報告し、本人にもこれ以上関わらないように警告した。(女性、46歳)
無視したり、手土産を配らなかったり、コーヒー入れなかったりの制裁。(女性、41歳)
他の方が急に休んで代わりに出てくれないかな と言われましたが断りました。(男性、31歳)
「ハラスメントの危険人物」という情報を広めた。外堀から埋めて、処分が下さざるを得ない状況を作った。(男性、40歳)
■ハラスメントは、実態に対策が追いついていない?
今回の調査では、ハラスメントを受けた際、会社に報告した方はわずか36.0%で、報告したと回答した方でも、「(会社は)何もしてくれなかった」が47.2%という結果でした。実際に起きているハラスメントの数に対して、会社側がその事実を把握できている数や、適切な対応ができている数は、想像以上に少ないのかもしれません。
では、そもそもなぜハラスメントが起きてしまうのでしょうか? 原因は大きく2点だと考えられます。
1点目は、「認識のズレ」です。「認識のズレ」とは、例えば「部下はハラスメントを受けていると思っているが、上司はそのつもりがない」というような事象です。実際に今回の調査でも、職場で“ハラスメント”が発生する原因を聞いたところ、最も多かった回答は「ハラスメントに関する知識・認識がない」40.3%でした。
2点目は、「現場の情報が報告されない」ことです。すなわち、明らかにハラスメントに該当する事象が現場レベルで発生していたとしても、その情報が上に報告されないことにより、同様のハラスメントが社内で継続・拡大してしまうということです。
これは、ハラスメントを受けた当事者が報告を行わないことよりも、安心して事実を報告できる仕組みを作れていない組織側の問題と言えます。
こういったハラスメントを防止するためには、上記の2点を解消する必要があります。そこで有効なのは、「誰が見ても認識にズレがない明確なルール」を設定し徹底させることです。
このルールには、ハラスメントを防止するためのルールだけでなく、実際にそれが起きた場合の報告窓口や、会社の対応も明記しておき、全社員が常時確認できる状態にしておきます。そして、万が一、ハラスメントが起きてしまった際は、再発を防止すべく、素早くルールを修正・追加します。
もちろん、全社員がハラスメントに対して正しい知識・認識を広く持ち、自主的にハラスメントに該当するような行為を自制できる状態が理想的です。しかし、ある行為がハラスメントにあたるかどうかは、当事者の関係性やその場の状況などによって、判断が難しい側面があります。
だからこそ、「○○という行為は明確にNG」というようにルールを設定することで、良し悪しの基準が明確になり、社員が迷いなく安心して仕事に集中できる環境を構築することができます。
■調査概要
調査機関:識学
調査対象:全国の従業員数10名以上の企業に勤める20歳〜49歳の男女で、職場において“ハラスメント”を受けたことがある人
有効回答数:300サンプル(スクリーニング:2,204サンプル)
調査期間:2022年10月24日
調査方法:インターネット調査
(エボル)