7月4日からの一週間、B2Bの世界は忙しい一週間だった。2つの大手メディアエージェンシーが、ビジネスサイドの関係を強化したいマーケターに門戸と専門知識を開放したためだ。

まず、ホライゾン・メディア(Horizon Media)がグリーン・スレッド(Green Thread)を立ち上げた。レベニュー・イネーブルメント・インスティテュート(Revenue Enablement Institute)のデータとインサイトを活用するB2Bサービスだ。そして同じ週、ハバス・メディア・グループ(Havas Media Group)がB2Bマーケティングを根底から覆すため、ハバス・ビジネス(Havas Business)を始動した。「役員室に対応した」アプローチで、すでにマークス(Maersk)やアクサ(AXA)の仕事を獲得している。

グラビティ・グローバル(Gravity Global)もB2Bスキルを拡大するための資産獲得を進めており、直近ではモジョ・メディア・ラボ(Mojo Media Labs)を買収した。

よりデジタルに移行するB2B



時代遅れな例えで恐縮だが、いまはまさしく1960年代に一世を風靡したロックバンド、バッファロー・スプリングフィールド(Buffalo Springfield)のヒットソングの如く、「Somethings Happening Here(ここで何かが起こっている)」とでもいうべき状況だ。

実際、メディアエージェンシーの世界が景気後退におびえ、300億ドル(約4兆1700億円)規模のビジネス市場に目覚めたのは明らかなようだ。そして、見たところ、B2BとB2Cのマーケティングが重なり始めている。

インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence、旧イーマーケター)のB2Bマーケティング担当プリンシパルアナリスト、ケルシー・ボス氏は、「パンデミックによって加速したデジタルトランスフォーメーションが、B2Bを(従来と比較して)よりデジタルな活動や支出に移行させた」と話す。「B2Bのデジタル空間が混雑するにつれて、マーケティングリーダーには、競合から抜きんでるという強い圧力がかかっている。また、パンデミックは、マーケティングがビジネスの成長を促し、ビジネスを維持するだけでなく、収益の大きな柱になるという期待に火をつけた」。

B2BとB2Cマーケティングの境界はさらに曖昧になる可能性がある。歴史的にB2C市場で戦ってきたメディアエージェンシーがサービスを拡大しているためだ。

「B2Cからヒントを得ている」



独立系メディアエージェンシー、アポロ・パートナーズ(Apollo Partners)の創業者、エリック・パーコ氏は「私が常に信じてきたこと、そして、業界の大部分が目覚め始めていると思うことは、最高のB2BブランドはB2Cに近いマーケティングを行うということだ。なぜなら意思決定者は普段、『私はビジネスの意思決定者だ』と考えながら世の中を歩いているわけではないからだ。彼らも普通の人々だ」と説明する。

「B2Bマーケターは成功するため、B2Cからヒントを得ている」とボス氏も補足する。「新規開拓だけでなくブランド、顧客中心主義、購入者のライフサイクルが重視されるようになっている。コミュニケーションやエンゲージメントを改善し、より有意義なものにするための取り組みも行われている。これらのエージェンシーはB2Cを理解している。そして、この新しいB2Bデジタル環境は、エージェンシーが支援の機会を見いだしているところだ」。

調達プラットフォーム、クーパ・ソフトウェア(Coupa Software)のマーケティング担当シニアバイスプレジデント、トム・ギャビン氏は、メディアの至るところで、B2BとB2Cの領域が交差していると考えている。「たとえば、セールスフォース(Salesforce)はB2Bブランドだが、すべての人にブランドを知ってもらうことに大きな力を注いでいる」と、同氏は語る。

クーパも同じことをしている。求めているのは主にB2Bのオーディエンスだが、2021年のワールドシリーズをはじめ、主要なスポーツイベントのスポンサーになっている(エージェンシーはアポロ・パートナーズ)。

B2Bに「効率性」を



ただし、メディアエージェンシーが足を踏み入れようとしているのは、すでに混雑している市場だ。さまざまな企業やアドテク業者がすでに、B2Bをターゲットにした製品やサービスを投入している。アカウントベースドマーケティング(ABM)ツールのSaaSサプライヤーであるロールワークス(RollWorks)は、ABMのあらゆる段階でB2Bマーケターを支援するための新プログラム、アクセラレート(Accelerate)を展開している。ABMは企業内の販売目標とマーケティング活動を結び付け、互いの行動を把握するため、B2Bに不可欠な要素だと広く考えられている。

ロールワークスのCMO、ランディ・バーシャック氏は、「ABMの力で実現した効率性をすべてのB2B企業のワークフローに浸透させたい」と語る。「(私たちの顧客の大部分がそうであるように)企業と直接取引するのはもちろん、彼らにサービスを提供するエージェンシーとも喜んで協力する」。

[原文:Media Buying Briefing: Media agencies embrace B2B and blend it with consumer-facing campaigns]

Michael Bürgi(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)