妊娠・出産のみならず、女性の健康や美容に深く関わっている女性ホルモン。とくに女性ホルモンの分泌量がガクンと下がる40代後半からは、どのようにして女性ホルモンと向き合っていけばよいのか。婦人科医である松村圭子さんに教えてもらいました。


40代からの更年期、どう対処する?

40代の更年期。ホルモンバランスが崩れると自律神経が乱れ、不調につながる



いつまでも女性ホルモンの恩恵に預かって若々しくありたい、と思う人も少なくないでしょう。しかし、40代後半からは否が応でも女性ホルモンの分泌量はガクンと下がります。
ホルモンバランスが急激に変化すると、自律神経が乱れ、以下のような不快症状が出ます。

・今まで楽しめたことが楽しめない
・汗が止まらない
・寝つきが悪い
・イライラしたり、落ち込みが激しい


これらの症状が出始めたら、更年期のはじまりかもしれません。

●更年期は人生の棚卸し期

しかし、これはだれにでも訪れること。焦ることはありません。「更年期は人生の棚卸し期」と、松村さんは言います。


「この時期、人によっては重い不調を抱え、若いときのような無理も利かなくなってきます。しかし逆に考えると、『若いときと同じようにしなくていいんだ』ととらえることもできます。今まで積み重ねてきたことを少し整理し、仕事や子育てに一生懸命だった人は、だれかに頼ったり、自分のために生きていくモードに切り替えて体をいたわって。いつか使うかもともち続けたものを手放したり、精神的に重荷になる人間関係をリセットしたり、物理的にも精神的にも身軽になるべきです」

●更年期は骨密度に注意を


100もの深い症状があるという更年期ですが、自覚症状にはあまり出ないけれど怖いのが、骨密度の減少。閉経とともに、年に2%ずつも減少するとされています。

「積極的に小魚や大豆製品といったカルシウム源をとるようにしましょう。またその際に、カルシウムの吸収率を高めるビタミンD(キノコ類、魚類などに含まれる)を一緒にとるとより効果的です」

そして1日20分でいいので、足腰を使うよう心がけて。
「運動が刺激になって骨の新陳代謝が活発になるだけでなく、全身の血行もよくなり、気分も上がりますよ」

●急激な変化がつらい人は、大豆製品やサプリメントのエクオールが効果的


更年期障害の症状が重い人は、サプリメントなどに頼るのも手です。
大豆イソフラボンが変換してできるエクオールは、体内で女性ホルモンのひとつであるエストロゲンと似た働きをすることから、更年期障害に効果があるとされています。

「ただし大豆製品を食べることでエクオールを体内でつくれるのは、日本人女性の2人にひとりだけ。代わりに手軽に補給できるサプリメントが販売されているので、ぜひ活用してみて」

●ホルモンの減少は、女性の体を守る手段

このように女性ホルモンの減少に振り回されがちな40代後半以降。しかし、これも女性の体を守るひとつの手段だと松村さんはいいます。

「女性ホルモンが多いままだと、乳がんや子宮体がんなどのリスクが高まる要因にもなります。更年期はつらくても、この時期を抜ければ必ずホルモンは安定して、体も心もウンとラクになり、新しい自分に出合うでしょう。ホルモンに振り回されずにイキイキとすごせる日がすぐきますので、気負いすぎず乗りきりましょう」

ESSE4月号
では、「ホルモンバランスが乱れる生活習慣とは?」など、更年期時期の方だけではない女性ホルモンとのつき合い方を紹介しています。ぜひそちらもチェックしてみてください。

<イラスト/SANDER STUDIO 取材・文/ESSE編集部>

●教えてくれた人
【松村圭子さん】


婦人科医。成城松村クリニック院長。月経トラブルから更年期障害まで女性の健康をトータルサポートする診療が人気。最近は料理が趣味で、食生活や健康食の資格も取得