学校や会社に行く前、朝の支度中につい手を止めて見入ってしまうNHK「連続テレビ小説」。放送開始時期や撮影スケジュールをはじめ、歴代名作の謎に迫る(写真:i-flower/PIXTA)

モノ情報誌のパイオニア『モノ・マガジン』(ワールドフォトプレス社)と東洋経済オンラインのコラボ企画ちょいと一杯に役立つアレコレソレ「蘊蓄の箪笥」をお届けしよう。

蘊蓄の箪笥とはひとつのモノとコトのストーリーを100個の引き出しに斬った知識の宝庫モノ・マガジンで長年続く人気連載だ。今回のテーマは「NHK朝ドラ(連続テレビ小説」)。意外と知らない基本中の基本から、あまり知られていない逸話まであっという間に身に付く、これぞ究極の知的な暇つぶし引き出しを覗いたキミはすっかり教養人だ。

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01. NHK「連続テレビ小説」は新聞の朝刊の連載小説を意識したことから朝の放送に。通称「朝ドラ」

02. する「連続ラジオ小説」という番組があり、ラジオドラマへと発展した

03. これをもとにテレビ放送開始に伴いテレビドラマに姿を変えてスタートしたのが「連続テレビ小説」

朝ドラはいつから始まった?

04. 連続テレビ小説の第1回目は1961年4月に放送開始

05. 連続テレビ小説と『みんなのうた』は同じ日に始まった

06. ラジオドラマの名残で、初期の作品は台詞よりナレーションが多く用いられた


07. 今でもナレーションが多いのが朝ドラのスタイル。これは、家事をしながら画面を見なくても内容がわかるようにという配慮もあるといわれる

08. これまで女性ヒロインの作品が約9割を占め、男性が主人公の作品は10作品ほど

09. 第1作は1961年4月開始の『娘と私』。放送は月〜金曜、朝8時40分から20分間

10. 第2作『あしたの風』より、月〜土曜8時15分からの15分間放送になった

11. 2010年4月『ゲゲゲの女房』から朝ドラは8時スタート・15分間の放送となり現在に至る

12. 放送開始から14作目までは年に1作品の放送だった

13. 1975年度の『水色のとき』から前期、後期の2作品制に。前期はNHK東京放送局、後期は大阪放送局が制作

14. それぞれの放送局の通称をとって、東京制作=「AK朝ドラ」、大阪制作=「BK朝ドラ」と呼ばれたりもする

15. 例外的に、1983年にはNHKテレビ放送開始30周年記念として『おしん』が1年を通して放送された

16. 他に1991年の連続テレビ小説30周年記念『君の名は』、1994〜1995年のNHK放送70周年記念『春よ、来い』が1年間放送

17. 歴代最高視聴率は『おしん』62.9%。これは視聴率調査開始以来テレビドラマの歴代最高視聴率でもある

18. 『おしん』に次ぐ歴代2位の最高視聴率56.9%を記録した作品は第7作『旅路』

19. 平均視聴率の歴代トップも『おしん』で52.6%

20. 平均視聴率ランキングは以下『繭子ひとり』『藍より青く』『鳩子の海』『北の家族』『おはなはん』『旅路』『あしたこそ』『澪つくし』『おていちゃん』と続く

21. 平均視聴率ワースト1位は2009年の第81作『ウェルかめ』。平均13.5%、最高視聴率20.6%

22. 朝ドラの平均視聴率ワースト10のうち9作品が2004〜2009年の5年間に集中している


最高視聴率を記録した『おしん』もタイトルに「ん」が含まれている(写真:共同通信)

23. 朝ドラでタイトルに「ん」が含まれる作品は「運」がついて高視聴率に恵まれるというジンクスがある

24. そのためかタイトルに「ん」が含まれる朝ドラ作品は5割を超える

25. 朝ドラは1作品につき全156話前後、約39時間。1年間シリーズの朝ドラの場合1作品約78時間に及ぶ

26. 朝ドラの台本は半年間で30冊にもなる

27. 半年間の1作品の撮影期間は8カ月前後に及ぶ

28. 朝ドラ撮影の通常のスケジュールは月曜にリハーサル、火曜〜金曜に撮影。1日のスタジオ収録時間は15時間に及ぶともいわれる

29. 朝ドラの制作は撮影や編集を経た1週間分をまとめて社内試写にかけチェックした後に初めて完成となる

30. 朝ドラは、その時代背景により「時代物」と「現代物」に大きく分けられる

31. 初期の朝ドラは著名な作家を原作者とする文芸路線が主流だった

初期の連ドラは文芸路線が主流だった

32. 第1作『娘と私』の主人公は男性、第3作『あかつき』の主人公も男性だった

33. 第3作『あかつき』は原作者の武者小路実篤本人が235話でカメオ出演している

34. 第4作『うず潮』は作家・林芙美子の自伝的作品

35. 『うず潮』は大阪放送局が初めて制作した朝ドラで無名の新人をヒロインに起用した初の作品

36. 第5作『たまゆら』は川端康成が初めてテレビドラマ用に書き下ろした作品で、本人が特別出演もしている

37. 『たまゆら』は宮崎でロケが行なわれ、新婚旅行の行き先として宮崎ブームが巻き起こったことでも有名

38. 『たまゆら』は作品映像がまったく残っていないため「幻の連続テレビ小説」と呼ばれている

39. 同じように第9作『信子とおばあちゃん』や第10作『虹』も作品映像を見ることができない幻の朝ドラ

40. 全話が完全に残されている最古の朝ドラ作品は第17作『雲のじゅうたん』

41. 初期の作品が残されていないのは、当時ビデオテープは高価で何度も上書き録画で収録されていたため

42. 第6作『おはなはん』は実在の人物をモデルに女一代記を描く連続テレビ小説のスタンダードを確立した作品

43. 『おはなはん』の明るいヒロイン像は国民的人気となり、放送時間には水道使用量が激減する現象が起こった

44. 『おはなはん』最終回は80代の主人公がこのドラマの第1話を見る場面で終わるが、これは実話に基づいている

45. 同じようにドラマの中でそのドラマが登場するシーンはほかに『カーネーション』でも見られる

46. 『おはなはん』は人気の登場人物の死に際して視聴者から放送局に助命歎願が殺到した最初の作品でもある

47. 舞台となった愛媛県大洲市には作品にあやかり名付けられた「おはなはん通り」が現存している

48. 第7作『旅路』は北海道の鉄道員の物語。作品に登場した蒸気機関車は京都・梅小路機関車館に保存されている

49. 朝ドラがカラー作品になったのは第8作『あしたこそ』から。現代を舞台にした初めての作品でもある

50. 『雲のじゅうたん』は飛行士を目指す女性が主人公。朝ドラヒロインの典型である特定の職業を志し奮闘する女性が初めて登場した作品

51. “食”の道を究める主人公の第1号にあげられるのが第20作『風見鶏』でヒロイン松浦ぎんが目指すパン職人

歌詞入りの曲が初めて使われたのは1984年『ロマンス』

52. 『風見鶏』の松浦ぎんは、朝ドラ史上初めて国際結婚をするヒロインでもある

53. 食をテーマの1つとした作品はほかに『京、ふたり』の漬物、『あすか』の和菓子、『てっぱん』のお好み焼き、『まれ』の洋菓子、『まんぷく』のラーメンなど数多い

54. 初めて歌詞入りの曲、いわゆる主題歌がオープニングテーマに使われたのは第32作『ロマンス』で芹洋子と主演の榎本孝明が歌う『夢こそ人生』

55. 1980年代は『ロマンス』『心はいつもラムネ色』『いちばん太鼓』と男性主人公の作品が復活

56. 平成以降で“男性単独”主演は第44作『凛凛と』、第53作『走らんか!』の2作

57. 『凛凛と』はテレビジョンの開発に情熱を注いだ川原田政太郎をモデルとする青春群像劇で外国ロケも敢行


初めて外国人ヒロインを起用した2014年の第91作『マッサン』(写真:共同通信)

58. ニッカウヰスキー創業者夫妻がモデルの『マッサン』では19年ぶりに男性が主役に。外国人ヒロインは史上初

59. 1985年の第34作『澪つくし』は豪商と網元の一家が織り成す朝ドラ版「ロミオとジュリエット」。最高視聴率は80年代で『おしん』に次ぐ55.3%を記録

60. 第52作『春よ、来い』は『おしん』を生み出した脚本家・橋田寿賀子が自伝的要素も含み女性の自立を描く作品

61. 『なっちゃんの写真館』『チョッちゃん』『あぐり』『カーネーション』は著名人の母がヒロインのモデルとなった

62. 第82作『ゲゲゲの女房』のヒロインは漫画家水木しげるの妻・武良布枝がモデル

63. 『ゲゲゲの女房』の人気により、「ゲゲゲの〜」が2010年の流行語大賞の年間大賞に選ばれた


「ゲゲゲの〜」が2010年の流行語年間大賞に。表彰式であいさつする『ゲゲゲの女房』著者・ヒロインの武良布枝さん(写真:共同通信)

64. 朝ドラ主題歌を人気アーテストが手がけるようになった最初の作品が『ひらり』。DREAMS COME TRUEの『晴れたらいいね』は放送開始と同時にリリースされ発売1週目でヒットチャート1位に登場する大ヒットに

65. 『ちゅらさん』に売れないキャラクターとして登場した「ゴーヤーマン」は現実世界では大人気となり朝ドラ史上最も売れたキャラクターとなった

66. 初めてシングルマザーのヒロインが登場した作品は2000年代最初の朝ドラとなった『私の青空』

67. 『私の青空』は朝ドラで初めて続編が制作された作品

68. 2つの作品で主演を演じたのは「マナカナ」の愛称で人気の双子の三倉茉奈と三倉佳奈。第55作『ふたりっ子』の少女期と第79作『だんだん』に登場

69. 『ふたりっ子』は初めて制作した時点よりも未来までストーリーが進んだ作品

70. 『ふたりっ子』に登場するオーロラ輝子が歌う劇中歌『夫婦みち』は85万枚超のヒット、紅白歌合戦にも出場した

71. 『ふたりっ子』は古田敦也がプロ棋士役として出演したほか、原辰徳や羽生善治名人などの出演で話題を呼んだ

2000年代に入って本人役で登場する出演者も

72. 『まんてん』には宇宙飛行士・毛利衛が本人役で登場

73. 『ファイト』には武豊が騎手として実名で登場

74. 『ちりとてちん』には五木ひろしが本人役で登場

75. 第93作『あさが来た』は実業家・広岡浅子がモデル。物語は幕末からスタートし、朝ドラ史上最も古い時代が描かれる作品としても注目された

76. 『あさが来た』主演の波瑠は4回目の朝ドラオーディション挑戦でヒロイン役をつかんだ

77. 『半分、青い』はヒロインが胎児のときから物語が始まる唯一の作品

78. 朝ドラの舞台の地は2019年『スカーレット』までに東京が47回、大阪が30回と圧倒的に多い

79. 第80作『つばさ』で埼玉県が舞台となり、これで47都道府県すべてが朝ドラの舞台となった

80. 朝ドラでの共演後に結婚したカップルは『純ちゃんの応援歌』の唐沢寿明・山口智子夫妻、『ごちそうさん』の東出昌大・杏夫妻

81. 2010年朝日新聞のアンケート「心に残る朝ドラヒロイン」で1位に輝いたのは樫山文江演じる「おはなはん」

82. 2019年に発表されたNHK「あなたの〈イチオシ朝ドラ〉」投票ランキングの1位は『あさが来た』、2位『あまちゃん』、3位『ひよっこ』、4位『カーネーション』

83. 昭和天皇も朝ドラのファンだったことで知られる


1983〜1984年の日本放送後から現在に至るまで、『おしん』が世界中で巻き起こした社会現象は「オシンドローム」と呼ばれるように(写真:共同通信)

84. 『おしん』は世界70以上の国・地域で放送されている

85. 『おしん』初の海外進出はシンガポール。駐日シンガポール大使の要望で実現し視聴率80%超を記録

86. 中国では「阿信」(アーシン)のタイトルで何度も再放送され2億人以上が見たといわれる

87. イラン国営テレビでは最高視聴率90%超えを記録

88. ジャマイカでは『おしん』の影響で、生まれた子どもに「オシン」と名付けるのが流行したという

89. エジプトでは「おしん」放映中に停電が起き、視聴者が暴動を起こしたという逸話も残る

90. 湾岸戦争後のイラクへの復興支援として日本政府は『キャプテン翼』と『おしん』の全放映権を無償提供した

91. 『おしん』はその国民的人気から「オシンドローム」と呼ばれる社会現象を巻き起こした

92. 「オシンドローム」という言葉はアメリカ『タイム』誌の記者の造語。1984年流行語大賞新語部門金賞を受賞

2020年開始の第102作『エール』は初の4K制作に

93. 放送中の作品から次作への交代時期、両ヒロインによる「バトンタッチセレモニー」が恒例行事となっている

94. 100作目『なつぞら』には松嶋菜々子、山口智子、小林綾子、田中裕子など歴代ヒロイン総勢15人が出演

95. 『なつぞら』第2話には連続テレビ小説第1作『娘と私』のヒロイン北林早苗が出演している

96. 朝ドラヒロインを演じてほしい女優1位は新垣結衣、2位橋本環奈、3位綾瀬はるか(2019年オリコンリサーチ)

97. 2020年春開始の『エール』は朝ドラ初の4K制作となる

98. 『エール』は昭和の音楽史を代表する作曲家古関裕而とその妻をモデルに描く波乱万丈のドラマ

99. 『エール』より朝ドラの放送は月〜金曜の週5話に短縮されることが発表された。働き方改革の一環で制作現場の負担を減らすため

100. 第103作目となる2020年後期の『おちょやん』は松竹新喜劇で活躍した女優浪花千栄子の人生がモデル

(文:森谷 美香/モノ・マガジン2019年12月16日号より転載)

参考文献・HP/『世界の楽器詳解図鑑』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、『カラー図解 楽器のしくみ』(日本実業出版社)、『音楽のトリヴィア』(ストレンジ・デイズ)、〈ヤマハ〉ホームページほか関連サイト