「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「守る」。

「守備」「保守」の「守(シュ)」、「留守」の「守(ス)」とも読む漢字です。

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年9月21日(土)放送より)



「守る」という字は「うかんむり」の下に「寸法」「寸分」の「寸」と書きます。

うかんむりは、祖先の魂を祀る霊廟の屋根の形。

「寸」という字は指を伸ばした右の手を描いたもので、古い字体では盾を手に持つ様子を表しています。

そこから「守る」という漢字は「大切な建物をまもる」という意味になりました。

のちにすべての「もの」や「こと」を「まもる」場合に使われるようになり、

さらに「保つ・おさめる・つかさどる」といった意味も派生しました。

いにしえの人々が過ごす、静かな秋の夜。

祖父は父親として一家を支える息子の器に酒を注ぎ、

祖母は若い母親のかわりに繕いものを引き受けます。

幼子たちは互いに手をつないで寝息をたて、母親は生まれたばかりの赤子に乳を含ませています。

そして、母親がかざすすひとさし指を力強く握り返すのは、

小さくふっくらとした赤子の手。

つつましくも幸福な暮らしは、ぬくもりが通い合う家族の手によって守られています。

昔も今も、人は守るべきものを想って心に盾をもち、毎日を生き抜いているのです。

今日の漢字は「守る」、「守備」の「守(シュ)」。

祖先の魂を祀る霊廟のもとで盾を手にもつ様子を表し、そこから「まもる」という意味をもつ漢字になりました。

素性も明かさず心無い言葉を投げつけてくる人や、身勝手な正義をふりかざす人。

彼らは、ふと気を緩めたその隙に、他人の心を壊しにかかってきます。

そんなときは「守る」という漢字のなりたちを思い出し、

心の中の盾を軽やかに操って、すべてを跳ね返してしまいましょう。

僧侶で作家の枡野俊明(ますの・しゅんみょう)氏は、

自らの心を守るためには、心を「柔軟に」することだと説きます。

禅のことばで言う「柔軟心(にゅうなんしん)」とは、決まった形のない心のこと。

空に浮かぶ雲のような柔軟さで、ストレスを受け流すのです。

また、心が乱れそうになったら雲をながめ、自然の営みに目を向けて、

自然の一部としての人間の営みに回帰せよ、と教えてくれます。

そうすれば、心はきっと、守られる。

どこまでも高い秋の空に広がる雲に心を乗せて、しばしのひと休み。

私たちが何よりもまず守るべきものは、自分自身の心です。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……。

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献 『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)

     『上手な心の守り方』(枡野俊明/三笠書房)

9月28日(土)の放送では「詩」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜8:20〜8:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/kanji/