伝統を受け継ぎながら進化する日本酒の世界。西宮・神戸、蔵元をめぐる旅

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◆伝統を受け継ぎながら進化する日本酒の世界。西宮・神戸、蔵元をめぐる旅

日々ロケハンに出かけたり、個人的に旅をしたりしているOZの編集部にとっては、毎日が新しい発見や出会いに満ちた小さな旅。ページには載らない裏話やエピソードをお届け。今回は、オズモール編集部Yが、兵庫県の「灘五郷(なだごごう)」と呼ばれる日本一の酒どころをめぐってきました。


日本一の酒どころは兵庫県にあり
関東で生まれ育った私にとって、日本酒の産地=東北というイメージがあったのですが、日本一の酒どころは「灘五郷」と呼ばれる兵庫県の神戸市と西宮市にまたがる地域のことを指すのだとか。
聞けば、そのエリアには白鹿・日本盛・大関・沢の鶴・菊正宗など、CMやポスターなどでお目にかかることが多いメジャーなお酒の名前がたくさん。今回は、蔵元をめぐる弾丸日帰り日本酒ホッピングツアーに参加してきました。
このあたりは六甲山に育まれたおいしい水がたくさん湧き出ること、阪神タイガースの応援歌としても有名な「六甲颪(ろっこうおろし)」が吹いて酒蔵を冷やしてくれること、港に近く日本全国に流通する拠点としても便利だということで、江戸時代から盛んにお酒が造られています。


右上のドリンクは「赤い白鹿」という日本酒とトマトジュースのカクテル。さっぱりしていて飲みやすい
酒蔵のイメージをくつがえす洗練されたおもてなし
羽田から伊丹空港に降り立ち、まず訪れたのは西宮市にある「白鹿クラシックス」。その名の通り清酒「白鹿」で知られる蔵元直営のレストラン&ショップです。この日は雨にもかかわらず、レストランの入口にはたくさんの人が入店待ち。白を基調としたスタイリッシュな店内は、地元の方が多そうな雰囲気で、普段からの人気が伺えます。ここでは希少な日本酒や、日本酒のカクテルなどと合わせて季節のお料理がコースでもアラカルトでも楽しめます。器や盛り付けも美しく、日本の美にあふれたランチタイムを堪能しました。


その後は併設のショップへ。一升瓶がずらりと並んでいる酒屋さんのようなところを想像していたら、丸の内や銀座にあるセレクトショップのような洗練されたアイテムが並んでいます。白鹿ロゴ入りのおちょこや枡、ミニ樽、トートバッグなどデザインが本当におしゃれ。もちろん日本酒もさまざまなラインナップがあり、訪れた日は期間限定でしぼりたての原酒が量り売りで購入できました。


沢の鶴資料館では昔の酒蔵を再現。こちらは麹をつくる室
飲むだけじゃない、豊かな気持ちになれる酒蔵探訪
西宮市では、白鹿に続いて白鷹、日本盛、大関を訪れました。このエリアにはほかにも徒歩圏内にたくさんの酒蔵があり、いくつかは見学ができ、いくつかはショップやレストランで試飲や買い物、グルメが楽しめます。
続いて西へ進み、神戸市へ。こちらでは浜福鶴、菊正宗、沢の鶴、福寿で知られる神戸酒心館の4つの酒蔵、奈良漬の老舗甲南漬の本店、お酒に合うおつまみやお惣菜・調味料などを扱う誠味を訪れました。
大きな酒蔵は、資料館や記念館、美術館を持っています。入場も無料または数百円とリーズナブル。昔ながらの日本酒を造る行程が分かりやすく立体的に展示されています。蒸し暑いであろう麹室(こうじむろ)や、巨大な仕込み樽など、昔はこんな風に手間をかけて作っていたんだなーというのが分かると、ついつい試飲の杯も進みます。


神戸酒心館のきき酒カウンターはおしゃれなバースタイル
これだけ酒蔵を周ると、もうどれがどれだかわからなくなってしまうのではないかと心配しましたが、それぞれ個性があり、お酒の味も千差万別。酒蔵限定とか季節限定などと言われると、味見をしないわけにはいかず、味見をしたら瓶ごと買いたくなり、さらにお酒を飲んだらおつまみが欲しくなり、横に置いてあるグッズもかわいい…とお財布のひもはゆるみっぱなし。
灘の酒蔵では共同でお祭りやイベント、酒蔵巡回バスの運行などもたびたび行っていて、そういった日を狙って訪れるのももちろん、エリアを分ければ歩いてホッピングすることも可能です。


モダンでおしゃれな作りには理由がある

全体的にはどこもショップが充実していて、ここでしか買えない蔵元限定のお酒をはじめ、お酒に合うおつまみ、日本酒の枠を超えたコスメやオリジナルグッズ、女性にも注目の甘酒や酒粕などもありました。個性あふれるラインナップはおしゃれで、女性向け。いわゆる昔ながらの伝統的な蔵元というイメージがことごとくくつがえされました。


白鹿記念酒造博物館では震災被害の様子をそのまま展示しているコーナーも
それもそのはず。どの酒蔵も1995(平成7)年の阪神淡路大震災で大きな被害を受けているのでした。酒蔵の建物や道具が被害を受けて倒れたり壊れてしまったり、大打撃を受けたところから新しく作りなおしているところも少なくありません。
江戸時代から続く酒蔵が戦争や震災、日本酒離れなど多くの困難に立ち向かい、新たなる日本酒の世界を女性や海外に向けて発信しているのも素敵だなと思いました。


帰りは神戸空港から羽田まで1時間強のフライトでひとっとび。神戸空港はコンパクトでおしゃれな空港で、三宮からのアクセスもポートライナーでわずか18分と便利。東京から新幹線だと遠いイメージの神戸でしたが、飛行機の手軽さには驚きです。

神戸はパンやスイーツの街、というイメージが女性には強いかもしれませんが、神戸も含めて兵庫県は日本酒の街でした。蔵元めぐりは、日本に住んでいる私たちが日本酒のおいしさと凛とした美しさ、そして伝統と革新に触れるいいきっかけになりそう。週末やゴールデンウィークにふらりと遊びに行ってみるのもいいかもしれません。