「売上高が大きい国公立大学」ランキングTOP10

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経常収益(売上高)の1位は東京大学の2357億円。私大トップの日大の1882億円を大きく上回る (撮影:尾形文繁)

少子化の一方で”大学全入時代”とされる昨今、大学の財政状況はどれだけ差がついているのだろうか――。

そもそも、大学がどの程度の収益(売り上げ)を稼いで、どの程度の資産を持っているのか、いまいちピンと来ない人も多いだろう。

求められるのは、規模に応じた収益


東洋経済では、臨時増刊号『本当に強い大学』を発売、その中で、「大学四季報」というページをつくり、各大学の財務状況を掲載してきている。また、当欄の8月11日配信の記事「『私立大学収入ランキング』トップ200法人」では、私立大学の収入(売上高)について紹介した。今回は国公立大学の年間収入について紹介していきたい。

国公立大学は、営利を目的としてはいないものの、収益を均衡させ、赤字にはならないように運営していく必要がある。各大学は規模に応じた収益を確保する必要があり、収益が細れば、教育の質を維持するのも難しくなってくる。今回のランキングによって、どの程度の収益規模で学校を運営しているのかが見えてくるだろう。

対象は、2015年度(2016年3月期)に財務諸表を公表している、150の国立大学法人、公立大学法人が対象だ。国立大学については、独立行政法人が運営する大学校など、国立大学法人以外の大学は対象外とした。また公立大学も、設立されたばかりで財務諸表のない大学や、公立大学法人化されておらず、自治体会計の枠の中で運営されている場合などは、対象外としている。

国立大学と公立大学を同じ土俵で見比べることに対し、異論があるかもしれないが、会計基準はほぼ同じのため、ひとつの表の中にまとめることにした。ランキングの順位づけは、企業で言えば売上高に相当する、「経常収益」の順にしている。

国公立大学の決算は、国の予算と同様、支出(「経常費用」)の内訳が先に記載されている。投入された税金がどのように使われているかが重視されているからだ。その趣旨から考えれば、経常費用で見比べたほうが適切かもしれないが、受託研究費や寄付金など、外部からの資金が増える中、どの程度の収入規模で運営されているかのほうが関心は高いだろう。そこで、経常収益をランキングの対象とし、経常費用の金額と、「経常利益」(経常収益から経常費用を引いた金額)を参考数値として、併記している。

医学部のある大学は付属病院の収益が大きい

1位は東京大学の2357.9億円だ。国立大学と私立大学(学校法人)では、会計基準は異なるものの、私立大学の1位は日本大学で1882.0億円で、それをかなり上回る数字となっている。

収益の内訳を見ると、国からの交付金である、運営費交付金収入が782億円と、約3分の1を占めている。ほかに学生納付金が162億円、附属病院収益が469億円、受託研究費や受託事業費が計435億円、寄付金が79億円という内容になっている。

2位は京都大学で1646.1億円。続く3位は東北大学で1453.5億円、4位大阪大学1449.2億円、5位九州大学の1269.3億円、6位名古屋大学(1060.3億円)、7位北海道大学(995.3億円)と続く。すぐにわかるとおり、上位を旧帝大の7大学が占める形となっている。

8位筑波大学(937.3億円)、9位広島大学(746.5億円)、10位神戸大学(732.7億円)までがトップ10である。

国立大学でも、私立大学のランキングと同様、医学部のある大学が上位を占める。附属病院の収益が多額になるからだ。一方、理系学部のない大学や教育大学などは、どうしても収益が小さくなっている。

公立大学では、12位の横浜市立大学が678.1億円でトップ。こちらも医学部を有している。公立大学は学生数の少ない小規模な大学が多く、数十億円から数億円という小さな収益規模で運営している大学が多い。