GEは、エクイティパートナーシップなどの新しいモデルを通じて、大きな知的財産ポートフォリオを活用(画像提供:GEグローバルリサーチ)

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 大いに注目を集めるテクノロジーは何かを考えた場合、2018年は世の中の人々にとって、また個々の企業や産業全体において、間違いなく変革の一年になるといえるでしょう。モノのインターネット、人工知能、ロボティクス、ビッグデータ活用や新たなエネルギー技術、ニュースなどで目にするこれらすべてのテクノロジーは着実に浸透しつつあります。こうしたなか、世界経済はさらに成長し、米国の製造業はこの流れを利用しようとしています。つまり、イノベーションや新たなビジネスモデルのための外的環境は熟しているといえるのです。そこで2018年、産業界のトレンドを注視している専門家集団であるGEのベンチャーキャピタルユニット、「GEベンチャーズ」が注目しているテクノロジーをご紹介します。

エネルギーとサステナビリティ
 可搬型、または据置き型の蓄電技術が発達してきたことによって、これまでアクセスできなかった約20億人にも再生可能エネルギーによる電力が提供できる可能性が生まれています。昨年世界で新規設置された発電施設容量の2/3は再生可能エネルギーによるものと、GEベンチャーズのエクイティ投資責任者であるマリアナ・ウーは述べています。賢いソフトウェアによって、例えば電気自動車のようにこれまでにはなかったアセットに電力を供給することが可能となるでしょう。

 将来の電力事業は、いわゆる大規模集中モデルから、個々の家庭や事業所の太陽光発電等を活用した分散型ネットワークモデルに移行していくと予想し、今後、電力会社は発電事業者から発電管理者としての役目を担うことになるだろうとGEベンチャーズは考えています。

実際、昨年発表された数多くのM&Aは、分散化と脱炭素化に向けたエネルギー資産のトレンドを示すもので、マリアナ・ウーは、この傾向は今年はさらに加速すると見込んでいます。この結果、信頼性が高まり、コスト削減と排出ガス低減とともに「新たなビジネスモデルと市場」が生みだされると考えています。

ものづくりのテクノロジー
 新しいソフトウェアやアプリケーションは、在庫管理や配送といったプロセスをよりスマートに、効率的に、そして追跡しやすくしています。ハードウェア面では、3Dプリンターやその他の積層造形技術によって産業用製品と消費者向け製品の製造方法が変革されしつつあります。

 例えば、テキストロン・アビエーションのセスナ・デナリに搭載されたGEの新型ターボプロップ・エンジンの設計者は積層造形技術を駆使することで855個あった部品点数をわずか12個に統合し、重量を1/4に減らし、開発時間を1/3に短縮し、強度を5倍にしました。同様に、3Dプリンターで製造された燃料ノズルは、20個あった部品を一体成型することで、元よりも25%も軽くなり、強度を5倍にしているのです。

 積層造形技術は、顧客の近くにある小規模な施設でオンデマンドでの部品生産を可能にし、倉庫保管や輸送コストを大幅に削減するでしょう。GEベンチャーズのアドバンスト・マニュファクチャリング部門のエグゼクティブ・マネージング・ディレクター、カレン・カーは、「1つの経済」を創出しさえするとしています。

 最近の例としてはシリコンバレーのスタートアップであるカーボンとアディダスの協業によって、3Dプリンターで複雑な形状の靴底や個別ニーズに応じたスポーツシューズの生産などがすでにおこなわれています。

エアバスA350 XWB用に3Dプリンティングされた「バイオニック」な航空機用ウィングブラケット(写真下)。 3Dプリンティング部品は、従来の方法で製造された部品(写真上)よりもはるかに軽量で強度も高くなります。 (画像提供:Airbus Operations)