フェスティバルで結果を出し続けている流経大柏。今年のチームも見どころ満載だ。写真:松尾祐希

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 流経大柏の調子がすこぶる良い。春先の練習試合やフェスティバルはほぼ負け知らず。3月16日から福岡で開催されたサニックス杯では2敗を喫したが、全国屈指の強豪校に競り勝ち、最終的には3位に食い込んだ。
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 新チームのポテンシャルを感じさせたのが、サニックス杯の予選リーグ、青森山田との一戦だった。「ひとつのプレーに気合いを入れないと相手に勝てないと思っていました。青森山田もアップからテンションを上げてくるので、自分たちもそれに釣られて上がっていった」と語るのは、「よっしゃー」とヘディングで競り勝つ度に雄叫びを上げていたCB、坂下景太(新3年)だ。気持ちを前面に押し出すこの副主将を中心に、チームは相手の熱量に呼応して、力強いプレーを連発した。
 
 立ち上がりから球際の強さを見せ、昨年の2冠王者と互角の内容を披露。何度かあった危険な場面も身を挺した守りで凌ぎ、相手に隙を与えなかった。守備陣の頑張りに攻撃陣も応え、後半32分に中盤の底から攻め上がったMF菊地泰智(新3年)がPKを獲得。これを左SBの近藤立都(新3年)がきっちり決め、1-0で勝利を収めた。
 
 チーム力を考えれば、青森山田に競り勝った事実にサプライズはない。そもそも今年の新3年生は関東などの強豪が集うU-16 Rookie Leagueを制した世代だ。昨年に同2位の成績を収めた新2年生も、1年生ながらレギュラーを確保し、U-16日本代表に名を連ねたCB関川郁万(新2年)を筆頭に実力は十分。選手層は厚く、関川と同様に代表歴のあるボランチ・熊澤和希(新2年)ですら、レギュラーを保証されていない。
 
 そんな彼らの武器はテクニック。技術レベルは高円宮杯U-18チャンピオンシップを制した4年前のチームと同等との評価もあるほどで、齋藤礼音コーチも「彼らは巧い」と太鼓判を押す。そこに流経大柏伝統の球際の激しさが加わり、技術と強さを兼ね備えたチームに仕上がりつつある。
 もちろん、改善点はある。試合によってどうしても出来にムラがあるのだ。
 
 サニックス杯では初日の午前中に東福岡を打ち破ったが、午後は韓国のヨンドンホ工に惜敗。3日目の決勝トーナメントも午前中にJユースカップ王者のFC東京U-18を倒すも、午後の準決勝は県下最大のライバルである市立船橋に0-1で敗れた。本田裕一郎監督も、内容と結果が伴った直後の戦い方に苦言を呈する。
 
「つねに勝ちたいという気持ちが本気で出てきていない。そうしないと、いろんな戦術や考えを生み出さないと思う。普通にやると出てこないんだ。勝ちを求めることでいろんな想像力が働く。(青森山田戦などで)一番強く言っていたのは、結果を出せということ」
 
 では、身につけるためにはなにが必要なのか。歴戦の名伯楽は独特の言い回しで方法論を教えてくれた。
 
「やっぱり勝ちにこだわらないと、なにをどうしたらいいというのが生まれてこない。死ぬか生きるか、食べる物がない。そこで初めて本当に知恵が働く。いつもポケットにお金が入っていれば、お腹減ったからどうしようとは考えない。一銭もない、食わないと死んでしまう状況。だから、釣り竿を渡して魚を釣って食ってこようという知恵が出てくる。いまの選手たちは教えられた通りにしかできないから、取り組み方が大事」
 
 言われなくても自分たちでいかに考えられるか。成長へのキーワードは、主体性ということになる。
 
「初日の東福岡戦で勝てたのですが、次のヨンドンホ工に負けてしまった。試合によって雰囲気が変わってしまうのは自分たちの悪いところ」(坂下)と、選手たちも好不調の波が激しい点を課題として認識している。それを克服できなければ、市立船橋にリベンジを果たし、全国制覇を狙えるチームにはなれない。「去年はあと一歩で負けてしまった。今年は最後まで油断せずにガンガン言い合いながらやっていくチームにしたい」とは、関川の言葉だ。
 
 とはいえ、主体性と継続性を改善点としながらも、特大の伸びしろと底知れぬポテンシャルを持つ流経大柏。今年も、高校サッカー界を席巻する主役候補であることに変わりはない。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)