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●顧客データの有効活用で、ライフサイクルに応じた価値の提供を
広島県で木造住宅の建築を中心に「木の家」にこだわったビジネスを展開している山根木材。1910年に木材店として創業して以来、地域の発展と変遷に合わせて成長してきた同社は、1972年には不動産部門を設立。材料である木材を販売する立場から、住宅施工にまで手を広げた後、関連サービスも展開するようになった。

7月27日に開催された「Oracle Modern Business Experiences 2016」では、ヤマネホールディングス 代表取締役社長を務める山根誠一郎氏が、「山根木材における営業改革事例 ―新築・リモデル・メンテナンスの3事業の活性化―」と題した講演を行い、日本オラクルのクラウドサービスを活用した同社の営業改革について語った。

本稿では、山根氏とIT活用を統括する経営管理部 情報管理課 課長の佐々木宏氏に直接話を聞く機会を得たので、広島でビジネスを展開する同社がどのようにして、新築・リモデル・メンテナンスの3つの事業において改革を果たしていったのかをお届けしたい。

○顧客のライフサイクルに寄り添える住宅ビジネスを

ヤマネホールディングスは現在、住宅の意匠設計と施工を担う山根木材ホーム、住み始めてからのメンテナンスを担当する山根木材メンテナンスサービス、リフォームを行う山根木材リモデリングと山根木材リノベーション、そして木材の李入れから構造設計までを行う広島ランバーテックといったグループ会社を抱えており、木造住宅の材料提供、施工、メンテナンス、リフォームというトータルサービスを展開している。

「住宅業界ではまだ売りっぱなしの感覚でビジネスをしているところが多いのが現状です。施工を主とする企業の場合、引き渡したらお客さまとの関係が一度切れてしまい、建て替えの時にもう一度ということになっても数十年後の話になります。そこで、メンテナンスやリフォームの事業を始めることで、お客さまのライフサイクルと共に長くおつきあいにできるような体制を整えたのです」と語るのはヤマネホールディングス 代表取締役社長の山根誠一郎氏だ。

山根氏は、住宅は、住む人の進学、就職、結婚、出産、子どもの自立、退職といったライフイベントに従って形を変えていくべきものであり、同社としてはメンテナンスやリフォームによってそれを支えていきたいという。

こうした顧客との長い付き合いを実現させるには、整理された顧客データが必要だ。そこで、グループ6社の顧客情報一元化と、情報を活用した営業改革を目的に導入されたのが「Oracle Sales Cloud」だ。

○グループ6社の統合システム構築に向け「Oracle Sales Cloud」を選択

ヤマネホールディングスは、顧客情報の電子化には早くから取り組んできた。「2001年の芸予地震をきっかけに情報の電子化に取り組み、個人情報を手元に置かず効率的な管理を行いたいと考え、2009年にクラウド型の住宅情報履歴システムを採用するなど、業界では早い段階で電子化に取り組んできました」と山根氏は語る。

電子化の恩恵を強く感じたのは、2014年に発生した豪雨による土砂災害の時だったという。該当地区にある顧客をリストアップして早期に対応しようと考えた時、2時間程度で確認を完了させ、迅速な対応が行えた。

「以前の紙資料で顧客のリストを作っていたら、何日かかっていたかわかりませんでした。多くの場合、施工年や名前で管理していますから、特定地区のお客さまという絞り込みは通常必要ないのです。それが、電子データなら、迅速なうえ、自動的に集まってくるという感覚だったのが印象的でした」と山根氏。

この経験から、データ管理の重要性をあらためて感じ、各社で分離していたシステムを統合することを考えたという。コスト面からクラウド型のサービスを希望していたが、候補に挙がったのが「Oracle Sales Cloud」だった。

「前職でシステム関連の仕事をしていたので、オラクルは知っていましたが、オラクルの製品は大企業向けのソリューションと考えていました。大学時代の友人がオラクルにいたので相談してみたところ、われわれのニーズに合ったソリューションがあると教えてもらえたのです」と山根氏は語る。外出先からモバイル端末で入力や確認が行えることも評価し、「Oracle Sales Cloud」の導入が決定した。

2015年11月に「Oracle Sales Cloud」の利用を検討開始し、2016年3月に決定。その後4カ月程度で導入と乗り換えを実施し、2016年7月から利用を開始した。以前から利用していたシステムがあるため、業務設計をあらためて行う必要がなかったこと、「Oracle Sales Cloud」の標準機能をうまく活用したことが短期的な導入を実現できたカギだという。

○顧客の最新環境や親族情報も管理してビジネスに生かす

「Oracle Sales Cloud」の導入で得られた効果は、大きく2つあるという。1つはグループ会社を一元化すること。もう1つは顧客との接触履歴を残せることだ。

「以前は各社で異なるシステムを利用していたため、メンテナンスサービスの担当者が得たお客さまの環境変化をリフォームの営業と共有して活用するといったことが、一部の人しかできていませんでした。Oracle Sales Cloudの導入によって、全員がお客さまの情報を一元的に見ることが可能になりました」と山根氏。ヤマネホールディングスでは2016年中に家具販売事業にも参入する予定があり、さらに細かく顧客履歴を取得して管理することで営業につなげて行くことができそうだ。

地元密着で活動してきた企業ならではの話としては、顧客の家族情報だけでなく親族情報も重要ということがある。地元で紹介された先が、実は既存顧客の親戚だったというような場合がよくあるのだという。そうした情報も総合的に管理しやすくなった。

「大手企業にはそこまで期待しないでしょうが、地元企業だからこそ、お客さまも親戚のことなどを含めてよく知っているという対応を求めてくださいます。東京では考えられないことかもしれませんが、地方ならではの結びつきを生かしていきたいですね」と山根氏は語る。

●デジタルマーケティングの活用で真のユーザーニーズの把握を
○「Oracle Social Cloud」「Oracle Marketing Cloud」も導入し活動を拡大

「Oracle Sales Cloud」と同時に導入されたのが、ソーシャルメディア管理のクラウドサービスである「Oracle Social Cloud」だ。現在、家を建てる世代は、Webを活用してある程度検討し、業者を絞り込んでから具体的な見学などを行うほか、新聞広告やテレビCMによるアピールが届きづらいといった傾向があるという。そうした人々に向けて、Webサイトやソーシャルメディアなどを活用すべく、「Oracle Sales Cloud」が導入されたものだ。

「デジタルマーケティングをしたいと考えて、Oracle Social Cloudを導入しました。今のところ、キーワードを変えてトライ&エラーを繰り返している状態ですが、いろいろなことが探れるようになってきました。例えば、リフォーム関連の検索では"台所 リフォーム"という言葉で検索すると思いがちですが、実際は"台所 じめじめ"といった具合に課題について検索しているケースがありました。こうしたことを知っていれば、お客さまが求めているものを的確に勧めることができます」と語るのは、ヤマネホールディングス 経営管理部 情報管理課 課長の佐々木宏氏だ。

顧客の課題を理解していれば、単純にリフォームの要望だと思い込んで最新の設備への入れ替えを勧めるのではなく、さまざまな切り口から適切なアプローチを提案することが可能になる。それが顧客満足度の向上にもつながるはずだ。

「お客さまがどのような情報を欲しているのかを探り、情報を提供するようなブログやメールマガジンも作成したいと考えています。お客さまが住宅取得やリフォームを検討するための情報を提供したいですね」と佐々木氏は語る。

さらに。ヤマネホールディングスではマーケティング業務向けの製品群「Oracle Marketing Cloud」も導入しており、実稼働に向けてデータを蓄積している状態だ。今後、1〜2カ月程度で利用を開始することを考えているという。

ユーザーのニーズを把握し、新聞・テレビに変わる媒体としてのWeb活用は当然考えているが、取得したデータを利用した社内教育、商品開発、ミスマッチ改善、既存顧客とのつながり強化による紹介の増加やリフォームの機会増といったことも狙っている。

「まだ現場のフロー自体は変化していませんが、導入したソリューションを活用して行く中でいずれ変化していくと考えています。Oracle Sales Cloudは現場でもよく利用されており、今後の利用拡大も期待できそうです。いずれは1 to 1マーケティングなどにもつなげて行きたいですね」と山根氏は展望を語った。

(エースラッシュ)