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 安倍晋三政権に最大のピンチが訪れた。TPP(環太平洋連携協定)交渉の責任者として存在感を発揮するなど、安倍政権の目玉閣僚の1人である甘利明経済再生担当相(66)に特大スキャンダルが直撃したのだ。発火点となったのは、1月21日発売の週刊文春だった。

「記事は、千葉県白井市の建設会社S社の関係者が、甘利氏や甘利氏の事務所秘書らに賄賂を渡したことを実名で告発したのです。その総額は1200万円に及ぶというから驚きです」(大手紙社会部記者)

 同誌によると、?賄賂?とされるのは、建設会社と都市再生機構(UR)との間で発生したトラブルの補償交渉の口利きをする見返りだったという。

目がうつろになった甘利大臣…野党の大追及が開始

 実名告発した建設会社の関係者は、甘利氏の秘書が国交省の担当者らに働き掛けをする様子や、金銭授受のやり取りなどを詳細に記録。

「甘利氏に直接現金50万円を2回手渡した」

 とも証言しており、事実であれば、甘利氏の進退に関わる重大なスキャンダルということになる。

「文春の早刷りが出回った20日には、新聞社やテレビ局の記者が裏取りに走り回るなど永田町に衝撃が走りました。囲み取材に応じた本人は『記事を見ていない』と追及をかわしましたが、国会内では目がうつろで憔悴しきった様子でした」(先の記者)

 21日にはさっそく、参院予算委員会でこの一件に関する野党の追及が相次いだ。

 甘利氏は、記事の内容の真偽を問われ、

「(記事の内容について)半信半疑、本当なのか、うそではないのかと思った」

 と答弁。「記憶が曖昧なところもあり、きちんと整理して説明したい」などと追及をかわしたが、異常なほどに瞬きを繰り返すなど、狼狽ぶりは隠せなかった。

 今後の成り行き次第では、政治資金規正法やあっせん利得処罰法に違反しかねない問題だ。

 野党から進退を問われ、「託された職務を全力で全うする」と続投をアピールした甘利氏だが、果たして安倍首相はどんな判断を下すのか。

「これまで安倍政権は、小渕優子元経産相の政治資金規正法違反疑惑や、松島みどり元法相の?うちわ問題?など、度々閣僚の『政治とカネ』の問題に直面してきた。直近では高木毅復興担当相に過去の『パンツ泥棒』疑惑が浮上したが、今回のスキャンダルはこれまでのものとはワケが違う。甘利氏は第2次政権の発足時から安倍首相を支える再側近の1人。大臣辞任に追い込まれれば政権に与えるダメージは計り知れない。容易に辞めさせることはできない」(永田町関係者)

 そんな事情もあってか、安倍首相も腹を固めたようだ。

 1月20日からスイス・ダボスでスタートした世界経済フォーラムに甘利氏を出席させる方針を決めた。この決断に永田町界隈では、「安倍首相は甘利氏を野党の追及から守る方向に決めたようだ」との見方が広がっている。ただ、今回の醜聞発覚によって政局は大きく動きそうだ。

「衆参同時選挙の可能性が確実に高まった。昨年末に急転直下で決まった慰安婦問題での日韓合意も『選挙を見越してのものだ』との見方がもっぱらだった。甘利氏の問題がこじれて政権のダメージが広がらないうちに『衆院解散』という伝家の宝刀を抜くこともあり得る。今春にも衆院選に突入するかもしれない。しかしながら、1億総活躍と掲げて、内閣すらそうなれないとは情けない」(先の関係者)

 安倍首相は小渕氏、松島氏と閣僚のスキャンダルが続発した2014年12月にも衆院解散に踏み切っている。もう一度勝負に出るのだろうか。

(取材・文/浅間三蔵)

浅間三蔵1978年、神奈川県生まれ。大学卒業後、大手新聞社に入社。社会部記者として警視庁や司法関連を担当する。震災を契機に独立し、現在はフリージャーナリストとして週刊誌などで活躍中