英有力紙「ザ・タイムズ」は23日付の電子版で、ユーザー参加型の百科事典「ウィキペディア」の創設者、ジミー・ウェールズ氏が、「ウィキアサリ」(Wikiasari)という独自の検索エンジンを来年にも開始する予定だと伝えた。次のコメントから分かるように、ウェールズ氏は、米インターネット検索エンジン最大手グーグルを意識しているようだ。

  ‐‐確かにグーグルの検索エンジンはあらゆる点で優れているが、何の役にも立たないスパムのような結果がヒットすることも多い。たとえば、「Tampa hotels」という語句をグーグルで検索しても、重要な情報は何一つ得られないのだ。検索エンジンは、このページは良い、このページは悪いといった判断をする必要があるが、そもそも、コンピューターは、良し悪しの判断をするという行為が得意ではない。そのため、検索エンジンのアルゴリズムは、遠回しな方法で判断という行為を試みる。その点で、我々人間は、ページを評価するという点で優れた能力を持っており、そのページが良いか悪いかをすぐに判断できる。問題は、ページを評価する人間が信頼できるコミュニティーを形成できるかだ‐‐

  新会社ウィキアサリは、ウェールズ氏が2005年に設立し、現在はギル・ペンチナ氏がCEO(最高経営責任者)を務める「ウィキア」(Wikia)という会社の第3事業部となる。ウィキアの他の2事業部は、一つはウィキアのサイト運営にかかわる事業部で、もう一つは、最近開始された「オープンサービング」(OpenServing)というサービスを提供する事業部だ。

  ウィキアは、インターネット小売大手アマゾン・ドットコムなど複数の企業から400万ドル(約4億7000万円)以上の資本提供を受けている。

  タイムズ紙の記事では、ウィキアサリのプロジェクトに、アマゾンが関係しているとされていたが、ウィキアのサイトによると、アマゾンはウィキアの株主だが、このプロジェクトには関与していないという。

ウィキアサリ
  タイムズ紙の記事によると、ウィキアサリのプロジェクトは、最近まで「ウィキサーチ」(WikiSearch)という名前で呼ばれていたという。ウィキアサリの特徴は、検索結果の質が第一で、検索結果の数は二の次という点だ。また、検索結果に加えて、キーワードに関連した言葉がタグとして表示される点や検索結果の上位3つがウィキペディアのコンテンツとなる点も興味深い。残りの検索結果は、ウィキペディアのサイトからリンクしているページが、「価値がある」ページとして選ばれるという。

  ウィキアサリのすべての検索結果は、ウィキペディアのページそのものか、あるいは、ウィキペディアにリンクしたページになるため、最終的には、ウィキアサリのすべての検索結果と検索順位は、人間が決定することになる。また、キーワードとURLの対応表であるインデックスは、一定の条件で改変や複製、頒布が自由な「GFDL」というライセンス形式で管理される。ウィキアは、インデックスのマスターバージョンを使用するが、一般のユーザーもGFDLに従うことを条件に、インデックスを無料で利用可能となる。

  ウィキアサリが使用する検索エンジンは、オープンソースとなり、「ナッチ」(Nutch)や「ルシーン」(Lucene)といったオープンソースプロジェクトの協力を得て作成されるようだ。ウィキアサリは、営利目的の事業となるが、収益のほとんどはウィキペディアに寄付されるという。

  私は、信頼できる情報筋からウィキアサリのスクリーンショット(ソフトの動作画面例)を入手した。本物であると確証はできないが、これが開発中のウィキアサリである可能性は高い。クリックすると、拡大版の画像が見られる。

■オリジナル記事:Wikia To Launch Search Engine: Exclusive Screenshot
■ブログ:テッククランチ(TechCrunch
(2006年12月23日付)より
■筆者 マイケル・アリントン(Michael Arrington)氏:
スタンフォード大学法学部を1995年に卒業。弁護士としてベンチャー企業のIPO(新規株式公開)や合併・投資ビジネスなどに携わる。法律事務所を退職後は、複数のベンチャー企業の立ち上げに関わるほか、IT企業のコンサルタントを務める。現在は、ビジネス開発やマーケティング戦略のコンサルタントを行う一方で、「テッククランチ」や「クランチノーツ」といったIT関連のブログを運営している。
  テッククランチはインターネット関連の企業や新製品などを紹介し、業界のさまざまな動向も追跡するブログ。2005年6月11日に始まり、米ネットワークCBSテレビや米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」など大手メディアなどでも、頻繁に取り上げられている。

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