ここ2週間ほど、毎日20通ほどケータイに送られてくる迷惑メールに悩まされています。ケータイのメールアドレスを取ってから10年は経つと思いますが、今月に入るまで迷惑メールが送られてくることはほとんどありませんでした。

これまでに、通信キャリアのサービスで設定していた「受信拒否ドメイン」は3つだけ。それが2週間で、いきなり175件にまで急増しました。

特に鬱陶しいのは、寝入りばななど深夜、早朝の微妙な時間帯に来るヤツ。普段、寝る時はケータイをベッドの近くに置いているので、まさに精神的ブラクラ、不快感もマックスです。

宛先には本名と正確なメアドがセットに

迷惑メールの宛先に入っているのは、電話番号や英数字を適当に組み合わせたものではなく、自衛木泰人という具合に、本名とに括られた正確なアドレスとがセットになったもの。

iPhone4Sを買ってからは、パソコンで使っているプロバイダのウェブメールのほかには、出先でグーグルやヤフーの検索を使う以外ケータイではネットに繋がないので、筆者自身に自分のケータイアドレスが漏洩してしまう心当たりはありません。

iPhone4Sでケータイのメールアドレスを使うことはシステム上ありえないし、そもそもiPhone4Sにはケータイのアドレス帳を移していないので、データが漏れるはずもない。

こうなると、誰かのアドレス帳から流出した、あるいは誰かがデータを売ったと疑わざるをえないのですが…。

という話をしていたら、「えー!わたしもなんです。春先から、急に迷惑メールが来るようになって…」と食いついてきたのが、都内のOL、A子さん。

「わたしのケータイアドレスなんて、知ってる人はほとんどいないはずなのに。来るたびに削除してるんですけど、消しても消しても別のアドレスから来るから、ホントにもう困っちゃってて」

A子さんの場合も、名前にプラスで括られた正確なケータイアドレス宛に来ていました。そのアドレスは、プログラムで簡単に生成できるようなものではありません。

どうにも、われわれのケータイアドレスを保存している人のアドレス帳から、データが流出している疑いが濃厚となってきました。

犯人はスマホの無料アプリではないか

「えー、でも、わたしのアドレスを知ってる人で、流出させちゃうような人って、思い当たらないですよ」

筆者は、いまのところ、流出させている犯人はスマートフォンのアプリだと見当をつけています。

正確な本名とアドレスがセットになって表示されてくるのは、いかにもアドレス帳データから引っ張ってきているように思えるからです。

昨今のスマートフォンブームで、ケータイからスマホへと切り替える人が増えていますが、ケータイのアドレス帳をスマートフォンへ移行させるのは簡単な作業で済みます。

そして、変なアプリをダウンロード、移行させたアドレス帳から情報が根こそぎ流出する、というわけです。これがショップや懸賞で集めたエクセル等にまとめられたデータであれば、名前は割愛してアドレスだけで送られてくるのではないかと思います。

いろいろなパターンが考えられますが、たとえば、興味本位でダウンロードしたアプリが実はマルウェア(悪意のあるソフトウェア)、あるいはウイルスがセットされたもので、気づかないうちにアドレス帳データが転送されていたということもあるでしょう。

無料通話アプリのなかには、ダウンロードした人のアドレス帳データを取得するものがありますが、無料通話アプリの提供者が取得したアドレス帳データを転売しているかもしれません。

「そんなことって、本当にあるんですか!?」

とA子さん。怪しいアプリがやっぱりマルウェアだったとか、ウイルスセットでしたという話は、世界中でごくごくフツーにあることです。

受信拒否は「通知しない」になっているか、要確認

無料通話アプリを提供している人だって、どこかでお金を稼がなければビジネスになりません。

無料通話アプリの提供者が取得したアドレス帳データを用いて、絶対に何の商売もしていないという一般的な確証が得られない限り、可能性としては否定されずに残ります。

「じゃあ、こっちでいくら気をつけても、アドレスを知っている誰かが変なことをしちゃったら、関係のないわたしまでが迷惑メールの被害に遭うってことですか。なんか、もう、知り合った人とかショップとかに、迂闊にケータイアドレスを教えられませんね…」

無料サービスの裏には必ず儲けのカラクリがあると知っておく、というのはもはや大前提ですが、それにしても、自衛するだけでは迷惑メールが防げないとは…。えらい時代になったものです。

なお、通信会社で提供している迷惑メールの受信拒否の設定ですが、初期設定では拒否をしたことを発信者に「通知する」となっていることがあります。

受信拒否を通知してしまうと、迷惑メールの発信者は「このアドレスは使われているのだ」と確認できることになり、さらに迷惑メールを送ってくるうえ、同業者へ「稼働中のメールアドレスである」と、情報を提供することさえできてしまいます。

受信拒否を「通知しない(返信しない)」になっているかどうか、必ず確認するようにしてください。(井上トシユキ)