一方、福島県中通り側、警戒区域西側には20キロ圏内へと通じる複数の道路がある。

 その1つ、双葉郡川内村を走る県道36号線を東に向かうと、同村唯一の医療機関・川内村国保診療所前で検問に遭遇する。診療所敷地内にはなぜか犬が1匹つながれていた。

 検問所の警官に尋ねると、

「3日前からこの犬はいます。境界周辺をうろうろする犬や猫は村職員や動物愛護団体が保護しているようです。実際、警戒区域のほうからは時々、犬が来ますよ。犬は法的立入禁止の対象外ですからね(笑)」

 警戒区域内ではペットの犬や猫、さらに家畜の牛などがさまよっていることはよく知られているが、その一部は人恋しさや餌欲しさにどうやら区域外へ“脱出”してくるらしいのだ。

 さらに警戒区域の西側境界線を車で北上すると、やや神経質な対応が目立ってくる。田村市都路地区の検問は、立入禁止看板のはるか後方に警察車両が配置されていたが、撮影を始めると、突如車両から警官が猛ダッシュで駆けつけてきた。そして私に撮影目的をただし、身分証明書の提示も求めてくる。

 なぜか警官は盛んに「警察車両を撮りましたか?」と尋ねてくる。警戒区域の事情に詳しい関係者は、その理由について意外な見方をする。

「西側境界は無人封鎖ポイントも多いので、昨年夏頃までは抜け穴になって、中に入る人もいたようです。最近は区域内に公安関係者も配置されたとの話もあります。西側境界は車止めのみの無人封鎖ポイントも多いのですが、昨年秋以降、人力では動かせない重量の車止めに変わってきていますし、周辺に監視カメラが設置されている場合もあります」

 区域内では窃盗なども相変わらず起きているが、警察の神経質さは、それだけが理由なのか?

 さらに警戒区域に続く道を次々と訪ねてみる。その中で、とりわけものものしい雰囲気だったのが、国道114号線の浪江町津島地区に設けられた検問所だった。警官も防護服とマスク着用だ。3月上旬時点で地上1メートルの空間線量は、東京都心部の約30倍の3マイシークロベルト超。警戒区域の有人検問所では間違いなく最高値。しかも当時、周辺地域は地表が雪で覆われていた。一般的には、この場合は線量が低下するのが常識である。にもかかわらずこの数値なのだから、平時はどれほどなのか?

 しかも検問所の設置場所は、福島原発から28キロの地点。警戒区域の半径20キロよりも手前に設けられているが、これは線量の高さが理由のようだ。

 浪江町津島地区周辺は警戒区域でこそないが、年間被曝量が20マイクロシーベルトを超えるとして、国が避難を求めている「計画的避難区域」に入っているのだ。

 同じようなケースは他にもある。飯舘村の長泥地区を経由して警戒区域に通じる県道62号は、第一原発から約30キロ離れた長泥地区中心部で封鎖され、先に進めない。昨年12月時点で、この封鎖ポイント周辺の線量は12マイクロシーベルトに上がっていた。

「長泥地区の封鎖ポイントの先は凄いですよ。車内で60マイクロシーベルトくらい出ますから」(前出・関係者)

 まだまだ、危険な状況は続いていると言えよう。