「年収150万でも楽しく生きていけるのはフィクション」と東氏

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 批評家で早稲田大学教授の東浩紀氏と、貧困問題に取り組む作家の雨宮処凛氏が2011年9月24日、BSジャパン『勝間和代#デキビジ』に出演し、その模様がニコニコ生放送で中継された。東氏は、加速する若年層の貧困と、それによって、"車離れ"、"嫌消費"へと変化した若者のライフスタイルについて、「貧しくても楽しむライフスタイルではなく、貧しくても楽しまなくてはいけない状態にあった」と分析し、特に3月11日の東日本大震災以降、"貧しくても楽しめる"という幻想に亀裂が入ったと語った。

 まず東氏が指摘するのは、東日本大震災以降に露呈した、リスク管理すらできない貧困への危機感だ。「牛丼は安い、ネットを見れば無料のエンターテイメントが充実している、年収150万でもそれなりに楽しく生きていける・・・ということになっている。これ自体がフィクションだと思う」とし、

「年収150万で楽しく生きられるという幻想を、信じられている間はいいけど、3.11というのはそれに亀裂を走らせたと思うんです。『じゃあ、その年収で引っ越せ』、『(放射能を)除染するのにお金出せ』って言われても出せない。ちょっと危機的な状況がきたとき、"タメ"の部分がないってことが露呈するわけです。貧しいってことは、危険だってこと」

 こうした"貧しくても楽しめる"という、00年代以降に変化した若者のライフスタイルについて、

「今の若い人たちは"嫌消費"とか、お金を使うことがカッコイイと思わなくなった。それは、"貧しくても楽しめるようなライフスタイルに変わってきた"みたいな議論もあったけど、それ以前に、貧しくても楽しまなきゃいけない状態になっていたんじゃないのか」

と東氏は指摘する。

 雨宮処凛氏もまた、「貧乏を楽しむ自由しかない、その選択肢しか若年層にはない」と"嫌消費"世代といわれる若者の背景を分析し、

「貧困問題を取材していると、ホームレスのおじさんも、『俺は好きでやってるからいいんだよ、大丈夫、ほっといてくれ』っていうんですよ。でも大丈夫じゃないんです。大丈夫じゃないけど、自分の中で、そういうストーリーにしないと、キツくてもたない。それとまったく同じ構造が若年層にあるんですね」

と、自らの経験を語り、若年層に広がる、貧困を是と受け入れざる得ない風潮を懸念した。

◇関連サイト
・BS JAPAN「勝間和代#デキビジ」公式サイト
http://www.bs-j.co.jp/dekibiz/
・[ニコニコ生放送]「年収150万でも生きていけるというのはフィクション」より視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv64616329?po=newslivedoor&ref=news#0:37:32

(ハギワラマサヒト)