■ チャリティーマッチ

東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチの日本代表とJリーグ選抜の対戦。会場は大阪の長居スタジアムである。

日本代表は<3-4-3>。 GK川島。DF吉田、今野、伊野波。MF長谷部、遠藤、内田、長友。FW本田圭、前田、岡崎。初の3バックで仙台出身のDF今野が3バックの中央に入る。3トップは真ん中にFW前田。ベンチ入りメンバーはGK東口、GK西川、DF岩政、DF栗原、DF森脇、DF槙野、MF阿部、MF本田拓、MF細貝、MF柏木、MF松井、FW藤本、FW李忠成、FW家長、FW乾。アルビレックス新潟のGK東口が初代表。

対するJリーグ選抜(TEAM AS ONE)は<4-1-2-3>。GK楢崎。DF駒野、中澤、 闘莉王、新井場。MF小笠原、小野伸、中村憲。FW梁勇基、佐藤寿、大久保。北朝鮮代表でベガルタ仙台のFW梁勇基がスタメン。岩手県の大船渡高校出身のMF小笠原が中盤の底に入る。GK川口。DF小宮山、DF茂庭、MF関口、MF中村俊、FW原口、FWハーフナー・マイク、FW平井、FW三浦知がベンチ入り。

■ 日本代表が勝利

試合は前半15分に日本代表がMF本田圭のドリブル突破からフリーキックを獲得。ゴール右寄りで「左足」で狙いやすい角度であったが、MF遠藤が右足でシュート。これがW杯のデンマーク戦のように絶妙のコースに飛んでゴール。日本が先制する。

さらに前半19分にも日本はFW本田圭のスルーパスからチャンスを作ると、裏に飛び出したFW岡崎が落ち着いて決めて2対0と突き放す。Jリーグ選抜はセットプレーからチャンスを作るが、ゴールは奪えず。前半は2対0で折り返す。

後半開始から両チームともメンバーを大幅に入れ替えてくるが、Jリーグ選抜はMF中村俊がいいアクセントになって、後半はJリーグ選抜が優勢となる。日本代表もFW乾のドリブルからいい形を作っていく。2点ビハインドのJリーグ選抜は後半17分にFW三浦知を投入。すると、後半37分にGK川口のロングキックからDF闘莉王が頭で落とすと、裏に飛び出したFW三浦知が右足で鮮やかに決めて1点差に迫る。

Jリーグ選抜は、残り時間で同点ゴールを狙うが、追いつくことは出来ずに、結局、2対1で日本代表が勝利。4万人以上を集めた試合は大きな盛り上がりを見せて終了した。

■ チャリティーマッチの意義

大地震が起きてからまだ半月ほどしか経過していない。原発の問題も残っており、余震も止まっておらずに、予断は許さない状況であるが、サッカー協会がスピーディーに判断を行って、この試合を開催することができたのは素晴らしいことであった。

確かに、「震災で苦しんでいる人がいる中でサッカーをしてもいいのか?」という葛藤は選手たちにもあったと思うが、この試合は世界各地で生中継されており、「日本国民は戦っている。」、「日本は諦めていない。」ということを世界中に発信できたことだけでも、大きな意味があったと思う。なかなか、言葉だけでは説明しにくい。この試合を観て「日本はまだまだ大丈夫だ。復興できる。」と外国の人が思ってくれたならば幸いである。

■ 新しいオプション

日本代表は<4-2-3-1>ではなくて、<3-4-3>を採用。一般的には「攻撃的な布陣」とされる<3-4-3>であるが、大事なのはサイドのプレーヤーのポジショニングであり、MF内田とMF長友の位置取りが重要になるが、左サイドのMF長友は高い位置を取って、果敢にサイドから仕掛けてチャンスを作った。

また、<3-4-3>になることで、FW本田圭の位置が右サイドになって、比較的、プレッシャーの薄い位置でボールが持てるようになるのもメリットであり、前半はFW本田圭がうまく右サイドで起点になって2つのゴールが生まれた。

まだまだ、オプションの域を出ないが、<3-4-3>はザッケロー二監督が知り尽くしたシステムはであり、困ったときのためにもう一つのシステムを持っておくのは重要である。チャリティーマッチとはいえ、日本代表にとっては可能性の広がる試合となった。

■ 遠藤がフリーキック弾

先制ゴールを決めたのはMF遠藤。左足の方が狙いやすい角度であり、FW本田圭にとって絶好の位置だったのは、FW本田圭が蹴ると思われたが、裏をかいてMF遠藤が右足がキック。これが鮮やかに決まってゴールに突き刺さった。ここ最近、FW本田圭のフリーキックが冴えていないのは気になるところであるが、右足と左足でレベルの高いキッカーを揃えているのは日本代表の大きな強みである。

<3-4-3>になったことで、ウイングのポジションのFW本田圭あるいはFW岡崎にボールが入りやすいくなって、あまりボランチを経由しないサッカーになったので、MF遠藤やMF長谷部にボールが入る回数自体が少なかったので、いつもと比べると、MF遠藤が出てくる回数が少なかったが、さすがのキックのゴールを生み出した。

■ アピールできた選手

両チームともに強い気持ちで試合に臨んだが、特に、日本代表では、DF今野、FW乾、Jリーグ選抜では、MF中村俊のパフォーマンスが光ったといえる。宮城県出身のDF今野は3バックの中央でプレーし、不慣れなポジションにも関わらずに攻守ともに落ち着いたプレーを見せた。途中出場FW乾も、短い出場時間にも関わらず、何度も前を向いて勝負するシーンを作り、コンディションが上がっていることを印象付けた。

一方、後半から登場したMF中村俊はさすがのキック精度でチーム全体を動かして、MF中村俊が投入されたことで試合の流れは大きくJリーグ選抜側に傾いた。左足一本でゲームをコントロールできるのはさすがといえるものであり、健在ぶりをアピールしたといえる。

■ スーパースター・三浦知良

ただ、何といても、この試合はカズがすべて持っていった試合となった。2月26日に44歳になったが、「さすがスター。」、「スーパースターはやはり違う。」と思わずにはいられないゴールとなった。DF闘莉王の落としも見事だったが、最高のタイミングで裏に走り込んで、決して簡単ではないシュートでネットを揺らした。

日本代表でのラストマッチが2000年なので、すでに10年以上が経過しているが、確かにFW三浦知という選手は、「ゴールを決めてほしい。」と思うところでそのとおり期待に応えてくれる選手であった。広島アジアカップのときも、ドーハのときも、ヴェルディのときも・・・。こういうときに決められるからスーパースターなのか、スーパースターだからこそ、こういう時に決められるのか。

日本サッカー界は、FW本田圭、MF香川真司、DF長友佑都と新しいスター選手が次々と出現してきて、フランス組、日韓組のみならず、ドイツ組も日本代表ではあとわずかになっている。これ以上ないほど順調に世代交代が進んでおり、海外リーグでの実績で言うと、カズよりも「上」の選手が出てきているが、改めて、この試合で「キング健在」をアピールした。「カズのゴール」は、なぜ、これだけ、人々の心を幸せにするのだろうか?

strong>三浦知良 (みうら・かずよし)

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