日本選手の走行距離は、カメルーンを大きく上回った<br>(Photo by Tsutomu KISHIMOTO)

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ひとまずこれが、ワールドカップで勝つための戦略ということになるのだろう。6月11日に行われたカメルーン戦で、日本は1−0の勝利をつかんだ。

本田を1トップとする4−1−4−1は、相手の良さを潰すことを主眼としていた。率直に言って面白みに欠ける。消極的と言われても、反論できる材料は少ない。

公式記録によれば、日本のシュートはわずかに5本で(実際は4本ではないだろうか)、CKはなんとゼロである。直接ゴールを狙えるFKも、大久保の突破で得た後半開始早々のシーンだけだ。シュート数もCKの数も、カメルーンより少ない。

しかし、初戦の戦い方としては妥当なところもあった。少なくとも勝ち点1を取らなければ、ただでさえ難しい第二戦以降の戦いが、さらにハードルの高いものとなってしまう。何とかしてロースコアの攻防に持ち込むべきで、最少得点差の勝利は現実的で理想的と言えるものだった。

試合後に配布された資料によると、日本の選手はフィールドプレーヤーの6人が10キロ以上の走行距離を記録している。最も多いのは遠藤で、彼に僅差で迫るのが本田だ。ふたりは11キロを上回る数値を弾き出した。3番手は長友で、阿部、駒野がさらに続く。88分で退いた長谷部も10キロを超えている。

一方のカメルーンは、10キロ以上の選手がふたりしかいない。逆三角形の中盤で左サイドを担当したエノーと、右サイドバックのエムビアだ。エトーは9キロ強だった。相手を凌駕する運動量が、日本の勝利の下敷きとなったことが読み取れる。

チーム全員の献身さが、さらに浮かび上がるデータがある。

自分たちでボールをポゼッションしているときと、相手にポゼッションをされている時間の走行距離を比較すると、両チームの違いは歴然だ。日本は交代選手を含めたチーム全員が、相手ボールの時間でより多く動いている。相手ボールの時間帯で、足を止めていないのだ。前線からチェイシングをしかけたり、味方選手をサポートして数的優位を作り出す動きが思い浮かぶ。

カメルーンはまったくの逆である。相手ボールの時間帯で多く移動している選手は、1ボランチで先発したマティプひとりだった。途中出場の3選手をプラスした残りの選手は、マイボールのときにより多く動いている。だが、運動量そのものは日本より少ない。先まわりをしてスペースを消され、時間的な余裕も奪われてしまう。ボール支配率で上回りながら、決定的なチャンスをさほど作れなかった根本的な原因がそこにある。彼らがもっとも多くボールを動かしたのは、ペナルティエリア手前中央のゾーンだった。日本がクロスを確実に跳ね返し、セカンドボールにも食らいついていったからだろう。

4大会目で初めてとなる白星スタートには、しっかりとした裏付けがあった。本田のゴールは相手守備陣の対応のまずさを突いたもので、日本からすればスカウティングで確認していた狙い目のひとつだ。初戦のノルマをクリアしたのは評価されるべきである。

もっとも、この日のゲームプランをそのままオランダ戦に当てはめることはできないだろう。いまはまだ、グループリーグ最終戦まで望みをつなげたに過ぎない。