ソウルのバスに「反キリスト教」の広告

写真拡大

キリスト教信者が国民の約30%を占める韓国では、街を歩くとキリスト教の影響をあちこちで感じることができる。例えば、電車内でイエスの教えを説きながら突然「ハレルヤ!」と叫びだす人に出会ったり、夜になると屋根についた赤い十字架があちこちで光り始めたりするなど、日本には無い光景に始めはずいぶんと驚かされるものである。もちろん仏教も20%ほど、無宗教の人も40%以上いると言われている。しかし、韓国のキリスト教は宣教活動が熱心なことでよく知られており、2007年に起きたタリバン韓国人拉致事件はこのような活動がもたらした極端な結果だということができるだろう。そのため、先日ソウルに登場した反キリスト教広告は、韓国のキリスト教界に大きな衝撃を与えたようだ。

この広告が張り出されたのはソウル市内を走るバスの車体。普通は、新商品の発売を知らせるものや、ドラマや映画のPR広告がよく張られているのだが、今回は反キリスト教団体「反キリスト教市民運動連合(反キ連)」による反キリスト教広告が掲載された。この団体は設立当時から「キリスト教追放」を掲げており、主にオンライン上を活動拠点としていたが、このほどオフラインでの活動に突入したのだという。

反キ連によると、今月5日からソウルの市内を走る4つの路線、8台のバスの車体に、「私は自身の創造物を審判する神を想像することはできない」と書かれた広告を掲載。このメッセージには、キリスト教の教理をバカにするような内容が含まれているのだという。このような反キ連の広告は、特定の宗教団体に抗議している訳ではないため、「キリスト教全体に対する深い憎しみや軽蔑が含まれている」として問題視する声が上がってきている。一部のキリスト教からも、「非常識な広告」として片付けることのできない問題だと指摘している。

韓国キリスト教総連合会(韓キ総)のキム・ウンテ総務は、「反キリスト教勢力はキリスト教の歴史で常に存在していたが、最近になり抗議活動が緻密で過激なものとなっている」とし、「今回のことと関連し、名誉毀損の訴訟など法的な対応も辞さない構え」だとしている。このような事態を受け、韓キ総は傘下の教会守護対策委員会を通じて、反キリスト教運動やイスラムなどに対する監視を強化することにしたという。

また、監理教神学大学の宗教社会学科イ・ウォンギュ教授は、「批判や反対をする自由というものはあるが、特定の宗教を公の場で誹謗中傷する行為は、市民団体の活動域を超えたもの」だとし、「しかし、このような露骨な攻撃が登場した理由について、韓国のキリスト教界も真剣に反省する必要がある」と話している。

韓国の一部のキリスト教徒が熱心な布教活動をすればするほど、反キリスト教派が増えているのも事実である。しかし、共存する方法を模索するのではなく、自己を正当化し相手を排除しようとする思想は、キリスト教であっても反キリスト教であっても共感を得られるものではないだろう。


参照:ソウルの街を走る「反キリスト広告」 - 国民日報

(文:林由美)

■韓フルタイム2月1日スタート!
韓フルタイムとは韓国に特化した情報を提供する媒体です。
韓国に詳しい専門の日本人記者が取材、執筆を行っております。
韓国中心の出来事をいち早くお届けできるように頑張っていきます。