18日のW杯欧州予選プレーオフで南ア行きの切符を手にした代わりに、アンリのハンドから生まれたゴールで批判の集中砲火を浴びているフランス。波紋は政界にも広がっており、有力政治家たちが相次いでコメントを発表している。おおむね後味の悪さを含ませつつ「サッカーと政治は切り離して考えるべき」という姿勢だが、アイルランドとの友好を担当する与党UMPの議員3人からは、関係の悪化をおそれて再試合を要求する声すら上がった。

 ル・モンド紙によると、これを受けてサルコジ大統領は19日にアイルランドのカウエン首相と会談、「アイルランドの国民に申し訳なく思っている」と伝えた。ただし「私に審判やサッカー連盟の代わりを求めないでほしい」と当事者の判断に委ねる考えを示した。翌20日には、FIFAがアイルランドの再戦要求を正式に却下している。

 これまで「ハンドの場面は見ていない」と言及を避けてきたフランスのドメネク監督も19日、レクスプレス誌の取材に応じ、ビデオで確認したうえで「たしかにあれは誤審だった」と認めるに至った。しかし「“いかさま”ではなくプレー中の出来事」であるとし、「なぜ我々に謝罪を求めるのか理解に苦しむ」と主張した。また、1986年のW杯でマラドーナが「神の手」でゴールをあげたときには非難よりも驚嘆が上回ったことを例にあげ、今回のアンリの行為ばかりを「悪魔の手」と称して槍玉にあげるメディアの姿勢に不満を示している。

 ドメネク監督は、アイルランドの怒りは理解できる、としつつも、「我々はハラキリはしない。審判がミスを犯し、たまたま今回は我々に幸いしたというだけだからだ」と語り、過去にフランスが不利な誤審で敗れたことがあった事実も忘れるべきではないと強調した。

 これまで国民のブーイングを浴びながら、今回W杯出場を決めて大会終了後まで自らのクビをつないだドメネク監督だが、またしても素直に祝福される場面には恵まれず、つねに苦難がついてまわる運命にあるようだ。