これまで、お役所のITインフラは何も考えずにWindowsパソコンを3年サイクルで新調し、縦割りの組織に従って、全体最適とは無縁なバラバラのシステムを運用するサーバが乱立していた。
しかし、そうした無節操なお役所IT事情も、この4月からわずかずつではあるが変わりつつあるようだ。



まず、WindowsXPが快適動作するパソコンは、リース期限の3年が過ぎても更新せずに、再リースをして使用するようになっている。パーソナルレベルで期待が集まるWindows7など、お役所ニーズにはもってのほかである。民間では未だに64MメモリのWindows98パソコンを使っている会社がたくさんあるのだ。

続いて、総務省の旗振りによって、「オープンな標準」に従ったソフトウェアの導入が始まっている。
愛媛県の四国中央市が4月1日から、全庁で使う約1100台のPCのオフィスソフトを、無償のオープンソースソフト「OpenOffice.org」に入れ替える

お役所のソフトウェア調達では、ハードウェアと同様に何も考えずに「Microsoft Office Professional」を導入してきたところが多い。しかし、実務に使うのはほとんどWordとExcelだけである。AccessはEUC(エンドユーザーコンピューティング)で開発されたシステムの動作プラットフォームとして必要な場合もあるが、全てのユーザーが対象ではない。Outlookも同様だ。

今回導入されたOpenOffice.org」は、Microsoft Officeとの高い互換性を持った無料のオフィスソフトだ。これによって、今後5年間で約3300万円のコスト削減効果が見込めるという。もっとも無料とはいえサポートコストは必要なので、タダで使えるというわけではないが、コスト削減効果は大きいだろう。

最後に、静岡県御殿場市では、情報漏えい対策としてシンクライアントを大規模導入を決定した。シンクライアントとは、端末にデータを一切持たずに、サーバから配信されるデスクトップ環境だけを提供するものだ。データ漏えい防止ととともに、在宅勤務の促進という目的でも注目されているソリューションだ。

クライアント環境はサーバ側で一括管理されるため、セキュリティパッチやウィルス対策ソフトパターンファイルの適用が集中して実施でき、管理コストの削減にも大きく寄与する。
ユーザーはソフトウェアのインストールが一切できないので、昼休みのお遊び用に素性の怪しいゲームソフトをインストールする不届者を取りしまることもできる。

今後お役所が進めるべき有力なソリューションは、仮想化技術によるサーバ統合である。別にお役所に限った話ではないが、数多くのサーバが、パワーをもてあましながら、マシンルームで膨大な電力を消費している。
グリーンITという用語も注目されており、少数の物理サーバ上で、多くの論理サーバ環境を動作させ、リソースを動的に割り当てることで、電力消費を抑えることが必要だ。

さらにITインフラ基盤を行政ニーズの高度化に生かす施策として、コンピュータ集約の進化形とも言える「クラウドコンピューティング」も、今後の検討課題になってくるであろう。

(編集部 石桁寛二)

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