19日のリバプール対チェルシー戦で、主審のロブ・スタイルズが下した判定が大きな物議を醸している。スタイルズ主審は後半17分、ペナルティエリア内でリバプールのDFスティーブ・フィナンが、チェルシーのMFフロラン・マルダを倒したとして、PKの判定を下した。前半に1点のリードを奪っていたリバプールは、このPKをMFフランク・ランパードに沈められると、そのまま1-1で引き分け、勝点2を失う格好に。リプレイでは接触すら確認できないこのプレーをPKと判定したスタイルズ主審に対し、リバプールのラファエル・ベニテス監督は、「あり得ない判定で、あり得ないPKを献上した」と、いまだ怒りが収まらない様子だ。

 また、この日のスタイルズ主審には、このPK判定以外にも、チェルシーのMFマイケル・エッシェンが2枚目のイエローカードを提示されたように見える紛らわしいジェスチャーが見られるなど、そのジャッジは試合を大きく混乱させた。この事態を重くみたプレミアリーグ審判団のキース・ハケット代表は、スタイルズ主審が翌週のリーグ戦で笛を吹かないと発表している。

「絶好機でミスをしたストライカーが次の試合でスタメンから外されるのと同じで、主審もミスをすれば試合で笛を吹くことが出来なくなる。ロブとは今朝話したが、彼自身も自らの過ちは認めている。ラファエル・ベニテス監督には、私の方から謝罪のメッセージを送っておいた。リプレイを見て、ロブも深く反省しているようだ。彼自身もリバプールに連絡をとって謝罪するのではないだろうか。エッシェンに2枚目のイエローカードを提示したように見えた場面については、ロブと第4審判から説明を受けた。彼はジョン・テリーにカードを提示した後、直接FKの合図をする際に、カードをしまい忘れていたようだ。その行為が、エッシェンにカードを提示したように見えたんだ。これについても、再発防止に努める」

 一方、元プレミアリーグ主審のグラハム・ポール氏は、『BBCラジオ』のインタビューで「大きなプレッシャーの結果」とスタイルズ主審の誤審をかばった。自らも2006年ドイツワールドカップで同じ選手にイエローカードを3度提示する“大誤審”を経験しているポール氏は、トップレベルの試合を裁く精神状態を次のように語っている。

「最初に見たときは、エッシェンに2枚目のカードを提示したように見えたね。ただその後、テリーを指差して、誰がカードを受けたのかはっきり示していたように思う。そもそも、彼はPKのジャッジを下したばかりだった。主審として、自らの誤審を直感で感じ取っていたのだろう。大きな試合ではプレッシャーも大きくなるし、そのプレッシャーが最高潮に達すると、思考がクリアでなくなって、正しい判断が下せなくなることもある。ただ、あのPKの判定は大きなミスだった」

 試合の結果に大きな影響を与えた誤審に対し、リバプールのベニテス監督やキャプテンのスティーブン・ジェラードは、メディアを通じて怒りを露にしている。2007-08シーズンのプレミアリーグ序盤の行方を占う大一番で飛び出した誤審問題。リバプールが失った勝点2は、プレミアのタイトルレースにどのような影響を及ぼすだろうか。