8日、米原子力発電大手ウェスチングハウス買収について説明する東芝の西田厚聰社長(撮影:吉川忠行)

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東芝<6502>は8日、米原子力発電大手のウェスチングハウス(WH)の全株式を54億米ドル(約6210億円)で取得する契約を、英国原子燃料会社(BNFL)と締結したと発表した。WHは諸手続きを経て、今年秋ごろから東芝グループの傘下に入る。

 東芝はWH株式の51%以上を保有し、残りは共同出資者が保有する。東芝の出資比率は最大でも52−3%に留める。ほかの出資候補は米国企業や商社など5−6社で、出資比率を現在調整しているという。

 同契約に関する記者・投資家向け説明会で、同社の西田厚聰社長は「今回の株式取得で、当社の社会インフラ事業はさらに強固な事業基盤を築き、東芝グループのさらなる成長と収益の拡大に大きく貢献すると確信している。地球環境を保ちつつ、世界的なエネルギー需要に応えることのできる原子力は、今後確実に成長する分野だ」と話した。東芝によると、中国などアジア地域の経済成長と欧州での新規建設の再開などで、原子力需要は2015年に、現在の1.5倍に拡大することが見込まれている。

 WHは、1957年に原子力事業を開始。約50年にわたり原子力発電プラント機器、サービスを提供してきた。現在は世界14カ国に34拠点を持ち、売上規模は約18億米ドル(約2070億円)、総資産は約30億米ドル(約3450億円)。世界市場で加圧水型原子炉(PWR)を中心に強みを持つため、国内を中心に沸騰水型原子炉(BWR)を持つ東芝と、製造・販売・技術力の面で補完関係が成り立つ。

 東芝は、WH買収で原子力事業のシェアが設備容量比で世界トップ(28%)となる。このシェアに原子力需要の拡大を加味すると、「2015年までに原子力事業の売上高は現在の3倍の7000億円以上が期待できる」(同社長)という。また、シナジー効果などで営業利益率が最低10%になるとの見通しも示した。 【了】