2005年8月20日、衆院選への出馬表明直後に入った広島6区内で遊説する堀江貴文容疑者(資料写真)

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「われわれが政治を変えていかなければ。必ず突破できる」─。2005年8月25日午前、JR尾道駅(広島県尾道市)前の雑居ビルの1階でライブドアの堀江貴文社長(当時。証券取引法違反容疑で逮捕)は、「改革」と書かれたそろいのTシャツ姿のスタッフ約60人とともに、衆院選・広島6区の候補予定者として事務所開きを行った。同じ日の夕方、トップ不在のライブドア本社(東京都港区)からは、中古車販売会社の経営権取得を伝えるプレスリリース「ジャック・ホールディングス株式会社の子会社化に関するお知らせ」が発表された。

 同リリースによると、ライブドアの取締役会が8月25日に開催され、ジャック社(現ライブドアオート)の発行済み株式取得と、第3者割当増資と新株予約権の引き受けで、子会社化すると決議したとしている。その後、衆院選告示から3日目の9月1日に両社は業務提携に基本合意。堀江氏が落選後に帰京した同14日に、ジャック株6.17%を第2位株主から約10億円で取得。海外出張に発った翌15日には約2500株の新株予約権、約135億円の第3者割当増資で保有比率を51%強まで引き上げ、傘下に入れた。

 このジャック社買収をめぐって、報道各社は堀江氏逮捕後の06年1月28日、東京証券取引所がインサイダー取引の疑いで証券取引等監視委員会(SESC)に報告したと伝えた(東証広報は「公式発表でない」と話している)。夕方に行われたリリース発表直前の午後3時まで取引が行われた05年8月25日、ジャック株価は前日終値より21円(15.5%)高の156円に急騰、売買高が前日の約13倍の大商いとなった。この動きについて、東証は不自然な点があるとし、証券各社に対し聞き取り調査を実施。「25日の取引終了後にライブドアによる子会社化の発表がある」との内部情報を知る人物が大量の買い注文を出した可能性を指摘したという。

 ジャック社の主要株主の異動状況を見極めるには、関東財務局に提出された有価証券報告書や大量報告書など開示資料を参考にするしかない。それによると、05年4月7日時点で筆頭株主(保有比率11.79%)の翼システムと第3位(同4.61%)の村上ファンドが05年9月末までに保有株数を落とし、第4位(同4.24%)だった日本証券金融がライブドアに次ぐ第2位(同6.4%)に躍り出ている。

 村上ファンドは、一時は長者番付に全国3位として名を連ねたジャック会長(当時)の渡辺登氏が01年6月に業務上横領容疑で東京地検に逮捕されると、同年5月に約7%を大量取得。その後は断続的に買い増し、03年末までに保有比率20%超とすると、その後は売りに転じて05年3月末までに4%超に低下。05年9月の有価証券報告書では、大株主から離脱している。

 また、村上ファンドは、05年9月26日までにジャック主要株主の日本証券金融株10.37%を大量取得して暫定的に筆頭株主になったと見られ、05年末に7.56%保有し続けている。同金融は05年9月末時点のライブドア第5位株主(3.02%)という関係もある。

 ジャック社をめぐっては、日産創業家出身で投資会社「テクノベンチャー」社長、女優の杉田かおるさんとの結婚でも話題になった鮎川純太氏が04年11月に社外取締役に就任、1000万株の第3者割当増資を引き受けるなどの関与も見られる。鮎川氏は、ライブドアが新社長に役員を送り込んだ05年11月に、取締役を辞任している。

 堀江氏の留守中の8月25日、ジャック社買収を決議したライブドア取締役会を取り仕切ったのは最高財務責任者を務める宮内亮治取締役(当時。証券取引法違反容疑で逮捕)とみられる。一方、堀江氏は、自らのブログで、出馬前の最後の書き込みとして「出馬したとしても社長は続けます」「時間とは工夫次第で有効に使えるもの」(8月16日付)と綴っている。