メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役の警察官Tさんへのインタビューで「自転車の取り締まり」に関する裏話を暴露する当シリーズ。「知られざる駐車監視員の日常と取り締まり法」について語られた前回に続き、今回はどう考えても納得いかない「原付バイクの30km走行制限」のについて、吉田さんがとことん追求します。

軽車両の自転車はどこまで車両や歩行者と共存できるのか? その10

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吉田:原付バイクの30km走行制限が如何におかしいか、それと国道沿いにて大型トラックがビュンビュン走っている路面に敷かれた自転車ナビラインは何も考えないでペイントされているかが良く分かるはずです。

Tさん:つまり、道路交通法やら道路整備の決定権を下す者が現場を知らない……と言うか、実際に自分自身で運転せずに状況判断で決めているってことを吉田さんは指しているわけですか?

吉田:はい、そういうことです。自分で運転すればすぐにおかしいって分かりますよ。原付バイクを30kmピッタリで走行しているライダーなんて全体の1割か2割程度だと思いますし、自転車ナビラインが大型トラックだらけの国道沿いに敷かれていても、走行する車両に鬱陶しがられて危なくて歩道を通行してますからね。

そんな現場を知らない連中が上層部にいてのさばっているのが許せないんです。そもそも、原付バイクが2017年になっても最高速で30km制限ってどうかしてますよ。白バイ隊員の知り合いも多いんで話を伺うと、速度超過違反で捕まえやすいのは原付バイクって話も聞いてますし、反則金徴収の格好のエサになっているんですよ。

さらに言わせてもらうと、原付バイクは”原動機付自転車”なのに、決して自転車扱いになってない。なぜならば、駐車監視員はクルマと同じように扱っています。クルマ同様に路上や歩道上に駐輪しているとペタペタと駐禁ステッカーを貼っていく。あれっておかしいと思うんですよ。原付は除外するべきだと思います。そんなことをやっているから原付バイクが日本国内で売れなくなってしまい、乗る人が激減。そして自転車へと移行し、駐禁で取り締まりが減る。世の中的には良いのか悪いのか分かりませんが、警察的には駐禁での反則金徴収の数が減ってしまうことから大損しているってことなんですけどね。となると、必然的に駐車監視員も駐禁ステッカーを貼るチャンスが減っていくので暇になります。だからこそ、交通監視員を兼任するべくトレーニングでもさせるのが正しいんじゃないかと僕は考えます。

Tさん:吉田さんのご意見、決して間違っていないと思います。原付バイクって原動機が付いた自転車ですからね。それなのに、駐車監視員はクルマや大型バイクと同じように駐禁で取り締まっていくのは言われてみてばおかしいと初めて気付きました。そう考えると、補助電力の付いた電動アシスト機能付き自転車も原付バイクと同じように駐禁で取り締まらないと不公平な問題が発生するのではないかと思ってしまいました。

吉田:そこなんです、そこ。平等性の欠如なんです。電動アシストで走る自転車と原付バイクが主要幹線道路で走る姿を目撃することも多いですが、お互い30km前後で走っている状況を目の当たりにします。となると扱いを一緒にしないと不公平だと思うんですね。僕は原付バイクも自転車も乗りませんが……極端すぎる意見と思われても仕方ないとは思いますけど。

Tさん:これは私の勝手なアイデアなんですけれども、原付バイクの最大速度30km制限を普通自動車免許や中型二輪の免許を持つ者だけには解除させて、50kmまで速度を出すことが可能にするべきだと、同僚との飲みの席でもそんな話をよくしてます。原付バイクの免許だけでは分かり得ない交通ルールを実体験しているクルマや二輪車の免許取得者が、原付バイクを運転しても30km制限っていうのは時代遅れと言いますか、おかしいと思うんですよ。特例にしろというよりも、原付のナンバープレートにクルマや二輪車の免許所持者と一発で分かるようなステッカーを貼るなどして、追尾してくるパトカーや白バイへ伝えられたらいいなと。

吉田:Tさん! それ凄い良いアイデアだと思いますよ。上司にそのアイデアは提案とかしてないんですか?

Tさん:何年も前にしました。が、上からは”そんな意見通るわけないだろ”と一喝されて終了でしたね……。

吉田:ただ面倒なだけなんでしょう。上司っていう生き物はこれだから……。

Tさん:私と同僚の2人でプランを説明したんですけれども、明らかに面倒臭そうな顔をされました。なぜそのアイデアが出てきたか言いますと、仕事がオフの時に環七を走ってオートバックスへクルマのパーツを買いに行ったんですね。その際、陸橋を登っているところを後ろから白バイ隊員に追尾され、29kmオーバーで御用になったんです。私も原付のメーターを見ると60kmを遥かに超えていたので……恐らく70kmぐらいは出ていたと思うんですけど、赤切符で罰金刑にすると自治体に反則金が回らないことを分かっている白バイ隊員も多いから29kmにしてくれていたのはその場で理解できました。私も警察官になってから同じ警察官に交通違反で検挙されるのが初めてでしたので、どんな対応すればいいのかドキドキしながらいたんですけどね。

吉田:同じ警察官だから見逃してくれとか哀願はしなかったんですか?

Tさん:そういうことをするのはそれなりの役職就いている連中だけですよ。私みたいな下っ端は絶対やりません(苦笑)。

(次回へつづく)

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出典元:まぐまぐニュース!