――強い覚悟があったんですね。葛藤もあった交際期間中、かいさんが事故で病院へ入院したときには、彼女ではなく「上司」と泣く泣く伝えるしかない場面もあったと。

えみ:看護師さんは意地悪ではなく、事務的に「どういうご関係ですか?」と聞いてくださっただけなんですよね。でも、いざ書類上へ書くときには、親でも兄弟でもなく、付き合っているからといって堂々と恋人と書く勇気もなく、迷った末に「上司」としか書けなかったんです。

その日は、その日は、過去一番と言っていいほどの言い合いになり「えみがいざとなった時にお付き合いしてると言えない関係じゃあもうお付き合いしてる意味じゃん!」と私が思ってしまって、自分が情けなくなって別れ話を切り出しました。

かい:でも、それをきっかけに「結婚しよう」と伝えられたんですよ。付き合っているだけでは自信が持てないなら「結婚したら『妻』と書けるよ」と言って、忘れられない日になりました。

――かいさんの言葉を受けて、えみさんもだいぶホッとされたのでは?

えみ:素直に「私も『妻です』と言いたいな」と思いました。6年間も付き合っているなかでは、私も結婚を伝えようと考えてはいたんです。でも、自分にとって最大の壁でしたし、かいちゃんが言ってくれて、心から安心しました。

◆介護の不安はありつつも「ずっと一緒にいられる」

――結婚は2020年8月。5年目となった今描いている、自分たちの将来像は?

かい:平和に暮らせればいいな。僕らの子ども代わりの猫ちゃんが3匹もいますし、愛情をそそぎながら、ひっそり幸せに生活できるのが一番です。

えみ:出産が難しいから、保護猫を育てようと決めたんだよね。2023年にはマイホームも完成して、今ある家でずっと一緒に暮らしていきたいなと思っているんです。じつは、結婚前はおたがいに「家を建てるなんてアホやんな」と思うほどで、賃貸で住むのが一番と思っていました。

でも、家族が増えるにつれて、賃貸を転々としていては、柱の傷とか、家の思い出も残せなくなると考えが変わって。21歳差の夫婦である以上、年上の私が先に老いるのは当然ですし、介護を見越したのもありました。いつか、車椅子生活になっても暮らせるようにバリアフリー住宅にして、マイホームで生涯を終えられればと思っています。

かい:介護の不安については、周囲からもよく聞かれるんです。なかには「親と妻の両方を介護なんて、できるわけないやろ」と言ってくる人もいますけど、そう言われると逆にちゃんとやってやろうと思える性格もあり「若いうちに介護する方が体力もパワーもあっていいやん」と思ってしまいます(笑)。えみが言ってくれたように、家を転々としていたら記憶は残っても形は残らないし、僕はえみとの思い出がたくさん詰まったマイホームでずっと暮らし続けたいです。

<取材・文/カネコシュウヘイ>