カードゲーム「UNO(ウノ)」は誕生してから50年以上が経過したが、人気に陰りは見えない/Jakub Porzycki/NurPhoto/Getty Images

(CNN)家族で楽しめるカードゲーム「UNO(ウノ)」は誕生して52年近く経つが、その人気はかつてないほど増しているようだ。ある指標によると、ウノは世界で最も売れているゲームだという。

発売元の米玩具大手マテルによると、昨年、米国では1秒にほぼ1セットの割合でウノが売れた。つまり1分当たり60セット近く売れたことになり、同17セットだった2021年から増加している。

ニューヨーク州ロチェスターにあるストロング国立遊び博物館のキュレーター、ミシェル・パーネットドワイヤー氏は、ウノが人気なのは幅広い魅力があるからだと指摘する。

「子どもは大人と対戦しても負けることはないし、大人も一緒にプレーしても楽しめる」「ゲームプレーはシンプルでわかりやすく、1ラウンドのプレーはすぐに終わる」と同氏は語っている。

ウノの種類は600以上あるが、ゲームの基本的な仕組みは新バージョンが出てもほとんど変わらない。プレーヤーは数枚のカードを引き、順番にカードを捨てていく。最初に手元にあるカードをすべて出し切ったプレーヤーが勝つというルールだ。

プレーヤーは、捨て札の山の一番上にあるカードの色または数字と手持ちのカードが一致する場合、カードを捨てることができる。また状況を変えたいときに、次のプレーヤーにカードを多く引かせたり、順番をスキップさせたりできる記号カードを使うこともできる。

ウノはポップカルチャーに頻繁に登場する。さかのぼること07年、オバマ元大統領一家がウノを楽しむ姿が見られた。歌手のジョー・ジョナスからタレントのカイリー・ジェンナーまで、ウノは多くの有名人のソーシャルメディアの投稿に登場している。歌手のジョン・レジェンドとモデルのクリッシー・テイゲンが、米誌ヴァニティ・フェアが主催したアカデミー賞授賞式後のパーティーにウノを持参したこともあった。昨年7月にはザ・ルーツのドラマー、クエストラブがウノ・パーティーを開催。歌手のテイラー・スウィフトや俳優のジェイソン・サダイキスなどのスターらが出席した。

最近はテレビシリーズ「ハックス」のエピソードでも取り上げられた。主人公のデボラ・バンスはラスベガスで旧友たちがプレーするカードゲームに参加するが、それはポーカーではなくウノであることに気づく。21年、マテルはラッパーのリル・ヨッティを主演に迎え、ウノを題材にした強盗コメディーの実写映画を制作すると発表した。

ウノ人気の持続

ウノは1971年にオハイオ州の理髪師マール・ロビンス氏によって考案された。ロビンス夫妻はウノを5000セット印刷し、キャンプ場で販売しながら全米を回った。夫妻がゲームの権利を売却後、80年代に人気が高まり、92年にマテルが買収した。

ウノは何世代にもわたり人気を保っているゲームの一つだ。ゲームナイトやキャンプ旅行に持っていけるよう、他のボードゲームやカードゲームと共に棚に積み上げられていたり、引き出しにしまわれていたりして、しばしば家の目立たないところに置かれている。

パーネットドワイヤー氏は、ウノは「比較的安価で持ち運びやすい」と言う。最も安いものはアマゾンで6ドル(約900円)以下で販売されている。そのため、愛用して折り目がついたり、角が曲がったりしたカードを新しいものに簡単に交換できると述べている。

小売り追跡サービスを行うサーカナによれば、ウノは現在、ウォルマートやターゲットなどのゲーム売り場にあるボードゲームを含む従来型のゲーム部門(ポケモンや遊戯王などのトレーディングカードゲームを除く)でトップの座を占めている。世界では2年間、米国では3年間このタイトルを保持している。

ウノは現在80カ国以上で販売されている。点字版のウノから、米国の政治を連想させないように通常の赤と青のカードをオレンジと紫に置き換えた無党派版までさまざまだ。

マテルは今年だけでも、新たに27種類のウノを発売した。この中には、テレビ、映画、スポーツチーム、ポップカルチャーなどさまざまなファンダム(熱心なファン)をたたえる「ウノ・ファンダム」も含まれまると、マテルの副社長兼グローバルゲーム部門の責任者を務めるレイ・アドラー氏はCNNに述べた。これらは、ハリー・ポッターから米プロフットボールリーグ(NFL)まであらゆるものを記念しており、特別ルールと収集可能なホイルカードが含まれている。

「オリジナルのウノは、その幅広い魅力のため根強い人気を誇る」とパーネットドワイヤー氏は言う。一方で、オリジナル以外のものは、新しい顧客を引き付け、初めてウノをプレーする子どもたちをわくわくさせるのに一役買っていると指摘している。

新バージョンがウノの人気に与える影響

マテルは、ウノの新バージョンが「相加的で、共食いにはならない」ことを長年にわたり見てきたとアドラー氏は語る。つまり、新バージョンはウノ全体の成長に貢献し、既存商品の売り上げを損なわないということだ。

従来のウノのプレースタイルから最も大きく逸脱したものの一つとして、マテルは23年10月に「Show ‘em No Mercy(日本語名:ウノ ハンパねぇ!)」というバージョンを発売した。すぐに完売し、同社は需要を満たすのに苦労しているとアドラー氏は説明した。

「ハンパねぇ!」はウノのエクストリーム版で、多くの新ルールと新しいカード(従来のゲームの108枚に加えて56枚追加)が付属している。これには「ドロー10」カードと手札が25枚以上になるとアウトになるというルールも含まれている。

また、ドロー10も含めた複数のカードを置くことが可能な「スタッキング」もできる。スタッキングは公式ルールではないため、オンラインでもゲームナイトでも多くの議論を巻き起こし、話題となった。これは、「ウノ・アタック・メガヒット」など、いくつかのバージョンのルールブックでのみ扱われている。

アドラー氏は、「ハンパねぇ!」は消費者インサイトやソーシャルメディアのフィードバックに部分的にインスパイアされたと指摘する。

「人は友人や家族に対して記号カードで攻撃を仕掛けることを大いに好むが、記号カードがたくさんあるときは特に最高のリアクションが得られる」と同氏は説明。「そこで我々は『それをそのまま取り入れて次の段階に持っていったらどうだろう』と考えた。デザインチームは、『ウノの残酷な要素は何か、それを強調するにはどうすれば良いか』という点を見事に表現してくれた」

「ハンパねぇ!」はその熾烈(しれつ)なプレーがプレーヤーの共感を呼び、ソーシャルメディアで話題になった。マテルもエイプリルフールに偽の「ドロー100」カードを投稿するなどして、ソーシャルメディア上のやり取りに参加した。24年第1四半期には「ハンパねぇ!」がサーカナの従来型のゲーム部門で、従来のウノに次いで2番目に人気のゲームとなった。

アドラー氏によると、24年末までにマテルは50を「優に」超えるウノの新商品を発売予定だが、ゲームプレーに大きな変更が加えられるのは毎年2〜3商品だけだという。

パーネットドワイヤー氏によると、ウノは18年にストロング国立遊び博物館の国立玩具殿堂入りを果たした。

「素晴らしい玩具やゲームは世代から世代へと受け継がれていく。今日の祖父母の多くは子どもたちと一緒にウノで遊び、その次の世代の親たちが今、子どもたちとウノで遊んでいる。まさに『不朽』のものだ」と同氏は語っている。