平日の真ん中、ウェンズデー。

月曜ほど憂鬱でもないし、金曜ほど晴れやかでもないけれど、火曜とも木曜とも違う日。

ちょっとだけ特別な水曜日に、自分だけの特別な時間を持つ。

それが、アッパー層がひしめく街、東京で生き抜くコツだ。

貴方には、特別な自分だけの“水曜日のルーティン”はありますか?

「東京ウェンズデー」一挙に全話おさらい!



第1話:実は、妻と別居して3ヶ月。公私共に絶好調に見える39歳男の本音

左腕のオーデマ ピゲ・ロイヤル オークの針が「WED」を指しているのを確認すると、俺は西麻布の方へと歩みを進める。

「どこか良さそうなところは…っと」

路地裏をフラフラと不確かな足取りで歩く様子は、はたからはまるで亡霊のように見えるだろう。

それもそのはずだ。今の俺には、行くあてなどない。

俺の水曜日は、“開拓の水曜日”。なんの情報もなく、ただ道を歩いて見つけただけの店に、フラッと一見として飛び込むことを自分に課しているのだから。

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第2話:70平米の2LDKだけど、2人暮らしは限界!「彼の足音にさえイライラする…」感情が爆発した女は…

本当は雑談がてら、そんな風にイチから説明したって別に構わない。なんなら、無造作に入れた冷凍ベリーがものすごくいいアクセントになっていることまで、私の方から積極的に伝えたいとまで思う。

だって則之は私にとって、ルームメイトであり、親友であり──なにより大切な恋人でもあるから。

だけど、今日は。水曜日だけは、絶対に言わない。だって、それがふたりのルールだから。毎週水曜日は、私と則之の“秘密の水曜日”。

水曜日だけは絶対に、お互いに一切干渉しない日にしているのだ。

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第3話:同棲して5年。彼女に内緒で、男が毎週出かける秘密の場所とは…

好きで一緒にいるんだ。俺の方は、ゆいと1日ずっと一緒にいたって全く苦にならない。なんなら“秘密の水曜日”は、俺にとってはちょっと寂しいものだったりもする。

けれど、俺とゆいは違う人間だから、“そういうもの”だと思って受け入れている。ゆいのリラックスできる生活を尊重したいし。

ゆいの1人で思案をする姿や、「秘密でーす」と言う時のイタズラっぽい笑顔はすごく可愛いと思うし。それに最近では───俺の方にも秘密があるし。

そう。ゆいには絶対に言えない…毎週水曜日の、秘密の楽しみが。

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第4話:専業主婦になって後悔してる…。優雅なセレブ妻が家に帰りたくないワケ

玄関で急いでつっかけたのは、先月夏休みで泊まったハレクラニ沖縄から持ち帰ってきた、アメニティのビーチサンダルだった。

とても生徒さんには見せられない姿だ。だけど、ここはどうか許してほしい。なにせ目的地は、同じマンション内のたった1フロア上の階なのだから。

仕事場兼趣味の部屋として使っている3階の1LDKから、自宅である4階の4LDKへと小走りで移動する。

「ただいまぁ」

勢いよくドアを開けると、目に飛び込んできたのは──。いつも通りの、うんざりするような光景だった。

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第5話:早く妊娠したいのに…。妊活に疲れた30歳妻に、夫が提案した意外なこと

まだ30歳。もう30歳。どちらとも言える年齢だけれど、今の私は完全に、「もう30歳」と考えてしまう側の人間だ。

現役で大学に合格して、新卒で大手広告代理店に就職して、26歳で会社の先輩だった勇輝と結婚して、あっという間に4年。

受験。就職。結婚。なにもかもが順調なペースで進んでいた私の人生で、唯一…。

“妊娠”だけが思い通りに進まないまま、私はいつのまにか30歳になっていた。

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第6話:「妊活中の妻と顔を合わせたくない…」34歳夫が会社を出たあと、家に帰らずに向かった先

「勇輝、お前もう仕事上がりだろ?飲み行こうぜ、なっ」

― やっぱり…。

という言葉を飲み込んで、僕は慎重にその太い腕を肩からほどいた。今夜だけは、絶対にこいつと飲みに行くわけにはいかない。

だって今日は、水曜日。水曜日だけは、僕は酒は飲めないのだ。

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第7話:毎週出会いを求めて、アプリ三昧のバツイチ男。待ち合わせで、衝撃を受けたワケ

オフィスのある二子玉川から目的の神楽坂までは、電車で45分もかかってしまった。

店の予約時間は20時。待ち合わせは、19時55分に神楽坂駅1a出口だ。意外にも、時間はあと30分弱しか残っていない。

― あぶないあぶない。うっかり勇輝と一杯飲んでたら、遅刻してるところだったな。

そんなことを思いながら、わずかな時間を潰すためにとりあえず駅前のコーヒーチェーンに入り、もう一度スマホを確認する。

画面の中で立ち上がっているアプリ。それはこの半年ほど真剣に取り組んでいる、マッチングアプリだ。

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第8話:1年以上デートしているのに、絶対にお泊りしない男。彼が隠していた秘密とは…

「ごちそうさまでした」

マグカップいっぱいに作ったフラットホワイトを飲み干し、贅沢なブランチの余韻に浸る。

そして、すでに半分になったパンリベルテをワックスペーパーで丁寧に包むと、いつものようにパソコンに向かって原稿に取り掛かる───のではなく、鏡台の前に座った。

だって今日は他でもない、水曜日だから。

私には、水曜日には絶対に欠かすことのない、とある儀式があるのだ。

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第9話:「えっ、まさかの女連れ?」離婚の打ち合わせに彼女を連れてきた既婚男。女弁護士は思わず…

幼い頃から積み重ねてきた習慣は、その人の本質を作りあげる。そう信じている。けれど、今日は水曜日だ。とある“新しい習慣”をこなすため、私は1人で気合いを入れた。

「よし、やりますか」

「いただきます」と「ごちそうさま」をきちんと済ませると、食べ終わった食器をキッチンで綺麗に洗い、動きやすい格好に着替える。

今日は水曜日。水曜日には特別に、ここ1年ほど前から取り組むようになった新しい習慣が控えているのだった。

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第10話:誰もいなくなった深夜のオフィスで…。年収2,000万超の男が、密かにしていたコトとは

「野辺山さん、お先に失礼します」
「おう、お疲れ」

23時半を過ぎ、残っていたもう一人である若手がついに退勤しても、俺はまだ仕事を切り上げない。

水曜日である今日、仕事は、むしろ今からが本番だ。人気がなくガランとしたオフィスは、否が応でも集中力が高まる。

誰もいなくなったオフィスで、日付が変わるまで仕事するのが、俺の毎週水曜日の過ごし方なのだった。

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第11話:「同窓会に行きづらい」昔は美人でちやほやされたけど、42歳で独身なんて恥ずかしい…

「律子さんって、毎週水曜日だけこんなに早く帰って何してるんだろうね」
「独身だし、デートとか?美人だし」
「いやいや、下々には言えないセレブな人たちの集まりにでも参加してるんじゃない?」

かつてはそんな噂話も飛び交っていたようだけれど、退勤を済ませたあとのオフィスで私の噂話をする人はもう、そう多くない。水曜日だけは、17時…遅くとも18時には退勤するルーティンも、2年も続けていれば周囲に認知されてくる。

ただし、私が会社を出たあとに何をしているのかは…まだ、誰にもバレていないようだ。

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