男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「マッチング後、デートまでは進むけど次に繋がらなかった理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:アプリで出会った女性といい感じだったのに、3回目のデートがなかった男。会計時のNG行動とは?




恵比寿のバーを出て、明治通り沿いを走っていたタクシーに乗り込む。

運転手さんに行き先を告げてから後ろを振り返ってみると、もう裕平の姿は見えなくなっていた。

マッチングアプリで出会い、今日で会うのは2度目だった裕平。

実際に会ってみて、アリかなと思った。だから2度も会ったのに、今日の食事デートの中盤あたりから「やっぱりナシかも…」と思い始めていた。

「いい人だとは思うんだけどな…」

そう思いながら、私はタクシーの車内で再びマッチングアプリを開いていた。


A1:爽やかで生理的にもアリだった。


裕平とアプリ上でマッチし、何度かメッセージを交換した後にすぐに会うことになった。

やり取りの段階で、スムーズに行く人と行かない人がいるが、裕平とのやり取りはテンポ良く進んだ。

「こんにちは…裕平さんですか?」
「そうです。由香さん、ですよね?」
「はい、初めまして」

渋谷のセルリアンタワー東急ホテルにある『ガーデンラウンジ 坐忘』で初めて会った裕平は、写真の印象とは少し違っていた。




「裕平さん、写真と少し雰囲気違いますね」
「え!それは良い意味ですか?」
「もちろんです。身長、高いですね」

マッチングアプリで約束した相手と、最初に会う時は毎回緊張する。相手がどういう人かも気になるけれど、先方も私に対してどんな印象を持つのか、合格か不合格かが決まるから。

裕平は、私が話しやすいように、いろいろと話題を振ってくれた。

「じゃあ由香さんは、最近別れたばかりなんですか?」
「そうなんです。でも出会いもないので、アプリを使い始めました。裕平さんは?」

マッチングアプリは、普通に出会うより良い人たちがたくさんいて、最も効率のよい出会い方だと私は思う。

「僕は別れて1年くらい経ちます。仕事も落ち着いているタイミングなので、そろそろ本腰を入れて誰か見つけようかなと」
「そうだったんですね。どういう人が好きなんですか?」

まずは相手の好みを知ること。それを知らないと、この先の作戦も立てられない。コーヒーカップ越しに、お互いのタイプを探り合う。

でも、裕平のタイプを聞いて、私は少し不安になった。




「僕は自立している女性が好きです。由香さんは?」

私は、仕事は好きだけれど、一生仕事一筋に生きていこうとは思っていない。結婚したらゆるく専業主婦もありだと思っているし、今の会社にずっといるかもわからない。

― 自立はしているけど…。私でいいのかな。

そう思いながらも、私も自分のタイプを素直に伝えてみる。

「私は男らしい人ですかね」
「男らしい…って、どういう感じの人ですか?」
「決断力がある人?頼れる感じの人が好きです」

古い考えかもしれないけれど、男性に頼って生きていくほうが私には合っている気がしている。

裕平が、そういうタイプかどうかはまだわからないけれど、稼いでいるし、身長も高いし男らしさはありそうだ。

この日は1時間くらいお茶をして、解散することになった。裕平は、ちゃんと次の誘いをしてきてくれた。

「由香さん、良ければ次は食事へ行きませんか?」
「もちろんです!裕平さんが良ければ」
「良かった。じゃあ次は食事しましょう」

でも少しだけ気になることがあった。

「お会計はどうすればいいかな」と思っていたところ、裕平はさっと会計を済ましてくれた。だけど、最後の一言が非常に気になってしまった。

「今日、ここは僕が持ちますね」
「ありがとうございます」

― 「ここは」ってことは…次のデートは、私が支払うってことかな。

その言葉には引っかかったが、裕平は、いい人そうだし、悪くはない。“生理的に受け付ける相手かどうか”という外せない条件もクリアしている。

だから私は、次のデートは、期待を込めて行くことにした。


A2:会計問題でつまずいた。


2度目のデートで、裕平は広尾にあるビストロを予約してくれていた。素敵なお店で、店選びのセンスも悪くない。

ワインを飲みながら、私たちはお互いをよく知るためにたくさん話した。




「裕平さんって、今までアプリで何人くらいに会いましたか?」
「僕は実際に会ったのは3人くらいかな…由香さんは?」
「私は裕平さんで2人目です。でも、2度会ったのは、裕平さんが初めてです」

本当は、もう5人くらいに会った。でもそれを素直に言わないほうが印象がいいかなと思い、なんとなく少なく言う。

それに裕平とこうして2人で食事をしていても嫌じゃないし、また会ってもいいかなと考えていた。

でも元カノの話を聞いているうちに、「やっぱり私たちは合わないのかも…?」と思い始めた。

「ちなみに、なんで前の彼女と別れちゃったんですか?」
「自立している子だと思っていたんですけど、実際に付き合ってみたら想像と違って…。男をATMとしてしか見ていない女性、いるじゃないですか。食事とかも毎回僕が支払うし、一緒に暮らしたら全額僕の負担になるんだろうなと思ったら幻滅しちゃったんです」

― なるほど…。ということは、デート代も割り勘がいいってことだよね?

前回はお茶だけだったけれど、今日はしっかりとしたディナー。実際にご飯を行くのは今日が初めてだし、心のどこかで裕平が払ってくれると期待していた。

でも、裕平の本音を聞いてしまった以上、どこまで甘えていいのかわからなくなった。

せめて初回のディナーくらい、男性に出してもらいたいと思う私は、欲張りなのだろうか。




「なるほど…自立した子が好きって言っていましたもんね」
「あと彼女、全体的にガサツで。食事をしていてもこぼすし、カバンの中とかも汚かったり」

また裕平は、女性に対して厳しい男性だということもわかってきた。ゆるゆる生きたい私とは、向かう先が違いそうだ。

そして食事が終わったタイミングで、お会計がやってきた。ただ私が財布を出そうとしていると、意外にも裕平はさっと出してくれた。

「ここは僕が払いますね」
「いいんですか?ありがとうございます」

でも、素直に喜べない自分がいる。

― ここ、少しくらい出しておくべきだったかな…。

「男をATMとして見ている女性が嫌い」と聞いてしまったので、相手の好意を素直に受け取りにくい。そこまで思っていないかもしれないけれど、ごちそうされる側は複雑な気持ちだ。

「この後時間ありますか?もし2軒目へ行くのであれば、次は私が払います」
「ありがとうございます」

外へ出ると、裕平は当然のように「歩こう」と言ってきた。

「ちょっと歩いても大丈夫ですか?ここから10分くらいのところにバーがあって」
「わかりました、行きましょう」

― タクシーに乗りたいけど、10分の距離でタクシーに乗る女とかも嫌がりそうだな…。

別に、割り勘が嫌なわけではない。払うことも構わない。

私が嫌だったのは、こういう変な気遣いをしなければならない点だった。

お会計はスマートにしてほしい。

毎回お金のことで気を揉むのは嫌だし、奢ってもらう度に「どう思っているんだろう」とか考えることになるのかと思うと、かなり面倒くさい。

2軒目のお会計は、2人で1万円ちょっとだった。宣言通り私が払うと、裕平はご満悦な表情をした。

「あ〜楽しかった。由香さん、本当に最高です」
「ありがとうございます。また飲みましょうね」

今のご時世に反しているかもしれないけれど、せめて初回の食事デートは男性に奢ってもらいたい。

交際前の気合が入っている段階の時くらい、頑張ってほしい。

そもそも今回の私の2軒目のように、「もう二度と会わないだろうから、借りを作りたくない」という気持ちで割り勘にすることもある。そのため、私の場合は、割り勘だと大切にされていないような気持ちになってしまう。

初の食事デートで全額奢られるか、微妙に払うのか、割り勘か…。

この辺りの価値観が合うかどうかは、かなり大事だと考えている。私の場合、裕平とは合わないと思ったので、次の約束はせずに解散した。

▶【Q】はこちら:マッチング後、会う段階までは進んだけど…その先に繋がらない男のデート中のNG言動とは

▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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女が一度のデートでもう会わないと決めた理由は?