スマホの見過ぎに目の乾き、秋は「眼精疲労」対策を眼科医が解説

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 夏場の強い紫外線や、エアコンによる乾燥の影響で、秋は眼精疲労を感じやすい季節とも言われています。免疫力が下がり気味になる秋は、いつも以上にアイケアが大切になります。この時期に起きやすい目の疲れの原因や対策について、医療法人社団久視会いわみ眼科の岩見久司先生に聞きました。

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Q:秋に眼精疲労が起こる原因について教えてください。

【岩見久司先生】秋は、「環境の変化」と「行動の変化」が同時に起こり、目に負担がかかっていきます。

まず「環境」ですが、やはり季節の変わり目は色々なことが起こります。夏は、外の高温多湿、室内はエアコンで乾燥、とギャップがあったものの目は潤っていました。秋は徐々に湿度が下がっていくので、その変化に涙のバランスがついていくのに時間がかかります。

「行動」の変化とは、目を使いすぎる状態になることです。秋の夜長とも言いますが、秋には色々やりたくなるものです。新しい趣味を始めたり読書や映画鑑賞をしたりと、じっと目を使うことも眼精疲労のきっかけになると考えられます。

Q: 眼精疲労にはどんな症状がありますか?

【岩見久司先生】ピントの合いにくさ、目の重たさ、目の乾き感などがあります。

例えば、スマホで映画をじっと見てしまったとしましょう。近くのものを見すぎていると調節緊張というものが生じます。ピントを調節する毛様体筋に力が入りっぱなしになっている状態で、遠くが見えにくくなったり、どこにピントが合っているか分からなくなったりします。モノをじっと見ていると目の筋肉のコリだけでなく、首の角度も一緒に悪くなっていることが多いです。そこから目の重たさや頭痛を自覚することも。小さな画面でじっとモノを見ると瞬きが減り、そこから乾きの症状も生じます。

■市販の目薬を買う注意点は?「成分が多いから良いわけではない」

Q:市販の目薬を使う場合、選ぶ際のポイントや注意点は?

【岩見久司先生】市販の目薬はそれほどきつい(強い)ものは売っておりませんが、やはり症状にあったものを選ぶのがポイントでしょう。

様々な症状にこれ一本!ではなくて、ピントが問題であれば調節緊張を和らげるネオスチグミン配合や、乾きの自覚があればヒアルロン酸配合など、書いてある内容を確認してから買うようにしてください。不要な成分があると却ってトラブルになることもありますので、成分が多いから良いというものではありません。

Q:眼精疲労をこじらせないために、日常生活でケアできることはありますか。

【岩見久司先生】やはり「こまめな休憩」と生活習慣による「目の負担の軽減」です。秋の夜長と言ってもやはり睡眠時間を確保することはとても大切です。さらに、モノを見る姿勢の改善や、スマートフォンなどのデジタル機器による眼精疲労であれば“20-20-20 rule”の徹底も良いです。

“20-20-20 rule”とは、アメリカ眼科会議が普及させているものですが、「画面を20分見たら、20秒でいいので、20フィート(約6メートル)先を眺めましょう」というものです。これは調節緊張をとり、また目を休めることに繋がります。

■“ブルーライトカットメガネ”は効果あるの?

Q眼精疲労の対策としてブルーライトカットメガネを使用する人もいるかと思いますが、米国の研究では眼精疲労を軽減する効果がない、という報告もありました。ブルーライトカットメガネとの付き合い方とは。

【岩見久司先生】ブルーライトに関して色々な報告があります。強い光を浴び続けている場合、目の粘膜に傷がつくなどもありますが、一般的に問題になるのは長時間のブルーライトを見つづけている場合に、概日リズムと呼ばれる1日のリズムを乱す恐れがあるということです。

“虹の7原色”とも言いますが、白い光には色々な色の光が含まれており、その中でも青い光の成分(ブルーライト)が目覚めを呼び起こすと言われております。そのため、過度にブルーライトを見すぎると寝付きが悪くなるなどの可能性があります。ブルーライトカットメガネを使用するべきというより、やはり休憩をはさみながら目を使っていくことが大切です。

Q:眼精疲労は自然に治る?

【岩見久司先生】環境(湿度)の変化にはいずれ自然に慣れてきますが、そのうち冬の乾燥にさらされてくるので、目の乾き感が持続するのであれば点眼などのドライアイ対策が望ましいです。

秋の夜長に始まる生活習慣が、冬に向かって落ち着くのであれば自然に治ることもあります。しかし、生活習慣が一度つまずくと、例えば悪い姿勢がそのまま残ってしまう…ということも珍しくありませんので、その見直しも重要になります。

〇記事監修/岩見久司先生

医療法人久視会 いわみ眼科理事長。眼科専門医。医学博士。2018年にいわみ眼科を開業。専門は加齢黄斑変性などの網膜疾患だが、前眼部から後眼部まで、眼科全般の診療を行う。小児の近視治療にも力を入れている。ライフワークは「眼科医療の底上げ」であり、啓蒙活動や後輩の教育にも力を入れている。