「素敵なオジサンに憧れます」 齋藤飛鳥が描く、第二章の自分とは
乃木坂46のエースとして活躍し、2023年5月に卒業コンサートを行った齋藤飛鳥さんと、表参道のレストランで待ち合わせ。
お洒落でクリエイティブな彼女を喜ばせたいと選んだのは、築70年超の木造家屋を活用するイノベーティブフレンチ。
新たな出発を祝いつつ、現在の心境とこれからへの思いに迫った!
グループ卒業後の齋藤飛鳥が、今考えていること
「『乃木坂46』を卒業したら、ほっとして肩の力が抜けました」と話す齋藤さん。充電期間中には京都を旅したり、浅草を散歩したりしたそう。「今日の撮影で連れてきていただいたレストランもそうですけど、最近、旅館とか古民家とか歴史を感じさせる建物に惹かれるんです。そういう年頃なんでしょうかね?」
この日の齋藤さんは実にニュートラルだった。
昨年末までは国民的アイドルグループ・乃木坂46の絶対的エース。可愛らしさをアイドルらしさとするならば、クールで格好いい印象の彼女はその真逆に存在していた。
卒業して少し時間が経った今、その印象は少しやわらいだように映る。この5月の卒業コンサートを終えて、大きな心境の変化があったのだろう。
本誌に登場するのが久しぶりとのことなので、いきなり核心を突くのではなく、撮影の感想や、今回のロケ地となった「青山」のイメージから訊ねることにした。
すると、彼女は迷うことなく「大都会って感じですよね」と返してきた。東京で生まれ、東京で育った人のコメントとしては意外なものにも思われたが、実際、彼女にとっては遠い存在だったようだ。
「東京といっても下町で暮らしていたこともあって、なかなか縁がなかったんです。13歳で乃木坂46の一員になると、そのうちMVの撮影の一部を原宿、青山辺りでやる機会がめぐってきました。
ですが、私はその楽曲のメンバーになれなかったんですね。あの時の悔しさを思い出しました」
だが、それから齋藤さんは17歳で初めてセンターを務めると、グループでの存在感を揺るぎの無いものにしていく。
持ち前の小顔とスタイルの良さを生かし、ファッションモデルとしてのキャリアも積み上げていった。が、にもかかわらず、「青山」は依然として“遠かった”ようだ。
齋藤さんは苦笑しながらこう話す。
「私は小柄で童顔。だから、路面店でお買い物をしようとしてもドアマンにつまみ出されてしまうんじゃないか。あの扉の向こうには一生かかっても行けないんじゃないかとも思っていました(笑)。
でも、とあるお店のライダースジャケットにすっかり惚れ込んでしまって、何年か越しに思い切って飛び込んだんです。試着する時もずっとソワソワしっぱなしでした」
どちらかというと慎重派。例えば何かを新調する場合は吟味する。
先程のライダースも一度、家に帰り、一晩熟考。納得した上で、翌日に手に入れたという。
最高のアイドル人生を全うして、人生大満足。今は先のことを考え中
ならば、生き方のスタンスについてはどうだろう。
乃木坂46からの独り立ちを果たした今、何を思い、どんな舵取りをしようとしているのだろうか。彼女は言った。
各国のエッセンスが融合した革新的な料理は齋藤さんの胃袋と心を掴んだらしい。最初のひと口を味わうと目を大きく見開いて歓喜し、それから無言で食べ続けた。人は本当に感動すると言葉を失うものだが、このときの彼女がまさにそうだった
「自分としては、人生大満足。これ以上のいい思いも望まないし、贅沢をすることにも興味がないから、もう上がってしまったような気分。
でも、実際はまだまだ先がある。だから、どうにかして楽しくしなければ。その方法を探ろうとしている段階ですね」
アイドルになりたい一心で芸能界に入った。乃木坂46の1期生になってから卒業までの約12年間、夢を全うし、完全燃焼したに違いない。
とはいえ、まだ25歳。一般的な社会人からするとマナーや常識を身に付けてようやくスタート地点に立ったところ。これから社会の第一線に立って活躍するフェーズだが、齋藤さんにあえて同年代へのアドバイスを求めてみた。
すると彼女は「大事なのは、集団の中で自分の役割を見極めることかもしれません」と前置きし、次のように続けた。
「私、デビューして間もない頃はアイドルらしくしなきゃと必死で、自分をいちごみるく好きの可愛いキャラにしたことがあって」
そう。ファンの方ならよくご存じだろう。かつて彼女は「いちごみるくがだぁいすき、“あしゅりん”こと齋藤飛鳥です」というキャッチフレーズを使用していたのである。
「いまだにそのネタでいじってもらえるので間違いではなかったのかもしれませんが、自分の中ではバグが起きていましたね」
そう言うと、今度は自分に言い聞かせるかのようにぽつりと呟いた。
「アイドルとしての技術や実力が備わっていれば、そんな風に自らを称する必要はなかった。私には少しずる賢いところがあるんです。この適当な感じが許されて、笑いに変えてもらえたのは、グループにいたからでしょうね」
それを聞いて思わず「ひとりで活動するこれからは誤魔化しが効かないのでは?」という感想が漏れてしまった。
すると彼女は「別にそれでもいいやと思う自分がいます」と一笑した。
「私が万人ウケを狙うのはどうやっても無理。たとえお仕事が減ったとしても、今日のように自分の好きな雑誌からお声をかけていただけたら、それで幸せ。決してハートは強くないけれど、今はそう思える状態なんです」
その言葉はどうやら本心から出たもののようだ。
「今素敵な“オジサン”に憧れています。長州 力さんみたいな!」
見ても食べても楽しい“フォアグラナゲット”を口にする瞬間の齋藤さん。その無防備な表情にはウキウキした気分があふれ出ており、見ている方も思わず笑顔になる。「食べたことを誰かに自慢したくなるお料理ですね。どんな風に作ったのか、気になりました」
「今ハマっていることは?」という問いかけに「長州 力さんのYouTubeチャンネル!」と即答した齋藤さん。
「長州さんってプロレス界の歴史に残るすごい方ですが、今は熱海に移住されていて、ご家族と穏やかに過ごしていらっしゃる。
昼間からお座敷でビールを飲んで、『あ〜幸せだな〜』ってしみじみされて。私、素敵なオジサンに憧れます」
齋藤さんの顔は輝いていた。今の彼女にとっては、アイドルとか、タレントとか、俳優とか、ファッションモデルとか、そんな決まりきった肩書きよりも自然体の“オジサン”の方が魅力的らしい。
といっても、読書が好きで独特のワードセンスや、物事を多角的に見る目を持つ彼女のこと。周りが放っておくはずもない。それに好きなことが多いから、マルチな活躍も予感させられる。
また「今日の撮影でお会いしたシェフのように志を持って人を率いることにも興味がある」とのことなので、前に某番組で指摘されていたように社長としてビジネスを始めるかもしれない、とも。
改めて“齋藤飛鳥”とはいろんな可能性を想起させるという意味で、やはり稀有な存在だ。
ひとつのことをやりきった齋藤さんは、果たして次にどんな夢を見て、動き出すのか。その第二章には、ファンならずとも注目したいものである。
■プロフィール
齋藤飛鳥 1998年生まれ。東京都出身。2011年、「乃木坂46」のオーディションに合格し、第1期生最年少メンバーとしてグループに加入。2023年5月に卒業コンサートを実施。10月24日より人気漫画『マイホームヒーロー』が原作の連続ドラマに出演。2024年には映画版の公開も控えている。
■衣装
レーストップ 68,200円、スカート 68,200円〈ともに3.1 フィリップ リム/3.1 フィリップ リム ジャパン customercare@31philliplim.co.jp〉、ペンダント 440,000円、ピアス 995,500円〈ともにティファニー/ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク TEL:0120-488-712〉
▶このほか:「無理やりこじ開けるんです」女優・吉岡里帆が、自由自在に豹変できる理由とは
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東京カレンダー最新号では、齋藤飛鳥さんのインタビュー全文をお読みいただけます。
東カレに語ってくれた、齋藤さんが今やりたいこととは?
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