全身の不調にもつながる”夏太り”。夏を楽しみつつ、予防に努めたい。

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 「夏になるとなぜか太る…」、そんなお悩みを持つ人は少なくありません。この時期は暑さからいつも以上に汗をかき、食欲も減少。一見、痩せやすい季節のようにも思いますが、「実は、痩せる人よりも太る人の方が3倍多い」と、循環器内科専門医・藤井崇博さん。さらに、“夏太り”は見た目だけの問題ではないと、そこに潜むリスクを指摘します。“夏太り”の原因と予防法、知らずに招く不調について聞きました。

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■夏は身体の消費エネルギーが減少、太りやすい状態に

「“夏太り”は近年、特に中高年の間で増えています。また、夏に痩せる人に比べて、夏に太る人はなんと3倍も多いという報告もされています」

 そう話すのは、医療法人社団正恵会ディオクリニック・藤井崇博医師。この“夏太り”、実は見た目だけの問題ではなく、対策しないことで思わぬ体調不良を招くリスクもある、と注意を促します。

「 “夏太り”の原因のひとつに栄養バランスの乱れ、運動不足や睡眠不足がありますが、これらが続くことによって、身体の機能が正常に機能しにくくなり、免疫の低下や自律神経の乱れなど、様々な不調を来します」

 全身の健康にも影響を与える“夏太り”。予防するためにも、まずは原因を正しく理解することが大切です。そもそも「太る」主な原因は消費カロリーよりも摂取カロリーが多くなること。ところが、暑さから食欲が低下し、いつもより摂取カロリーが減っているのに太ってしまう…それが“夏太り”です。この不思議な現象はなぜ起きるのでしょうか。

「最大の要因は基礎代謝の低下が考えられます。夏は気温が高いため、冬に比べると体温維持のための熱産生を必要としないので、5〜7%基礎代謝が低下します。また、暑いから冷たい食事や飲み物を頻繁に摂取していると胃腸の動きが低下し、基礎代謝の低下に繋がります。基礎代謝が低下すると、同じ食事量で摂取エネルギーが一緒だと、消費エネルギーが減っているため、エネルギーが体内に余り体脂肪として蓄積して太りやすくなります」

■夏太りの主な原因は「基礎代謝の低下」「食事の偏り」「運動不足」

原因1)基礎代謝の低下

基礎代謝とは、生命活動を維持するために必要な最低限のエネルギー消費量のこと。基礎代謝が高ければ、体内で脂肪が燃焼しやすくなります。しかし、夏は暑さで体温調節が必要なくなったり、冷房で体が冷えたりすることで、基礎代謝が低下しやすくなります。また、汗で水分やミネラルが失われることで、代謝を助けるビタミンB群などの栄養素も不足しがちになります。

原因2)食事の偏り

食事の偏りとは、暑さで食欲が減退したり、冷たいものや喉ごしの良いものを好んで食べたりすることで、栄養バランスが崩れること。特に糖質や脂質が多い食品を摂取しすぎると、消費されないエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなります。また、野菜やタンパク質などが不足すると、満腹感が得られずに食べ過ぎてしまったり、筋肉量が減って基礎代謝がさらに低下したりするリスクもあります。

原因3)運動不足

運動不足とは、暑さを避けるために外出を控えたり、室内で過ごす時間が増えたりすることで、身体を動かす機会が減ることです。運動不足になると、消費カロリーが減少するだけでなく、筋肉量も低下して基礎代謝が落ちることにもつながります。また、運動は自律神経のバランスを整える効果もあるため、運動不足によって自律神経が乱れると、食欲や睡眠のリズムも崩れやすくなります。

 では、“夏太り”を予防・解消するためには、どのような対策が必要なのでしょうか。

■湯舟に浸かる・冷たいものを摂りすぎない、生活の中で体温を上げる工夫を

「夏は太りやすい時期と認識し、今一度生活習慣を見直してください」とアドバイスする藤井医師。推奨する“夏太り”予防生活のポイントは下記の5つ。極端な食事制限や激しい運動は必要なく、日々のちょっとした心がけと生活改善が重要と言います。

対策1)冷たい食事、スポーツドリンクを摂取し過ぎない

喉越しがいいから、手軽だからと冷たい麺類や丼ものばかり食べず、食べるとしても摂取カロリーや栄養素を意識して糖質過多など栄養素の偏りがないようにしましょう。清涼飲料水のうち、スポーツドリンクは、糖質や塩分を多く含むものがあるので、取り過ぎには注意しましょう。

対策2)お湯に浸かるようにする

なるべく湯船に浸かるようにして、半身浴や足湯だけでも、ぬるめのお湯に浸かるようにすると、代謝をあげてくれたり、自律神経の乱れも防ぐ効果があります。

対策3)良質な睡眠をとる

就寝時の気温や湿度などを調整し、快適な睡眠を取れるように工夫してください。睡眠不足になると食欲を上昇させるホルモンが分泌されたり、自律神経が乱れるので注意してください。

対策4)意識的に体を動かすようにする

夏は冬に比べて基礎代謝が低いので、その分、身体活動や運動によって代謝をあげたいところですが、夏は極力屋外に出ないという方もいるでしょう。そうすると運動不足になって夏太りの原因となります。涼しい時間帯や場所を選び、意識してからだを動かすようにしましょう。

対策5)ビタミンB1、カリウムを多めにとる

ビタミンB1は糖質を分解してエネルギーに変える働きがあります。豚肉やウナギなどに多く含まれ、疲労回復にも効果的です。また、カリウムはアボガド・バナナ・大豆製品・にんにく・ニラなどから摂ることができ、血行を改善し浮腫を予防してくれます。

記事監修/藤井崇博(ふじい・たかひろ)

医学博士、循環器内科専門医。2021年までの約10年間大学病院、関連病院で臨床、研究、教育に従事。最近では臨床のほか、SNSやWeb記事などでの情報の発信にも注力している。