今回のショートケーキ連載の舞台は横浜の関内。今もガス灯が並ぶ横浜の馬車道にあるショートケーキをご紹介していく。

「ハイカラ」という言葉が似つかわしいショートケーキ。レトロな建物と、落ち着くその空間。地元の人はもちろん、長年観光客にも愛された「馬車道十番館(ばしゃみちじゅうばんかん)」を取材してきた。

後世に残したい圧倒的な空間、歴史感じるレンガ造りの建物

横浜駅から1駅、関内駅から徒歩数分。レンガ造りの大きな洋館が。5階建てのレンガ張りの建物は、昭和40年代の建築。創業は昭和42年で、明治の西洋館を再現した建築となっている。

この「十番館」の呼び方は、横浜開港の頃は、海岸沿いに建てられた外国の商館を「一番館」「二番館」と数えていたからきている。明治の先覚者でガス事業の創始者でもある高島嘉右衛門家の旧跡に当たるんだとか。

館内に入ると、1階は喫茶室、2階は英国風酒場、3階のフランス料理店、そして4・5階は宴会場と館内で分かれている。

上に上がれば、絶景が。写真と撮るのにおすすめとして紹介いただいた2階のこちら。ファンが回る吹き抜け天井の下、アンティークなインテリアとステンドグラスや暖炉も。

一度は足を踏み入れたい、伝説のバーテンダーがいた「英国風酒場」

2階には、先ほどの素敵な景色が眺められるだけではなく、米軍の下士官(かしかん)専用クラブで学んだ〝伝説のバーテンダー〞金山二郎氏がいた英国風酒場が。ワイワイ飲むというよりも、静かにお酒を嗜みたい、そんな大人のバーである。

朝から晩まで、様々な人が様々な用途で訪れる、それが「馬車道十番館」の良さ。

それではスイーツの方を見てみよう。

創業当時からの懐かしのケーキたち。どこかホッとするラインアップ

お店の定番は、洋菓子ビスカウト。手土産にもぴったりだ。ショーケースには懐かしいケーキが並ぶ。創業から変わらないラインアップは、ショーケースの一番下の段なんだそう。サバラン、モンブランなど。どれも人気なんだとか。

そして上のケースには、ショートケーキがお目見え。

一人でも贅沢な気持ちに。ホール型に隠された秘密

ショートケーキというと、三角形。またパティスリーでは長方形のケーキが多い中で、まん丸としたホール型のケーキ。

日本中探しても、丸いホール型ケーキでいうと神田の名店「近江屋洋菓子店」くらいしか記憶にない。

そう、ちょっと大き目なこのケーキ。ペロリとあっという間に食べきれてしまうのが、この「馬車道十番館」のショートケーキの美味しさ。

中にも丁寧に絞られたクリーム。三角形のショートケーキや長方形のショートケーキでは、まったく味わうことのない、まったく異なる食感に。まるでホールケーキをそのままフォークで食べているかのようなリッチ感。周りを生クリームで覆わないところも、生地の食感を楽しむうえでしっかり設計されていると感じる。その点では三角形のショートケーキに似ている。

エアリーな生クリームは、甘みは程よく。甘すぎることはないものの、さっぱりで終わらない。中の生クリームと、上の生クリームの甘みが異なるように感じた。これも味のコントラストが感じられる。苺は甘酸っぱくほどよく選ばれている。

そして上から写真を撮り気づいたのが、食器に記されたガス灯のマーク。横浜の歴史をしっかり感じさせてくれる、そんな仕掛けに嬉しくなる。

About Shop
馬車道十番館
神奈川県横浜市中区常盤町5丁目67
営業時間:10:00~22:00
定休日:なし

Photo&Writing/Cream Taro