男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:28歳、年収2,000万超えのジム経営者。イイ感じだったのにあっさりフラれてしまい…




爽やかな朝だった。

雨が続いていた週末だったけれど、久しぶりの晴天で、窓からは太陽の光が燦々と差し込んでいる。

隣には、昨日から交際が始まった礼央がまだ寝ている。

私は幸せな気持ちに浸りながら、クローゼットを開け、部屋着を取り出してそっと羽織った。

「あれ…?」
「礼央、おはよう♡」
「あぁ…加奈子ちゃんおはよう」

まだ寝ぼけているのか、礼央はキョロキョロと部屋を見渡している。

「シャワー浴びる?」
「…いや、大丈夫ありがとう」

しかし礼央の様子がおかしい。

「ごめん、用事があるから早く帰らないと」

そう言うと、そそくさと着替えてすごいスピードで部屋を出て行ってしまった礼央。ドアが閉まると同時に、嫌な予感がした。

悲しいことにその予感は当たり、礼央はこの日を境に急に冷たくなった…。


Q1:男の女に対する印象は?


礼央と出会ったのは、友人の紹介だ。女友達と二人で飲んでいた時に男友達から連絡があり、合流して飲むことに。そこにいたのが礼央だったのだ。

クリっとした瞳が可愛い、子犬のような顔立ち。細身だけれども身長が高く、最初から彼のことをいいなと思っていた。

ただこの時は何もなく、次回もう一度同じメンバーで飲むことになった時に、ようやく私は礼央との距離を縮めることができた。

「礼央くんは、何の仕事をしているの?」
「僕は不動産会社の経営をしているよ」
「そうなんだ!実は今家を買おうかなと思っていて…。相談に乗ってもらえたりする?」

今年で29歳になる私。まだ独身だし、一応日系の大手広告代理店に勤めているのでローンは組める。投資用としても、マンションを買うのはアリかなと考えていた。




「その年でもうマンション購入を考えているの?すごいね。でもいいと思う。何かあれば言って。相談に乗るよ」
「本当に?ありがとう!嬉しい。…連絡先教えてもらってもいい?」
「うん、もちろん」

こうして私は礼央の連絡先をゲットした。そしてこの翌日。礼央のほうから連絡が来た。

― 礼央:加奈子ちゃん、昨日はありがとう!来週あたり、二人でご飯でもどうですか?

誘われたことはもちろん、“二人で”とちゃんと書いてくれているのが嬉しい。そして私たちは翌週デートをすることになった。




「礼央くんって、カッコいいだけじゃなくてお店まで詳しいんだね。すごい♡」
「いやいや、普通だから。全然すごくないよ」

今日も礼央はカッコいい。目の前に座っていられるだけで、鼻高々な気分だ。

「初めて会った時から思ってたけど、加奈子ちゃんってすごく華やかだよね?」
「そうかな?ジュエリーのおかげかも(笑)」

私はブランド物が好きなので、20代後半からボーナスが出るたびにコツコツと好きなブランドのカバンやジュエリーを買い集めてきた。

「たしかに、キラキラしてる(笑)。でも本当に加奈子ちゃんは偉いよね。仕事も頑張っていて」
「仕事が生き甲斐だからね。あと働くのが好きなんだよね。礼央くんは?」
「僕も仕事は好きかな。自分で会社を立ち上げてから楽しくて…」

礼央が真剣に、仕事の話をしてくれる。これは私に対して気を許してくれている証だろう。それに私も礼央の話を聞くのが楽しくて、つい真剣に聞いてしまう。

「ってごめん!仕事の話ばかりしてもつまらないよね」
「全然。礼央くんの業界のことあまり知らないから、むしろ聞いていて楽しい!」
「加奈子ちゃんって、最高だね」

礼央が、私のことを少し特別な感じで見てくれているのがわかる。この日は1軒目で解散となったけれど、別れ際に礼央のほうから次の約束を持ちかけてきてくれた。

「またご飯行かない?」
「もちろん」

こうして、私たちの楽しい関係が始まった…はずだった。


Q2:男が家に上がった途端に態度が変わった理由は?


私たちはもう一度デートをし、すぐに3度目のデートもすることになった。

「礼央くんの好きなタイプって、どんな子なの?」
「何かに対して、一生懸命頑張っている子かな」
「頑張っている子…?」
「そう。加奈子ちゃんみたいに、仕事を頑張っていたり。頑張る目的は何でもいいんだけど」

好きなタイプを聞いたのに、ここで私の名前を出してきてくれた礼央。彼の好意が見え隠れし、胸が熱くなる。

「言いたいこと、わかる気がする。私も熱意がある人、好きだから」
「お互い、タイプが一緒だね」

この日は二軒目で、お酒も結構入っていたせいだろうか。このまま私たちは口づけを交わし、何となくの流れで私の家へ来ることになった。

「うちでいいの?」
「うん。加奈子ちゃん家のほうが近いし」

この日は恵比寿で飲んでいて、私の家はすぐそこだった。




でも家へ上げる前に、絶対確認しておくべきことがある。

「でも付き合う前の男性を家に上げたくなくて……付き合うってことでいいのかな?」

ちゃんと事前に確認をした。あやふやなまま関係を持っても、いいことなんて絶対にない。ハッキリと言葉にして、関係に名前をつけておくことが何よりも大事だと思う。

すると礼央は、優しい笑顔でこう言ってくれた。

「うん。いいよ」

充足感に、全身がふわっと包まれる。私たちはこのまま手を繋いで私の家まで歩いた。

ただ部屋の前に来て、私は急に冷静になった。今日の朝慌てて家を出てきたため、洗濯物は室内に干しっぱなしだし、掃除も全然していない。

「ごめん!10分だけ玄関で待ってて」

慌てて洗濯物と、床に散らばっていた荷物なども一旦全部クローゼットの中へ押し込んでみる。

キッチンの流し台に置いたままのコーヒーカップを端へと追いやり、洗面台に散らばっていたコスメ類は下の棚に放り込むと、とりあえず10分で目に付くところは綺麗になった。

「ごめんお待たせ。狭い部屋ですが…」
「お邪魔します…って、すごいね。これ全部加奈子ちゃんの私物?」
「私物って(笑)そうだよ」
「カバンの数、すごくない?」

私は狭い部屋なりにもいろいろなこだわりがあって、バッグを綺麗に見せる収納にしていた。そしてインテリアの一部として、お洒落なブランドの箱を積み重ねて置いていた。




「中身が入っていないやつもあるよ。ただの箱だけとか」
「女の子の部屋って感じがするわ〜。すごいね」
「そんなジロジロ見なくていいよ」

そんな会話なんて、今はどうでもよかった。

とりあえず電気を消し、私たちは一夜を共にすることになる。この時まで、確実に私たちは甘くて幸せな時間を過ごしていたはずだった。

礼央の態度は普通だったのに、朝になった途端に慌てて帰っていったのだ。

― もしかして、既婚者だった…?もしくは、彼女と同棲中とか?

私が一体、何をしたというのだろうか。納得がいかず、モヤモヤとした気持ちが晴れずにいる。

▶前回:28歳、年収2,000万超えのジム経営者。イイ感じだったのにあっさりフラれてしまい…

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

▶NEXT:4月23日 日曜更新予定
男が朝、慌てて家を飛び出した理由は?