「政略結婚はイヤ！」年収5,000万円・二世経営者の美女の幸せは…
年収“8ケタ”（1,000万円以上）を稼ぐ女性たち。
給与所得者に限っていえば、年収8ケタを超える女性の給与所得者は1％ほど。（「令和2年分 民間給与実態統計調査」より）
彼女たちは仕事で大きなプレッシャーと戦いながらも、超高年収を稼ぐために努力を欠かすことはない。
だが、彼女たちもまた“女性としての悩み”を抱えながら、日々の生活を送っているのだ。
稼ぐ強さを持つ女性ゆえの悩みを、紐解いていこう――。
File13. 麗奈、年収5,000万円。ザ・セレブな女性経営者
「先週、担当さんがパリから届けてくれたケリー、まだお写真を撮っていなかったな。せっかくだし、ケリーと合わせたコーデも一緒に撮ろうかな」
麗奈はこうつぶやき、スマホでInstagramを開いた。
彼女のInstagramのフォロワーは、2万人を優に超えている。
麗奈は毎日のコーディネートのアップなど、そこら辺に転がるインスタグラマーのようなことはしない。
彼女がアップするのは、Hermèsでも相当なお得意様でないと購入できないものや、予約困難なお店でのディナー、フェラーリの車内、有名人との交流の姿などが中心だ。
「自分の姿を頻繁に出すわけじゃないけれど、出す情報一つひとつのクオリティーが高い」
これこそが、麗奈のInstagramだ。
Googleで麗奈のInstagramアカウント名を入力すると、『何者』『金持ち』『実家』などの検索ワードが続く。そして、ある掲示板には『麗奈って、何者？』という書き込みもチラホラ見受けられる。
しかし、このようなことも麗奈のブランディングのスパイスになっていた。
麗奈は、父親が経営する事業の一部であるリゾート関連事業を継承している、いわば二世経営者だ。
そんな彼女の年収は、5,000万円を超えている。
二世経営者ということで、以前は親の七光りと揶揄されることもあった。
しかし、麗奈は日本の高校を卒業後に留学し、コロンビア大学でMBAを取得するなど、経営についての勉強を地道に続けてきたのだ。
その努力のおかげか、彼女が父親から継承した事業は着実に伸びており、昨年度の売上は前年比の15％成長を見せている。
『若干27歳の経営者、河合麗奈の素顔とは―』
『日本の将来を担う女性経営者、河合麗奈』
ビジネスサイトでは、このようなタイトルで麗奈の特集が組まれることも度々だった。それくらい、今では一人前の経営者として一目置かれる存在となっている。
親から受け継いだ事業と経営の才覚。そして、Hermèsなどの高級ブランドがよく似合う美貌。
何もかも持っているように見える麗奈だが、そんな彼女にも悩みがあるのだった。
◆
麗奈の悩み。
それは、自身の結婚のことだった。
リゾート業や不動産業などをグローバルに手掛けるだけあって、麗奈の一族とのつながりを求める家はごまんといる。しかし、麗奈はどうしても、そのような家の子息との結婚には前向きになれなかったのだ。
なぜなら…。
麗奈一族とのつながりを求めるのは、父親が銀行の重役だったり、何かしらの事業を営んでいたり、または政治家を輩出するような名家ばかりだ。
そして、そのような家の息子といえば、「妻となる女性は、専業主婦として家にいるべき」と考える男性がほとんどなのだ。
経営の最前線にいる麗奈にとっては、そのような男性と話すことなど時間の無駄とばかりにうんざりしてしまう。
「今どき、時代錯誤の政略結婚なんて絶対に嫌！」
麗奈はこうかたくなに思っていた。しかし…。
「政略結婚などしたくない！私は、私を好きになってくれる人と、自然な形で出会って付き合いたい！」
麗奈はこう思うものの、食事会などで出会う男性たちは、麗奈のスペックを知ると途端に引いてしまう人がほとんどだ。
― あーぁ…。私のステータスではなくて、私自身を見てくれる人はいないのかしら…。
1,000億単位の事業を動かし、政財界での有名人に常に囲まれている。
HermèsやCHANELなどの高級ブランドのバッグを多数持ち、予約困難なお店で1本10万円を超えるワインを空ける。
同年代の女性からはきっと、うらやましがられる生活だろう。
しかし、麗奈が一番欲しいのはそんな華やかな生活ではなく、自分を愛してくれて自分が心を許せるたった1人の男性だった。
しかし、そんな麗奈の思いをよそに、両親は麗奈に見合いの話を持ってくるのだった。
「お父さん、お母さん、私まだお見合いは…」
見合いに全く気乗りがしない麗奈は、早々に断ろうと思った。しかし、両親も譲らない。
「麗奈、あなたもう27歳よ。せっかく紹介してくださる方がいるんだし、お父さんとお母さんの顔も立ててよ。まず会うだけでもいいから」
こんなことを言われ、ほぼ強制的に見合いの場に座らされてしまうのだった。
ついに迎えた、お見合いの日。
「お父さん、お母さん、本当にお相手に会うだけだからね」
父親の運転するメルセデスに乗った麗奈は、不機嫌さを丸出しにしてこう言い放った。
向かった先はホテル椿山荘東京。イタリアンレストランの『イル・テアトロ』の個室で、麗奈のお見合いが催されたのだった。
見合い相手は、麗奈一家の事業とアライアンスを組める事業を営む一家だった。
その御曹司である洋輔は、麗奈より3歳上の30歳。涼やかな目元が印象的な塩顔で、身長は180cmほどあり、165cmの麗奈がヒールを履いても見上げる背の高さだった。
麗奈の一家との見合いを楽しみにしていたであろう洋輔の両親は、会って早々にこんな言葉を言った。
「麗奈さん、噂には聞いていましたが、本当にお綺麗な方ですねぇ」
「本当に、うちの洋輔にはもったいないわ」
― 何なのかしら、この茶番…。
張り付いたような笑顔を作りながら「ありがとうございます」と洋輔の両親に言う麗奈だったが、心の中ではこの場を冷ややかに見ているのだった。
◆
お見合い後、麗奈は両親にこう伝えた。
「洋輔さん、素敵な方だけれど、私はまだ仕事に専念したいの。だからお断りしてほしいの」
両親も呆れてものが言えないといった様子だったが、受け入れてくれた…と思っていた矢先、洋輔から連絡が来たのだった。
「麗奈さん、先日はありがとうございました。もしよろしければ、今度は2人で食事でもいかがでしょうか」
― えっ…。お断りするつもりなのに…。
そう思ったものの、連絡が来てしまっては会わないわけにはいかない。とりあえず、誘われるがままデートに向かうのだった。
「麗奈さん、先日はありがとうございました。そして、今日も来てくれてありがとう」
「あ…こちらこそ…」と麗奈が返事をするのを待たずに、洋輔は思いがけない一言を発した。
「麗奈さんは、今までお見合いは何回したの？」
「えっ？」
― この人は何言っているのかしら…。
発言の真意がわからない麗奈に、洋輔は続けた。
「本当にお見合いってうんざりするよね。俺も正直うんざりしているし、麗奈さんも絶対うんざりしているだろうなって思っていたよ。
それでさ、思ったんだけど、俺らが結婚しちゃえばこのうっとうしい見合い話から解放されるよね？」
「はっ？」
― この人、一体何を言っているのかしら？
開いた口がふさがらない麗奈だったが、洋輔は遠慮なく続ける。
「俺も麗奈さんと同じような環境で育ってきたし、麗奈さんが考えていることもだいたい理解できているつもりだよ。
でさ、今は麗奈さん、俺のことは好きじゃないだろうけれど…、俺は麗奈さんのことは嫌いじゃないし、何より恋愛関係を超えた事業のパートナーとしては一緒に生きていけると思うんだ。ねぇ、だから俺と結婚してみない？」
「はっ？私とあなたが…、結婚を…する…の？」
まるで「飲みにでも行かない？」くらいのノリのプロポーズに、麗奈は驚きのあまり、素っ頓狂な声を出してしまった。
しかし…。
「事業のパートナー」という言葉には共感した。それに、確かにうっとうしい見合い話から解放されるのはかなりのメリットだ。
― まぁ、確かに悪くないかもしれない。
麗奈は、少し考えることにしたのだった。
◆
3年後。
見合いを経て結婚した麗奈と洋輔は、2人で力を合わせて着実に事業の幅を広げていた。
昨年には、2人の間に娘も生まれた。そう、麗奈は思い切り勇んで結婚した相手と、何だかんだとうまく人生のパートナーになっていたのであった。
― とても不思議な感じだけれど、あの時にプロポーズを受け入れて、よかったのかも…。
人生は選択の連続だ。
着実に歩むことももちろん大事だが、時には波に乗ることも大事だし、決して悪いことではない。
娘もきっと、資産家に生まれた身として、一般では思いもよらないようなことで悩んだり、苦しんだりするだろう。
しかし、それは豊かな資産を築ける、選ばれた女にのみ与えられる試練だ。
その試練を乗り越えてこそ、より豊かな未来が待っているのかもしれない…。
麗奈はそう思うのだった。
Fin.
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