【漫画】アスペルガー彼氏とうまく暮らすコツをやっと見つけた!幾多の行き違いや苦悩を乗り越え、ついに結婚へ
アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と診断されたご主人とのちょっとユニークな日常生活をInstagramで発信している、ちくわさん(@chikuwa_bloger)。彼女のコミックエッセイ「好きになった人はアスペルガーでした」は、ちくわさんとご主人の出会いから、沸きあがる違和感、まさかのカミングアウトを経て、それを受け入れ結婚するまでを描く。今回のテーマは「対応もオリジナルに」。
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子供のような無邪気さや裏表のない言動に好感を抱き、テニススクールの担当コーチ(のちのご主人)と交際を始めたちくわさん。ところがある日、彼から自分がアスペルガー症候群であること、その特性のために当時の妻が精神的に病んでしまい離婚したと打ち明けられた。ちくわさんはそれを受け入れた上で交際を継続、ほどなくして同棲を始めるが、コミュニケーションの溝はなかなか埋まらなかった。
■「対応もオリジナルに」
そんな中、ちくわさんは新しい一歩を踏み出した。まずは心機一転引っ越しを。
専門書に100%の答えはない。ちくわさんは彼の特性や癖を注意深く観察した上で、「本人のやる気を刺激」「聴覚よりも視覚的な情報を重視」すればいいことを発見。それぞれ具体化していった。
そしてもう一つ、ちくわさんの気づきも大きい。幸せはしてあげる、してもらうものではなく自分自身でつかみ取るもの。アスペルガーの彼を「幸せにしてあげよう」と考えるあまり、逆に追い込まれたちくわさんの苦しい姿は、そこにはもうなかった。
ここにたどり着くまでにどれだけの紆余曲折があっただろうか。「今度こそうまくいく!」ついにちくわさんは結婚を決意したのだった。
■見える化することで大きな問題はだいぶ減った
「見える化」作戦で大惨事を防ぐことができるようになったとあるが、どれほど劇的に変わったのだろうか。ちくわさんは「口約束ではなくカレンダーに書くことで、約束をすっぽかしたり、大きな予定を忘れることはかなり減りました。おそらく、何度もそれを目にすることで、頭の中に刷り込まれていくのでは?」という。
一番効果的だったのは、夫婦間での約束事を紙に書いて貼り出すという見える化だったそう。「夫はとにかく衝動買いが凄くて、私は頭を抱えていました。使いもしないスタンディングデスク3万、自動開閉する高級ゴミ箱2万(うちに普通にゴミ箱あるのに)、腰痛防止の椅子4万など…。『もう衝動買いダメ。1万円以上の買い物は相談してね』と言ったそばから、サングラス6万円を購入したところでブチギレました(笑)」
そこで、彼自身に「1万円以上のものを買うときは、相談する」と紙に書いてもらい、一番目に付くところに貼ったところ、高級品の衝動買いはピタッとなくなった。「まぁ、1万円以下をいいことに衝動買いすることはありますが、ダメージは小さめなのでよしとしています」
■オリジナルの対応を「二人で見つける」ことの大事さ
オリジナルの対応を「二人で見つける」とある。「ルールを作る時は、夫本人の“納得”が大事だと感じています。いくらこちらが『やったほうがいい』『こうしたい、こうしてほしい』と言っても腹落ちしていなければ、習慣には至りません。特にアスペルガー症候群の人は、納得しないと行動に移せないといろんな書籍で読んだことがあります」。そこでちくわさんがこだわったのは「説得するのではなく、納得してもらう」ということ。「夫婦生活は長いですから、一時的なやる気だけでは意味がありませんから」
子供が生まれてからの話になるが、最近ご主人から「(娘の)はじめちゃんが溺れると危ないから、風呂場に鍵をかけるようにしたい」というルールを持ちかけられたという。「まだ娘は自分で扉を開けることはできないのですが、ADHD(注意欠如・多動症)の気質も強い夫は忘れっぽいところもあるため、何かのニュース記事を読んで恐怖を感じたのでしょう。特性から起こしてしまうかもしれないミスを防ぐ習慣を作ることはとてもいいことだと思います」。ご主人からそのようなルール提案があったときは、ちくわさんも必ずそれを守るように徹底しているという。
■相手に期待せず、どうすれば理解してもらえるかを考える
ちくわさんが、ご主人とうまく暮らすために見つけたコツがある。「『夫に期待しない』というのは大事にしています。基本的であり、これがなかなか難しい部分でもあるのですが」
それはなぜか。「期待しすぎると『察してほしい』『気づいてほしい』と相手に要求する気持ちが強くなってきます。すると、どうしても女性は態度で感情を示しがちになります」。特に、ちくわさんはサービス業に勤めているため、同僚男性は“察する”スキルが高い人ばかり。多少言葉が足りなくても言いたいことを分かってくれる。ところが、同様に彼と接すると「夫は相手の感情や態度などの非言語的情報が理解できない(=言葉で言われないと分からない)ので、ちんぷんかんぷん状態に。コミュニケーションが取れない沼にハマってしまうんです」
そこで、「察してほしい」と相手に期待するのをやめた。逆に「どうしたら夫に伝わるのかな?」「どうしたらお互いうまくやっていけるのかな?」と考え方を自主的に変えていくことで、ちくわさんはその沼を脱していった。「幸せな夫婦生活を築くために、自分で考え行動する。それを、夫に言葉でしっかりと伝える。そんな1つ1つの自主的な言動が『結婚したんだから、幸せにしてよ』と言った他力本願な考えをなくし、結果的に相手に依存しないためのコツになっているのかなぁと個人的には思っています」
出会ってからおよそ1年半でのプロポーズ。ところが、結婚の準備を始めとしてさらなる困難が降りかかる。
なお、ちくわさんのご主人の場合は、人の気持ちを想像できない特性に加え、多動性や衝動性に代表されるADHD(注意欠如・多動症)の特徴もあるタイプ。漫画内や記事に出てくる特徴の描写はあくまでちくわさんとご主人のケースに対する説明で、すべてのアスペルガー症候群の方に当てはまるわけではないことを念のため補足しておく。
取材・文=折笠隆