月経前の7日間に食べると良いものは? 女性ホルモンの変化に合わせた“食養生”を
カラダの内側からのケアには、フェムケアの視点を取り入れることがとても大事で、効果も自覚しやすいはず。ホルモンバランスの影響を受け、様々な体調不良が起きやすい心身を、上手に支えていく知恵を学びましょう。
ダイエットに熱中しがちな人ほどなおざりになるのが、女性のカラダにとって必要な栄養素の摂取。
「極端な糖質オフや、食事量全体が少なかったり、パンやおにぎりだけで済ます人など、最近の女性のほとんどが栄養不足です。それが原因で生理痛がひどくなることもあります。ビタミンやミネラルなど、プラスαの栄養素を考える前に、全ての臓器の機能を支えている、タンパク質、糖質、脂質の三大栄養素をバランスよく摂ることを心がけてほしいです」(女性ホルモンバランスプランナー・烏山ますみさん)
血を作る力、ストレスに耐える力にも三大栄養素は必須。
「毎月月経があり、妊娠・出産のためにも大量の血を作る必要があります。でも、土台が栄養不足でエネルギーを作れなければ、生命維持を優先すべきと脳が判断し、婦人科系の機能は衰えてしまうのです。女性のQOL(クオリティオブライフ)を上げるため、カラダのベースづくりを見直してください」(婦人科医・松村圭子さん)
フェムケア的“三大栄養素”
タンパク質
婦人科系臓器の健康維持のベース。筋肉や膜で構成される子宮。女性のカラダの土台を作る材料として、タンパク質は必須。また、女性ホルモンを分泌し、排卵を行っている卵巣そのものの健康維持にも役立つ。ホルモンの合成にもタンパク質が使われている。1食で手のひらに乗る程度の量を、肉や魚、豆類などからバランスよく取り入れよう。
糖質
摂取制限しすぎると、心身に悪影響アリ。栄養素の中で最も使いやすいエネルギー源で、脳にとっては唯一の栄養源。気分を安定させるためには適度な糖質が必要なのに、極端な糖質制限で、生理前のイライラが増している人も多々。糖はストックできる量が少ないので、こまめに摂る必要が。1回の食事で、糖質が全体の5〜6割占めるのが好バランス。
脂質
油と上手に付き合い、ホルモン分泌を促す。細胞膜の材料となる脂質は、タンパク質と一緒にホルモンも作ってくれる。20〜40代女性が1日に摂りたい油の量は、大さじ4〜5杯程度。体脂肪が足りないと体温が下がりやすく、子宮や卵巣の機能にも悪影響を及ぼす。体脂肪は多すぎても少なすぎても性機能が働きにくくなり、BMI20〜22程度が理想。
女性ホルモンの変化に合わせた、食養生を始めよう。
月経周期をもたらすのが女性ホルモンの分泌。自分に合ったインナーケアを取り入れて、ホルモンバランスで変化する心身をサポート。
ホルモンのリズムと、ココロとカラダの関係を知る。
2つの女性ホルモンの分泌量の変化を表す下記のグラフ(28日周期)を参考に、自分の場合を当てはめて。今回は特に、心身が不安定になりやすい黄体期をメインに、ストレスから身を守るケアを掘り下げます。
守りのケアに適した期間
1、黄体期前半(最初の7日間)…むくみ、便秘など、カラダの不調が目立つ。排卵後、妊娠に向けたカラダをつくるためプロゲステロンが増加。体内の水分量が保たれ、体温は上昇。「水分排出がうまくいかないので、便秘やむくみなど、カラダに不調が出やすい時期です」(烏山さん)。排卵後に最も調子が悪い、という人も。「ホルモン分泌の変化による影響は、人それぞれ。大切なのは自分のリズムを知ること。ケアが合っていれば、月経周期を2〜3回経ると体調が改善していきます」(松村さん)
2、黄体期後半(月経前の7日間)…ココロのバランスも崩れ、心身ともにケアが必要。女性ホルモンの分泌量が同時に下降。注目はエストロゲンの減少に伴って減少する、気持ちの安定に関わる脳内物質「セロトニン」。「ココロの不調を感じる人が増加。月経に向けて腰が重だるくなったりします。黄体期前半より、心身の不調をよりダイレクトに感じるでしょう」(烏山さん)。「抱えていた不調が目立って現れる時期と考えて。普段からそこをケアしておけば、PMSの症状が軽くなる人も多いんです」(松村さん)
攻めのケアに適した期間
3、卵胞期(月経後〜排卵まで)…心身ともに好調なので新しいケアにも挑戦を。月経終盤からエストロゲンが上昇し始め、排卵期にピークを迎える。心身が安定し、前向きな気持ちになれる時期。「運動したり、ダイエットを始めたり、黄体期の“守り”と違い、卵胞期は“攻め”のケアをしていくといいですね」(烏山さん)。「黄体期にストレスで食べすぎてしまったら、卵胞期にダイエットして帳尻を合わせる。メリハリをつけて、長く健康に続けられるダイエットを考えていきましょう」(松村さん)
守りのケアに取り入れたい「食」カタログ
心身のサポートにおすすめの食べ物と、ごほうびの食べ物をリストアップ。この時期、甘いものなどの食べすぎはNGだけど、過剰な我慢もストレスのもと。ならばこれならOKという範囲で「ごほうび」として提案します。
1、黄体期前半(最初の7日間)排出を促す食材を摂り、水分や便を溜め込まない。溜め込みやすいカラダに変わる時期なので、水分の排出を促し、血流をアップさせて燃えやすいカラダをサポートする食材を選ぼう。「タンパク質が十分摂れていれば、水分排出はうまくいきます。ただ、プロゲステロンの影響で腸の働きが落ちているので、発酵食品や食物繊維も摂ること」(烏山さん)。「ビタミンや食物繊維豊富な玄米ご飯がおすすめ。また、生理で失われる鉄分の補給も。肉類だけでなく、ほうれん草なども鉄分が豊富です。ビタミンCと一緒に摂り鉄分の吸収を高める工夫を」(松村さん)。甘いものが欲しくなったらカリウムや食物繊維豊富なフルーツやハイカカオのチョコレートを。「心身を安定させ、黄体期後半に備えます」(烏山さん)
2、黄体期後半(月経前の7日間)減少するセロトニンを上手に補いココロを安定。「バナナやアーモンドなど、セロトニンの合成に必要なトリプトファンを多く含む食材が活躍。また、ナッツは精神安定に役立ちます。この時期もタンパク質は重要です」(烏山さん)。生理痛を緩和するEPA豊富なエゴマ油、PMSの緩和作用が期待される、注目成分γ‐トコフェロールが摂れる大豆油なども取り入れてみて。そして、落ち込む自分のごほうびには豆乳ココアや小さなシュークリームを。「シュークリームはタンパク質も摂れ、同サイズの大福より糖質は控えめ。味わって食べ、ココロを満足させて」(松村さん)。「辛いものが食べたくなりがちですが、香辛料でイライラが増すことも。辛くないスパイスカレーなどで乗り切りましょう」(烏山さん)
烏山ますみさん 女性ホルモンバランスプランナー(R)、「アロマ&エステティックICHIKA.」代表。心身両面から女性をサポートすることを目指し、女性ホルモンの理解を一般に広めるための啓蒙活動や、商品開発も積極的に行う。
松村圭子さん 婦人科医、「成城松村クリニック」院長。月経トラブルや更年期障害など、女性のあらゆる不調をサポート。生理日管理アプリ「ルナルナ」顧問医。著書『医者が教える女性のための最強の食事術』(青春出版社)など。
※『anan』2022年5月4‐11日合併号より。イラスト・コナガイ香 取材、文・板倉ミキコ
(by anan編集部)